のっちさん

のっちはゲームがしたい! 第9回 [バックナンバー]

ドラクエが愛され続ける理由とは? 堀井雄二さんにこの35年間の話をしてもらいました

スクエニ公式ショップ&カフェ、ARTNIAでは思わぬサプライズに大喜び

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鳥山さんは「ドラゴンボール」じゃなくて「ドラゴンクエスト」を描いてくれた

のっち さっき「『I』から『III』まで2年も経ってない」という話をされてましたけど、たった2年で3本も作って、ストーリーのアイデアは尽きなかったんですか?

堀井 「III」までは尽きなかったです。でも「III」がものすごくウケたので、次回作への期待値がどんどん上がってしまって、その次の「IV(ドラゴンクエストIV 導かれし者たち)」はものすごく悩みました。だから「IV」は全5章のオムニバス形式にして、それぞれのキャラクターの人生を書いてみようと思ったんです。

のっち 「IV」はそれまでの3作とはちょっと違いますよね。実は私、「IV」は途中までやってどうしても勝てなくて詰んじゃってるんですけど(笑)、5章で全員集まるところまでは進めてます。

堀井 これを作るときに「『IV』で初めてドラクエをやる人もいるだろうな」と思ったんですよ。だからいきなりパーティプレイだと敷居が高いかもと思って、「I」から「III」までを追体験してもらうようなつもりで、第1章はライアン1人にして、進めるうちにどんどんパーティが複雑になるようにしたんです。途中でトルネコがアルバイトして金を稼ぐという、ちょっと違った章を挟んだりしつつ(笑)。

のっち なるほど。「V」はどういう気持ちで作ったんですか?

堀井 「V」ではゲームしてる人を真剣に悩ませてやろうと思ったんです。ビアンカとフローラとの結婚もそういうことなんですよ。

のっち ああ、「V」はもう、つらいことばっかりで……(笑)。

堀井 主人公は序盤から父親を殺されて奴隷になりますからね。その後もいろんなことがあって大変なんですよ。

のっち でも、あの波乱万丈な人生は、ゲームしてる側としては次々にいろんなことが起こって楽しかったですね。ドラクエって救われないも話あるのに、なんかこう、ほっこり温かい気持ちになれるゲームなんですよね。不思議なことに。

堀井 それは鳥山明さんのキャラクターデザインもよかったんだと思います。鳥山さんは「ドラゴンボール」じゃなくて「ドラゴンクエスト」を描いてくれたからね。もしこれがほかの大物マンガ家さんだったら、たぶんドラクエは“そのマンガ家さんのゲーム”になってたと思う。

のっち なるほど! 鳥山先生には堀井さんから「こんな感じにキャラを描いてほしい」という話をしているんですか?

堀井 一応、僕がラフデザインを描いて、それを鳥山さんに見せてキャラクターを作ってもらってます。これが僕が描いたものなんですよ。

堀井さんが開発時に描いたラフ画。左から、スライム、アークデーモン。

堀井さんが開発時に描いたラフ画。左から、スライム、アークデーモン。

のっち うわっ、なんですかこれ? ドロドロだ!(笑)

堀井 スライムの最初のイメージです。この絵を鳥山さんが見て、ああなったと。

のっち あ、これかわいい! 「でかい!!」って説明が書いてありますね(笑)。

堀井さんが開発時に描いたラフ画。左から、いたずらもぐら、キングスライム。

堀井さんが開発時に描いたラフ画。左から、いたずらもぐら、キングスライム。

堀井 こういうのを渡して描いてもらうんです。あんまり描きすぎて影響されてしまってもよくないので、これくらいがちょうどよかったんだろうなと思ってます(笑)。

のっち 敵キャラって普通、見た目からして気持ち悪くて、倒したくなる容姿にしなきゃと思いそうなところですけど、ドラクエの場合そうじゃなくてかわいいんですよね。

堀井 愛嬌は入れてますね。怖いのは嫌なので……。

のっち ははは(笑)。

堀井 だから戦闘画面でも言葉を選んだんですよ。勝ったときに「ころした!」とは言わないんです。「まもののむれを やっつけた!」なんですよ。

のっち あっ、そういえば確かに! ドラクエはモンスターが仲間になったりもして、そういう距離感が斬新ですよね。モンスターのことも主人公たちと同じように好きになる。

堀井 そう、それが面白かったので「ドラゴンクエストモンスターズ」というモンスター育成をメインにした派生タイトルを作ったんですよね。

ドラクエはコミュニケーションツールなんです

堀井 ところでのっちさんは「XI」が好きとのことですが、どんなところに惹かれたんですか?

のっち 「世界が大変なことになるぞ」「こんなことになったら大変だ」って言われていることを、ことごとく最悪なほうに進めてしまって、後半パートで1人ひとりにフォーカスされるところですね。

堀井 バラバラになった人たちを1人ずつ集めていくのは「IV」のオマージュなんです。マーニャとミネアみたいな姉妹がパーティにいるのもそうだし。「XI」はそれまでの集大成として作ったので、「I」から「X」までのいろんなオマージュが入ってるんです。

のっち 「V」での、主人公がお父さんお母さんに見守ってもらっている感じも「XI」で踏襲されてますよね。私は初めてのドラクエが「XI」でしたけど、過去作を全部やっている人からしたら「これこそがドラクエだ!」みたいな、まっすぐ王道で集大成な作品だったんだろうなと思います。

左から、のっちさん、堀井雄二さん。

左から、のっちさん、堀井雄二さん。

堀井 忙しそうですけど、どれくらいかけてプレイしました?

のっち 100時間はかからなかったと思います。

堀井 えー! そんなにっ!? お忙しくて毎日はできないだろうし、2カ月くらいかかったんですか?

のっち いやいや、ちゃんとお休みはもらえてるので(笑)、仕事が休みの日に集中して一気にやりました。確か曲のリリースタイミングだった記憶があって、けっこう忙しくはあったんですけど、ヘアーのスタッフさんがゲーム好きで、ヘアーしてもらいながら「今どこまでいった?」「ベロニカには会った?」「あー、まだそこまでなんだ(笑)」みたいな話をするのが楽しかったです。会社の控室でずっと、ゲーム好きのミュージシャンのお友達がPS Vitaでリモートプレイをしていて、その画面を覗き込んで「まだレベルそんくらいかー(笑)」みたいなことを言ったり言われたりして。そうやって、同じ時間に一緒に同じ物語をプレイしている体験は面白かったですね。

堀井 ドラクエはコミュニケーションツールなんです。みんながやってるから、それでみんなで会話が盛り上がるという。

のっち まさに「XI」はリアルタイムでその体験ができましたね。

堀井 昔は子供たちが電車の中で「あの洞窟入った?」「宝箱あったよね?」みたいな話で盛り上がってて。それを聞いた大人たちはゲームの話だと思わずそういう洞窟があるんだと勘違いしたんじゃないかと思うんですよね(笑)。

のっち 「XI」をプレイしているのもお子さん中心だったんですか?

堀井 いや、「XI」については、ドラクエ誕生30周年のタイミングでの発売だったので、むしろ古いユーザーに向けて書きました。サブタイトルの「過ぎ去りし時を求めて」も、そういう意味で付けたんです。

のっち うわっ、その話は鳥肌! 大人になったプレイヤーが昔を懐かしみながら、自分の人生でサブタイトルを回収できるわけですね! リアルタイムで全部やってた人がうらやましい!

堀井 僕は基本的にタイムスリップものというか、時間を戻す話が好きなんですよね(笑)。

のっち なるほど(笑)。

堀井 最近は「東京卍リベンジャーズ」みたいなタイムスリップもののお話が人気があるし、そういう概念が普通に受け入れられる時代が来たな、って思ってました。

最初に気にしたのは、みんなが「コンピュータは無機質で冷たい」というイメージを持っていたこと

のっち 堀井さんはゲーム作りというアウトプットのために、普段どんなことをインプットしているんですか?

堀井 映画を観たり、ドラマを観たり、本を読んだりとか。あとはスキューバダイビングとかサバゲーとかもやってますね。誘われたら断れなくてついて行くんですけど、やってみると面白くて本気で始めちゃう(笑)。

のっち すごい!

堀井 ゲームだとスマホのパズルゲームが以前から好きでやってますね。ちょっとした合間にできるんで。

のっち 「堀井さんって普段どんなことをされてるんだろう?」というのを想像したときに、最初は「キャリアも長くて偉い人だからきっと自由な時間がたくさんあるんだろうな」って思ってたんですけど、「いや違う、あの派生作品の多さを考えたら暇じゃない……!」って気付いて(笑)。絶対お忙しいですよね?

のっちさん

のっちさん

堀井 もちろん全部確認してるんですけど、最近は若いスタッフが育ってきたんで、昔ほどは大変じゃなくなりましたね。昔はシナリオのかなりの部分を自分で書いて、モンスターデータやアイテムデータまで作っていたので本当に本当に時間がなかった……。

のっち やっぱり1日中ずっと、確認、確認、確認……という感じなんですか?

堀井 シナリオは全部チェックしているので、毎回上がってきたプロットに対してあーだこーだ言いながら、より面白くなることを目指してます。「これで終わったら予定調和すぎるから、もうちょっとひねろうよ?」みたいな感じで話し合いをして。

のっち そうやってシナリオとかをチェックしているときに自分の中で守っている、堀井さんが考える“ドラクエらしさ”ってなんですか?

堀井 ワクワクすることですかね。そして、わかりやすくて迷わないこと。だってゲームって「何をしていいかわからない」が一番つらいんですよ。やるべきことがわかっていれば、みんなやりたくなるものなんです。あとは“温かみ”ですね。「I」を作るときに最初に気にしたのは、当時みんなが「コンピュータは無機質で冷たい」というイメージを持っていたことで。だからセリフをできるだけ温かく、人間臭くするように意識してたんです。

のっち 確かに、ドラクエの会話って全体的にお茶目な雰囲気ですよね。

堀井 文章の言い回しはすごく考えましたね。例えば「しんでしまうとは なにごとだ!」というセリフとか。マンガを描いているときに、吹き出しの中の限られたスペースで、いかに短いセリフで面白くするかを考えていたのも役に立ったと思いますね。

のっち なるほど……一度に表示できるテキストの量も決まっていますもんね。

堀井 長いと誰も読まなくなっちゃいますしね。ボイスが入るようになってからちょっと変わってきましたけど。多少は長い文章でもボイスであれば聞いてくれるので。

のっち そういえばそうですね。最初にボイスが入ったのはどのタイトルなんですか?

堀井 いくつかあるんですが、本格的にボイスを入れたのは「ドラゴンクエストヒーローズ」ですね。本格的なアクションRPGを作ろうという話になったときに、アクションゲームだとプレイ中は文字が読めないので声が出た方がいいよねって。

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すいどーなつ⊿パフュ馬応援団長_有明② @tosho_boy

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