このイベントが行われたいせやは、生前の高田渡が日常的に訪れていたことで知られる居酒屋。高田渡ゆかりの場所ということもあり、このイベントには50名の枠に対し400名強の参加応募があったという。
イベント前の囲み取材で高田漣は「いせやは僕が小さい頃からずっとあった場所。店の前も通学路として歩いてました。父に連れられて店にもよく来ていて、僕がシューマイを食べる横で父はいつも焼酎とウーロン茶を頼んで、自分でウーロンハイにしていましたね」と、父との思い出を語る。一方でアーティスト・高田渡については「父からは音楽そのものより、聴き方や姿勢に影響を受けました。いろいろな音楽を聴いてはルーツを掘り下げる人でしたね」と話し「父の歌は自分で歌ってみると難しい。しゃべるように、言葉を物語るように歌うのが難しいって思います」と語った。また今回のイベントについては「いせやは、ほかのどこでやるよりも高田渡をしのぶにはもってこいの場所。今日は和やかな感じで演奏したいですね」と意気込みを話した。
イベント開始時間を迎え、観客の拍手に招かれて2階の座敷に現れた高田漣は「お仕事をズル休みして来た方はいらっしゃるんですか?(笑)」と茶化しながら1曲目に「仕事さがし」を披露。オフマイクでおだやかに父の歌を歌い上げた。そして演奏後に彼はジョッキやグラスを手にした観客と乾杯し、自身もイスの隣にジョッキを置いて「最初はCDショップでのインストアみたいな話だったのにいつの間にかいせやに……まあここも“インストア”ですけど(笑)」と参加者の笑みを誘ってから「自転車に乗って」を軽やかに歌唱した。
このイベントで高田漣は楽曲演奏とトークを交互に行った。彼は20年以上住んでいたという吉祥寺の思い出などを話してから「ヴァーボン・ストリート・ブルース」「コーヒーブルース」といったナンバーを歌う。「フィッシング・オン・サンデイ」ではボトルネック奏法によるブルージーな演奏が披露され、観客は酒を飲みながら心地よさそうに拍手を送った。
後半になると高田漣は父といせやにまつわる数々の逸話を話し始め、「父の仕事の依頼もいせやに連絡が来てました。そりゃいせやからお歳暮が届くわけですよ(笑)」と話して客席を沸かせる。さらに彼は和気あいあいとした会場の雰囲気に後押しされ、当初予定していなかった「アイスクリーム」も披露。最後は本日首相官邸にドローンが落ちたというニュースの話を引き合いに出してから「そんな歌を歌います」と、“お偉い方”に対する楽曲「鉱夫の祈り」を披露した。
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Shun Ikezoe @shun_ikezoe
高田漣「もってこいの場所」吉祥寺いせやで高田渡の楽曲披露 - 音楽ナタリー http://t.co/Bd61ucjAvP