細野ゼミ 補講3コマ目 [バックナンバー]
細野さんに聞きたい、あの曲この曲(前編)
安部勇磨、「最後の楽園」「蝶々-San」「恋は桃色」「ハニー・ムーン」について聞く
2024年12月26日 20:00 36
細野晴臣、究極の時代
安部 続いては「恋は桃色」。これはギターをポロッと弾いて作ったとかですか?
細野 そうそう。あの頃はギターで曲を作っていたから。確か、レコーディングの2、3日前に作ったんじゃなかったかな。イントロとサビがあればレコーディングできるんだよね。ほかの部分はみんなで考えればいいから。
細野晴臣「恋は桃色」
安部 焦りもあったりするんですか?
細野 締め切り直前は、基本的にずっと焦っているんだよね(笑)。
安部 「やんなきゃ」っていうのはあるんですね。
細野 それはあるよ(笑)。予算もスケジュールもカッチリ決まるしね。しかも高い機材が家に届くし、エンジニアも来るし。今はこのスタジオで1人でやるから自由だけど、当時はそんな自由はないよ。エイプリル・フールなんて、アルバムを3日で録らなきゃいけなかった。
ハマ 「細野ゼミ」でお話を聞いてると、細野さんは締め切り間際に能力を爆発させてることが多いですよね。
細野 特に1980~90年代はそうだったね。このスタジオもなかったから。究極の時代が、
安部 曲提供やプロデュースをたくさんやっていた時期って、逆に自分の作品を出したいという気持ちが強くなったりしませんか?
細野 自分のソロのこととかは、あまり考えないんだよな。ソロアーティストとしての自覚がないので。“なんでも屋”なんだよね。頼んでくる人がいるだけいいと思ってて。だって、ソロを作っても誰も聴いてくれない時代だったから。
安部 「恋は桃色」の話に戻るんですけど、歌詞が素敵すぎるじゃないですか。あれってサクサク書けたのか、悩んで書いたのかも知りたいんです。
細野 サクサクでもないし、悩んでもない。「ちょうどいい」というか(笑)。苦労したものだったら覚えてるけど、どうやって作ったかを覚えてないんだよな。狭山に住んでいた頃にできたのは確か。狭山の風土や景色、引っ越したときの感じとか。そういったものから着想したんだと思う。あと、「恋はみずいろ」ってポール・モーリアの曲が好きじゃなかった。好きじゃないってことは、なんか気になるんだよね。「『恋はみずいろ』か……」って言っていたことは確かだよ。
安部 そういう“嫌い”とかの感情も、ポジティブにこういった作品に変わっていくんですね。
細野 あの曲の歌詞で気になっているのは、「♪どうやって来たのか 忘れられるかな」の「かな」のところ。自分で書いたときはいいんだけど、そのあとにそういう言葉使いの歌詞の曲がときどき出てくるようになったんだよ。そういうのを聞いて、「『かな』ってイヤだな」って思っていて。誰のどの曲かは覚えてないけど、何組かいたんだよ。
ハマ え? 自分で書いた言葉でもあるのに? 自分の意に反して広まっていった言葉使い、みたいな?
細野 ほかの人のを聞いて、反省したんだろうね(笑)。
安部 「恋は桃色」って違うバージョンとかもあったんですか?
細野 ない。でもこの頃に「住所不定無職」の原曲も作ったんだけど、最初は英語だったんだよね。それでサビのところをハミングで歌ってた。「HOCHONO HOUSE」では、それを間奏に張り付けて使ったりしたよ。
ゼミ生、未発表のデモを聴ける回を熱望
安部 「デモのカセットが残ってるよ」っておっしゃっているものもたくさんありますよね。「細野ゼミ」で未発表のデモを聴ける回が欲しい。
細野 そういうのはあるよ。「終わりの季節」の英語バージョンとか。
安部 それ、僕らにだけだったら聴かせてもらえたりしますか……?
細野 いいよ。
ハマ そういうテープ、国に頼んでデータにしたほうがいい(笑)。劣化しちゃうし。
細野 データにはしているんだよね。
安部 ではこのまま、「ハニー・ムーン」ついて。個人的には、聴いていると天竺みたいな世界をイメージしてしまうんです。歌詞だけじゃなく、曲の雰囲気もあってのことだと思うんですけど。細野さんはどういうイメージで作ったのかなって。
細野晴臣「ハニー・ムーン」
細野 あれは何に入れたんだっけ? 「トロピカル・ダンディー」か。あまり覚えてないな。ハネムーンという言葉は日本ではポピュラーでしょ? 新婚旅行って意味で。日本語では“蜜月”って訳するんだろうけど、僕のイメージでは、もうちょっと世界が広く、エキゾチックな感じ。エキゾチシズムに囚われていたからね。そういう言葉遊びもあったよね。
安部 その頃読んでた本とか、どこかの国の文化にハマっていたなどがあれば教えてほしいです。
細野 本よりもマンガばっかり読んでいたよ。
安部 なんのマンガですか?
細野 広げるね(笑)。何かな……「がきデカ」(※「週刊少年チャンピオン」で連載されていた山上たつひこによるギャグマンガ。1989年にアニメ化もされた)かな。全巻そろえてる。
安部 「がきデカ」ってなんですか? ハマくん知ってる?
ハマ もちろん。ギャグマンガだね。名作ですけど、あなたの“
細野 「ハニー・ムーン」と全然関係ない(笑)。
<後編に続く>
プロフィール
細野晴臣
1947年生まれ、東京出身の音楽家。エイプリル・フールのベーシストとしてデビューし、1970年に大瀧詠一、松本隆、
安部勇磨
1990年東京生まれ。2014年に結成された
ハマ・オカモト
1991年東京生まれ。ロックバンド
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細野晴臣 Haruomi Hosono _information @hosonoharuomi_
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