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細野ゼミ 補講3コマ目 [バックナンバー]

細野さんに聞きたい、あの曲この曲(前編)

安部勇磨、「最後の楽園」「蝶々-San」「恋は桃色」「ハニー・ムーン」について聞く

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細野晴臣、究極の時代

安部 続いては「恋は桃色」。これはギターをポロッと弾いて作ったとかですか?

細野 そうそう。あの頃はギターで曲を作っていたから。確か、レコーディングの2、3日前に作ったんじゃなかったかな。イントロとサビがあればレコーディングできるんだよね。ほかの部分はみんなで考えればいいから。

細野晴臣「恋は桃色」

安部 焦りもあったりするんですか?

細野 締め切り直前は、基本的にずっと焦っているんだよね(笑)。

安部 「やんなきゃ」っていうのはあるんですね。

細野 それはあるよ(笑)。予算もスケジュールもカッチリ決まるしね。しかも高い機材が家に届くし、エンジニアも来るし。今はこのスタジオで1人でやるから自由だけど、当時はそんな自由はないよ。エイプリル・フールなんて、アルバムを3日で録らなきゃいけなかった。

ハマ 「細野ゼミ」でお話を聞いてると、細野さんは締め切り間際に能力を爆発させてることが多いですよね。

細野 特に1980~90年代はそうだったね。このスタジオもなかったから。究極の時代が、松本隆の詞に曲を書いていた歌謡曲の頃。あのときが一番テンションが高かった。締切が厳しいから。1週間後にレコーディング、とかね。

安部 曲提供やプロデュースをたくさんやっていた時期って、逆に自分の作品を出したいという気持ちが強くなったりしませんか?

細野 自分のソロのこととかは、あまり考えないんだよな。ソロアーティストとしての自覚がないので。“なんでも屋”なんだよね。頼んでくる人がいるだけいいと思ってて。だって、ソロを作っても誰も聴いてくれない時代だったから。

安部 「恋は桃色」の話に戻るんですけど、歌詞が素敵すぎるじゃないですか。あれってサクサク書けたのか、悩んで書いたのかも知りたいんです。

細野 サクサクでもないし、悩んでもない。「ちょうどいい」というか(笑)。苦労したものだったら覚えてるけど、どうやって作ったかを覚えてないんだよな。狭山に住んでいた頃にできたのは確か。狭山の風土や景色、引っ越したときの感じとか。そういったものから着想したんだと思う。あと、「恋はみずいろ」ってポール・モーリアの曲が好きじゃなかった。好きじゃないってことは、なんか気になるんだよね。「『恋はみずいろ』か……」って言っていたことは確かだよ。

安部 そういう“嫌い”とかの感情も、ポジティブにこういった作品に変わっていくんですね。

細野 あの曲の歌詞で気になっているのは、「♪どうやって来たのか 忘れられるかな」の「かな」のところ。自分で書いたときはいいんだけど、そのあとにそういう言葉使いの歌詞の曲がときどき出てくるようになったんだよ。そういうのを聞いて、「『かな』ってイヤだな」って思っていて。誰のどの曲かは覚えてないけど、何組かいたんだよ。

ハマ え? 自分で書いた言葉でもあるのに? 自分の意に反して広まっていった言葉使い、みたいな?

細野 ほかの人のを聞いて、反省したんだろうね(笑)。

安部 「恋は桃色」って違うバージョンとかもあったんですか?

細野 ない。でもこの頃に「住所不定無職」の原曲も作ったんだけど、最初は英語だったんだよね。それでサビのところをハミングで歌ってた。「HOCHONO HOUSE」では、それを間奏に張り付けて使ったりしたよ。

ゼミ生、未発表のデモを聴ける回を熱望

安部 「デモのカセットが残ってるよ」っておっしゃっているものもたくさんありますよね。「細野ゼミ」で未発表のデモを聴ける回が欲しい。

細野 そういうのはあるよ。「終わりの季節」の英語バージョンとか。

安部 それ、僕らにだけだったら聴かせてもらえたりしますか……?

細野 いいよ。

ハマ そういうテープ、国に頼んでデータにしたほうがいい(笑)。劣化しちゃうし。

細野 データにはしているんだよね。

安部 ではこのまま、「ハニー・ムーン」ついて。個人的には、聴いていると天竺みたいな世界をイメージしてしまうんです。歌詞だけじゃなく、曲の雰囲気もあってのことだと思うんですけど。細野さんはどういうイメージで作ったのかなって。

細野晴臣「ハニー・ムーン」

細野 あれは何に入れたんだっけ? 「トロピカル・ダンディー」か。あまり覚えてないな。ハネムーンという言葉は日本ではポピュラーでしょ? 新婚旅行って意味で。日本語では“蜜月”って訳するんだろうけど、僕のイメージでは、もうちょっと世界が広く、エキゾチックな感じ。エキゾチシズムに囚われていたからね。そういう言葉遊びもあったよね。

安部 その頃読んでた本とか、どこかの国の文化にハマっていたなどがあれば教えてほしいです。

細野 本よりもマンガばっかり読んでいたよ。

安部 なんのマンガですか?

細野 広げるね(笑)。何かな……「がきデカ」(※「週刊少年チャンピオン」で連載されていた山上たつひこによるギャグマンガ。1989年にアニメ化もされた)かな。全巻そろえてる。

安部 「がきデカ」ってなんですか? ハマくん知ってる?

ハマ もちろん。ギャグマンガだね。名作ですけど、あなたの“細野晴臣さん像”、「がきデカ」を読むことによって、一気に訳がわからなくなる可能性もある(笑)。

細野 「ハニー・ムーン」と全然関係ない(笑)。

<後編に続く>

プロフィール

細野晴臣

1947年生まれ、東京出身の音楽家。エイプリル・フールのベーシストとしてデビューし、1970年に大瀧詠一、松本隆、鈴木茂とはっぴいえんどを結成する。1973年よりソロ活動を開始。同時に林立夫、松任谷正隆らとティン・パン・アレーを始動させ、荒井由実などさまざまなアーティストのプロデュースも行う。1978年に高橋幸宏、坂本龍一とYellow Magic Orchestra(YMO)を結成した一方、松田聖子、山下久美子らへの楽曲提供も数多く、プロデューサー / レーベル主宰者としても活躍する。YMO“散開”後は、ワールドミュージック、アンビエントミュージックを探求しつつ、作曲・プロデュースなど多岐にわたり活動。2018年には是枝裕和監督の映画「万引き家族」の劇伴を手がけ、同作で「第42回日本アカデミー賞」最優秀音楽賞を受賞した。2019年3月に1stソロアルバム「HOSONO HOUSE」を自ら再構築したアルバム「HOCHONO HOUSE」を発表。この年、音楽活動50周年を迎えた。2021年7月に、高橋幸宏とのエレクトロニカユニット・SKETCH SHOWのアルバム「audio sponge」「tronika」「LOOPHOLE」の12inchアナログをリリース。2023年5月に1stソロアルバム「HOSONO HOUSE」が発売50周年を迎え、アナログ盤が再発された。2024年に活動55周年を迎えたことを記念して、アニバーサリープロジェクトが始動。

安部勇磨

1990年東京生まれ。2014年に結成されたnever young beachのボーカリスト兼ギタリスト。2015年5月に1stアルバム「YASHINOKI HOUSE」を発表し、7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '15」に初出演。2016年に2ndアルバム「fam fam」をリリースし、各地のフェスやライブイベントに参加した。2017年にSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューアルバム「A GOOD TIME」を発表。日本のみならず、上海、北京、成都、深セン、杭州、台北、ソウル、バンコクなどアジア圏内でライブ活動も行い、海外での活動の場を広げている。2021年6月に自身初となるソロアルバム「Fantasia」を自主レーベル・Thaian Recordsより発表。2024年11月に2ndソロアルバム「Hotel New Yuma」をリリースした。

ハマ・オカモト

1991年東京生まれ。ロックバンドOKAMOTO'Sのベーシスト。中学生の頃にバンド活動を開始し、同級生とともにOKAMOTO'Sを結成。2010年5月に1stアルバム「10'S」を発表する。デビュー当時より国内外で精力的にライブ活動を展開しており、2023年1月にメンバーコラボレーションをテーマにしたアルバム「Flowers」を発表。2025年2月には10枚目のアルバム「4EVER」をリリースする。またベーシストとしてさまざまなミュージシャンのサポートをすることも多く、2020年5月にはムック本「BASS MAGAZINE SPECIAL FEATURE SERIES『2009-2019“ハマ・オカモト”とはなんだったのか?』」を上梓した。

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細野晴臣 Haruomi Hosono _information @hosonoharuomi_

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#細野晴臣 #安部磨勇 #ハマオカモト

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