のっちさん

のっちはゲームがしたい! 第17回(後編) [バックナンバー]

「学園アイドルマスター」のアイドルはどうしてこんなに魅力的なの?小美野Pに制作秘話を聞きました

生身の人間を感じるライブシーンができた理由、新たに実装されるアイドルの話も

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下手に聞こえるように、音を消してアカペラで歌ってもらってます

のっち 「学園アイドルマスター」を遊び始めたときに、私が最初に選んだSSRカードのアイドルは、見た目が一番好きだったリーリヤさんで。私はボブの女の子がとにかく好きなんですよ。自分がボブだからっていうのもあるんですけど(笑)。だからリーリヤさんで始めたんですけど、なかなか難しかったです。ゲーム性をまだ理解できないままやってたからというのもあったんですけどね。それで次に出た咲季さんで始めたら、もう強くて!体力の最大値も多いし、進めやすかったんですよ。そのあとでストーリーイベントを観始めたら咲季さん、手毬さん、ことねさんがメインで出てきて、「面白い3人だなー」と思って。そこから1人ずつプロデュースし始めたんです。

小美野 実は、まさにそうなるように作ったんです。この3人は最初に触っていただきやすいように、ほかの子よりも使いやすく遊びやすくしてあるんですよ。特に咲季は早熟なアイドルだという設定があるので、最初のうちはすごく簡単にクリアできるんだけど、長くプレイしていくとどこかで詰まってしまうという。

のっち そう!(笑)

小美野 物語と共通するような形で、ゲームの中に“詰まりどころ”みたいなのをあえて作っているんです。

のっち そういうところが本当に面白かったです。咲季ちゃんで続けていくと、妹(花海佑芽)には勝てないんですよ。難易度がレギュラーとプロとあって、プロのほうだとどうしても佑芽に勝てない。いつも1位は佑芽という状態が続いていて、バランスを考えて作ってるんだなと思いました。

小美野 今回はできるだけストーリーと遊びの部分をつなげたいと思っていて、QualiArtsさん(「学園アイドルマスター」を共同開発・運営している会社)と相談しながら「この子はこうしてほしい」という無茶をかなりいろいろ言いました。入学総合成績が最下位の倉本千奈と、下から2番目の篠澤広は、どちらも歌やダンスの経験がない完全な初心者という設定なので、それぞれプロデュースするのがむちゃくちゃ難しくて、最初にその子たちを選ぶと難易度が上がってしまうんですよね。

のっち プロデュースする前は歌が下手でダンスも全然踊れない、みたいな子って、これまでの「アイドルマスター」シリーズにもいたんですか?

小美野 何かしら苦手はあっても、完全なる初心者からのスタートはおそらく初めてです。これも学校が舞台だからこそできることかなと思います。プロで歌もダンスも下手なんて子がいたらおかしいですからね……。

のっち 今までのアイマスって、事務所に所属するアイドルの卵をプロデュースするお話ですよね。あんなに何もできなかったらそもそも事務所には入れるかどうか(笑)。

小美野 声優キャストさんの事務所に「下手なバージョンの歌を録らせてください」とお願いしたら、「は? どういうことですか」って言われました(笑)。

左から小美野日出文さん、のっちさん。

左から小美野日出文さん、のっちさん。

のっち あれって声優さんがわざと下手に歌ってるんですか?

小美野 最終的に実装されたものはほぼ、演技で下手に歌ってもらっています。最初は「わざとらしくなっちゃうかな?」と思ったので、実際に初めてレッスンしたときの一発目の音源を録っておいて、これを使おうって話もしていたんですよ。もちろん許可も取って。でも演出と合わせてみるとどうしても合わない部分が出てきたので、演技で歌ってもらうことにしました。

のっち レベルが上がるごとに歌がうまくなっていく印象なんですけど、あれって何段階かに分けて録ってるんですか?

小美野 大きく3段階あります。一番うまいテイクから録って、ちょっとずつ引き算していくんです。でもキャストさんによってはどうやってもうまくなっちゃうので、「よし! 音を消そう!」ってことになって、クリックだけを流してアカペラで歌ってもらってます。

のっち へええ!

小美野 やっぱりテンポが取りづらくて歌いにくいから、まるでリズムが取れてないような印象をリアルに作ることができましたね。

のっち 広さんが最初に歌ったときはびっくりしました。体力がまったくないから本当に声が出てなくて。「私の実力を見てください」って歌い始めたら全然声が聞こえなくて、スマホを耳に近付けました(笑)。

小美野 あのウィスパーボイスは収録のとき、音響さんがすごく大変だったみたいですね(笑)。

のっち それが面白かったです。プロデュースしていると愛着も湧くし。

小美野 まずは過程を大事にしたゲームを作りたかったんです。アイドルの成長を見せるためには、いかに過程を丁寧に描いていくかが大切だと思うので。ゲームってどうしても結果を求めることが多いじゃないですか。レベルを上げてボスを倒すとか、対戦ゲームでほかのプレイヤーに勝つとか。でも「学園アイドルマスター」では、アイドルのことをもっと知ってもらって、好きになってもらうまでは、とにかく過程をじっくり楽しんでもらいたいということを第一に考えてました。

複数人でのライブシーンをやめて、とにかく1人だけにフォーカスした理由

のっち 「学園アイドルマスター」はライブシーンの作り込みもすごいですよね。

小美野 ありがとうございます。もちろん技術的なこともいろいろあるんですけど、あのクオリティが担保できている一番の理由は、「歌って踊らせるのは1人だけ」と決めていることなんです。

のっち ああ、そういえば!

小美野 僕はこのゲームの開発をしている最中に、一時期ミリシタ(「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」)も担当していたんですけど、あのゲームには39人が1つのステージで同時に歌って踊るライブシーンがあったんですよ。しかもキャラクターの立ち位置によって歌い分けが変わるし、衣装も全員バラバラに着せ替えられるという、ものすごいことをやっていて。自分で担当していながら「今作っているものは、これと比べられるのか……」って思ってしまいました(笑)。

「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」ゲーム内楽曲『UNION!!』39人ライブver. MV

のっち ははは。

小美野 「学園アイドルマスター」のクオリティで2、3人で踊らせると、それを動かせるスペックの端末はかなり限定されちゃうんです。クオリティを下げずに、今普及している端末でたくさんの人に遊んでいただけるようにするためには、やることを絞らなければいけない。だったら今回はとにかく1人だけにフォーカスして、ステージセットも演出もその1人が美しく輝く瞬間のために作ろう、というのが今回のライブシーンなんです。ちなみにこの作り方をしておけば、いずれ技術や端末スペックが上がっていったときに、同じクオリティで何人かで同時にライブすることもできると思っています。今できる最高峰のクオリティと、何年か先の将来要求されるクオリティも考えて、これが最善手だと思いました。

のっち アイドルから生身の人間を感じるんですよね。肉っぽさがあるというか。いやー、すごいです。

のっちさん

のっちさん

小美野 それは開発の変態的なこだわりですね(笑)。いろんなところが揺れるから肉っぽさがあるし、汗をかいたりとかもしますし。

のっち そうそう、ことねさんの髪の毛の動きとか。

藤田ことねライブシーン

小美野 髪の毛を揺らすときは、3Dモデルで作った髪型の中にボーン、つまり骨を入れて動かすんですよ。でもそれは動かせば動かすほど演算の処理で負荷が大きくなる。例えばもし、ことねが3人並んで踊っていたら処理で大変なことになります。だからそういうのを諦めて、今回は1人を丁寧に描くことにしたんです。

のっち なるほどー。

小美野 開発しているときも、先ほどお話ししたミリシタ以外にもたくさんのアイドルゲームがあって、素晴らしいライブシーンを実現されてました。そんな中でさらに何年後かにそれらライバルたちとどう勝負するかを考えたときに、技術で正面から戦うのは危険だと思いました。僕らがやるからにはそうでなく、コンセプトで勝ちたい。先ほどはクオリティの側面から1人にした理由を話しましたが、決めた順番で言うとこの「コンセプトで勝ちたい」が先ですね。「学園アイドルマスター」はプロデューサーとアイドルが1対1になって成長していくゲームなので、ライブシーンも1人でステージに立ってもらったほうがいいよね、とコンセプトを決めて、1人だけにリソースを注いでクオリティを高めることができました。

のっち いやー、よかったと思います。あの大きなステージを1人でめちゃくちゃ盛り上げているアイドルを観ると感動しますもん。

小美野 デカすぎなんですけどね(笑)。

小美野日出文さん

小美野日出文さん

のっち デカすぎです(笑)。アイドルを養成する学校だから、敷地の中にライブ会場もありそうですけど。

小美野 講堂はもともと武道館くらいの大きさにするつもりだったんですけど、気付いたらドームくらいデカくなってしまって(笑)。あの学校はめちゃくちゃ金持ちの財閥が作ったという設定なんです。学園長のお孫さんがアイドルになりたいって言ったから、じゃあアイドルになるための学校を作ろう、という。

のっち そのお孫さんって生徒会長のことですよね?

小美野 生徒会長の十王星南ですね。11月16日に追加プレイアブルキャラクターとして実装する予定です。

十王星南プロモーションビデオ「Choo Choo Choo」

のっち えっ! プロデュースできるんですか?

小美野 できるようになります。

のっち でも星南って最強のアイドルなんですよね? それを私がプロデュースしなきゃいけないんですか?(笑)

小美野 どうなると思います? 楽しみじゃないですか? 星南はもうすでに学校のトップにいるわけですからね。でも実は彼女、アイドルになることを諦めてるんですよ。自分の能力に限界を感じていて、学校の外でプロとして活躍しているほかのアイドルには敵わないと感じていて。だからプロデュースする側に回りたくて、自分からは才能にあふれているように見えることねをずっと追いかけてるんです。

のっち 私はそこを励まして、自分がアイドルになるようにプロデュースするわけですよね。難しそう……(笑)。

小美野 どうやって口説き落とすのかは見どころだと思います。

のっち 楽しみです!

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はやぽん @Hayaponlog

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これは面白い https://t.co/Wpzi8HFft0

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