今回のライブでは、東京では初めてダブルカルテット編成のストリングス隊を招き贅沢なセッションを届けた彼ら。ストリングスと山内憲介（G）が奏でるオートハープによる柔らかなアンサンブルが飾ったオープニングから、満員のオーディエンスは次々と奏でられる深みのあるサウンドに酔いしれた。
ストリングス隊を交えてのセッションは、ライブの前半と後半に展開。前半では宇宙を浮遊するような成山剛（Vo, G）の歌声が観客をうっとりとさせた「アンドロメダ」をはじめ、二胡を思わせるオリエンタルなギターが幻想的な空気を作り出した「earth」など、最新アルバム「neuron」からの楽曲が教会中に響きわたる。
しかし場内の荘厳な雰囲気が影響してか、序盤は曲の合間に静寂が漂い、田中秀幸（B）が思わず「随分緊張感ありますよね……」と苦笑いする一幕も。「みんなも緊張してると思うんですが、ゆったり自由に楽しんでください」と続け、成山剛（Vo, G）は「今日は寝てもいいですから」と観客に呼びかけた。
その言葉がきっかけとなったのか、ストリングス隊がいったん退場し、「シエスタ」から始まったブロックでは会場の空気がほんのり和らぐ。特に観客の緊張を解きほぐしたのは、山内がマトリョミンを手に客席に降りていくパフォーマンスを披露した「パレット」。sleepy.acのライブでは恒例となっている演出だが、この日は客席の真ん中でガサゴソと着替え始めオーディエンスを驚かせる。成山は「皆さん怖がらないでください」と観客に注意喚起。あちこちから失笑が起きる中、山内は祭服に着替え、指揮棒を持って成山、田中、サポートの鈴木浩之（Per）の演奏を指揮する。なおこの演出が終わったあと成山は、「一緒の人だと思われたくないから戻ってこないで（笑）」と言い放ち観客を笑わせた。
山内の弾く鍵盤吹奏笛が朗らかな空気を作り出した「幻日」、オレンジの照明がステージを包み込んだ「lump」に続いては、sleepy.acのライブには欠かせない「みんなのうた」カバーコーナーへ。成山は「いつか『みんなのうた』に曲を提供したくて」と控えめにアピールしながら、この日は堀下さゆりの「カゼノトオリミチ」をカバー。成山は中性的な声でみずみずしいメロディを歌い上げ、オーディエンスを夢見心地にさせた。
その後のブロックでは、成山の「あくびしてる人を見るとうれしくなる」というMCを挟みつつ、「メリーゴーランド」「メロディ」といったおなじみの楽曲や、最新作「neuron」から「around」「ハーメルン」が披露されていく。そして再びストリングス隊を呼び入れて始まったブロックのハイライトとなったのは「賛歌」。成山の「教会でやるってなったときに、真っ先にこの曲をやりたいなと思ったんです」という紹介から、ストリングス隊とバンドが奏でる豊かなアンサンブルと、穏やかな歌声が場内をゆったりと満たしていく。その余韻を残したまま「Lost」と「かくれんぼ」の2曲が奏でられ、ライブ本編は静かに幕を下ろした。
アンコールでは田中が開口一番で、この日のライブの模様が音源化されることを発表。さらに「映像としても出せたらいいなと思ってるので、楽しみにしていてください」と観客に伝えた。ラストナンバーは寒い季節にぴったりな「雪中花」。鈴木の叩く軽やかなカホンに乗せて、豊かなストリングスの音色と成山の浮遊感のある歌声が会場中に広がっていく。観客は最後の1音が鳴り終わるまでじっと耳を傾け、メンバーが演奏の手を止めた瞬間に、感嘆のため息とともに大きな拍手を送った。
sleepy.ac「sleepy.ac tour」
2013年11月27日 東京都 キリスト品川教会グローリア・チャペル セットリスト
01. アンドロメダ
02. earth
03. 街
04. darkness
05. シエスタ
06. パレット
07. 幻日
08. lump
09. カゼノトオリミチ
10. メリーゴーランド
11. around
12. メロディ
13. ハーメルン
14. 賛歌
15. Lost
16. かくれんぼ
＜アンコール＞
17. 雪中花
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音楽ナタリー @natalie_mu
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