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佐々木敦&南波一海の「聴くなら聞かねば!」 9回目 後編 [バックナンバー]

エビ中の歌を通じて伝えたいものとは?

私立恵比寿中学・柏木ひなた&小林歌穂、えみこ先生とアイドルの歌唱を考える

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佐々木敦と南波一海によるアイドルをテーマにしたインタビュー連載「聴くなら聞かねば!」。前回に引き続き私立恵比寿中学のメンバー、柏木ひなた&小林歌穂と、彼女たちのボイストレーナーである“えみこ先生”こと西山恵美子をゲストに迎え、アイドルと歌唱についてディープに掘り下げていく。えみこ先生が考える、聴き手の心を震わせる本当の「歌のうまさ」とは?

構成 / 望月哲 撮影 / 小財美香子 イラスト / ナカG

「人それぞれのうまさ」が受け入れられるような時代

佐々木敦 今日は「アイドルと歌唱」というテーマでいらしていただいているわけですが、そもそも「歌がうまい」ってどういうことなのか、考えれば考えるほど、わからなくなってしまうんです。先ほど柏木さんがおっしゃっていた、「歌をそろえる」というのは、つまり「歌がうまい」とされている人の歌唱モデルに全員が寄せていくということで。そうすることによって一定のクオリティに達することはできるんだけど、大人数のグループはそれぞれ歌声に個性があるわけだから、無理にそろえたら、その人じゃなくてもいいんじゃないか、ということになってしまいますよね。

えみこ先生 そうなんです。

佐々木 90年代あたりから、カラオケでいかに高得点を獲得するかみたいなところに歌のうまさの基準が置かれるようになって。それって要するに、いかに高い声が出るかとか、いかに正確なピッチで歌えるかということなんですけど、本来歌のうまさって、そういう画一的な数字で測れないものだと思うんです。90年代は同じような歌い方のシンガーがうまいとされるような時代でしたが、今は「人それぞれのうまさ」が受け入れられるような時代になっているような気がして。

えみこ先生 90年代に日本で売れていた曲は曲調も似ていたというか、だからこそみんな同じような歌い方をしていたのかなと思うんです。でも、ここ最近はヒット曲もバラエティ豊かになっていますよね。エビ中も、ここ数年で楽曲の幅が広がって、同じような歌い方で歌えないものも出てきて。そういう意味でいうと彼女たちはチャレンジャーではあるけど、楽曲のバリエーションが増えたことによって歌を成長させてもらっているわけだから、すごく恵まれていますよね。アイドルグループって、コンセプトに合わせて楽曲の傾向がある程度固まっていることが多いと思うんですけど、エビ中の場合そうじゃないから。

左から柏木ひなた、えみこ先生、小林歌穂。

左から柏木ひなた、えみこ先生、小林歌穂。

佐々木 曲ごとの振れ幅がすごいですよね(笑)。

えみこ先生 そうなんです。そして、それを歌いこなしているのがまた素晴らしい。

佐々木 でも歌う側からすると大変ですよね(笑)。ライブでもアレンジなり、いろんなことが変わっていくわけじゃないですか。

えみこ先生 それが歌えるようになりましたから。すごいなって思いますね。

南波一海 逆もあるんじゃないですか? 歌えるようになったから、こういう曲にチャレンジさせてみようみたいな。年末のライブを観て気付いたんですけど、以前に比べてオモシロ演出みたいなものが減って、より歌を聴かせる構成になっていますよね。ボイストレーニングを通じて歌に対するアプローチが変わっていったことに伴って、ライブの見せ方も変わっていったのかなって。

えみこ先生 それは確かにあるかもしれません。ただ、メンバーも年齢を重ねて大人になっていますし、あまり演出を入れすぎると、子供っぽくなってしまうというか。それが売りだった時期もあったと思うんですけど、彼女たちも大人になりましたから。そういう部分も含めたうえでの変化だと思います。

左から柏木ひなた、えみこ先生、小林歌穂。

左から柏木ひなた、えみこ先生、小林歌穂。

私立恵比寿中学を会社として考えたら?

柏木ひなた でも新メンバーの3人(桜木心菜、小久保柚乃、風見和香)を見てると、すごく落ち着いてるなと思うんです。私たちが彼女たちくらいの年齢だった頃は、もっと子供だったんですよ。猿が8匹いる感じで(笑)。

小林歌穂 そう! 猿だったよね(笑)。

柏木 3人とも大人っぽいから、子供っぽさがステージ上で出ないのかなと思って。

佐々木 新メンバーに関しては、今後どのように指導しようと考えているんですか?

えみこ先生 結局教えるのは私なので、今までのやり方と似てしまうところはあると思うんです。そこは自分にとって勉強不足というか、戒めにしたい部分ではあるんですけど、どうしても同じ人間がやることなので。

佐々木 ベーシックな部分は変わらない?

えみこ先生 そうですね。まずは6人に教えてきたことを新メンバーにも教えて、そこから各自に合ったやり方を考えていこうと考えています。かほりこ(小林歌穂と中山莉子)が入ってきたときとは、また違う感じなんですよね。新メンバーの3人は、ある程度グループが完成したタイミングで入ってきたわけですけど、かほりこが加入した頃は、まだエビ中が固まっていない時期だったので。

南波 じゃあ今は9人体制になって、新たな方向性を模索している感じですかね?

左から佐々木敦、南波一海。

左から佐々木敦、南波一海。

えみこ先生 昨年末の「大学芸会」 のときも彼女たちに伝えたんですけど、今まではメンバー同士、横一列のイーブンな関係でやってきたと思うんです。でもこのタイミングで新メンバーも入ってきたことだし、これからは私立恵比寿中学というグループを横一列の集団ではなく“会社”だと考えてみようと言ったんです。

佐々木 それぞれの役割分担をより明確にするというか。

えみこ先生 そうですね。真山(りか)さんや星名(美怜)さんみたいな上司がいて、その下に柏木さんや安本(彩花)さんという営業マンがいて、その間を取り持つ中間管理職にかほりこがいて、そこに新入社員の3人が入ってきたというイメージです。部署ごとに仕事の内容も違うから、それぞれのやり方でいいんだけど、いい会社にするためには全員信念をもって仕事に取り組まないとねって。

南波 もはやグループ名を変えるくらいの勢いですね(笑)。

柏木 グループ名の頭に(株)を付ける感じです(笑)。

えみこ先生 今まで通り横一列の関係性を今の彼女たちに求めるのは歌的に難しいというか、ちょっと違うかなと思うので。みんなそれぞれ大人になっているので。あと、そういうイメージで考えてもらったら新メンバーも気楽にできるんじゃないかなと思ったんです。横一列だと、どうしても追いつかなきゃいけないと思ってしまうので。自分たちは自分たちのやり方でやればいいんだと思ってもらえるのかなって。

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「うまいと言われるんじゃなくて、すごいと言われる人になりなさい」

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吉田光雄 @WORLDJAPAN

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