BABYMETALが8月8日、4thアルバム「METAL FORTH」を全世界同時にリリースした。
ワールドワイドな活動をさらにパワーアップさせるため、BABYMETALはアメリカに活動拠点となる会社「BABYMETAL WORLD LLC」を設立。ハリウッドに本社を置くキャピトル・レコードとグローバルレーベルパートナー契約を締結した。
本格的な海外進出の狼煙を上げるニューアルバムは、BABYMETALがこれまでの活動を通して出会った世界各地のアーティストとのコラボ曲を多数収めた作品。豪華アーティストが、“メタルのその先へ”を示すアルバムを鮮やかに彩っている。
音楽ナタリーでは新作の発売を記念して、BABYMETALにインタビュー。始動から10年以上を経た今、このタイミングで本格的な海外展開を目指した意図や、Electric Callboy、Poppy、Bloodywoodら豪華アーティストが参加したニューアルバムの注目ポイント、制作エピソードを聞いた。海外でのライブ経験が豊富な彼女たちならではの視点で、日本のファンや日本でのライブの魅力についても語ってくれた。
取材・文 / 田中和宏撮影 / 宮脇進
BABYMETALの新たな挑戦
──BABYMETALは海外展開を加速するため、アメリカにBABYMETAL WORLD LLCを設立し、同時にハリウッド拠点のキャピトル・レコードとパートナーシップを結びました。もう10年以上も国内外で活躍してきたBABYMETALが、なぜ今このタイミングでこのような展開に踏み切ったのでしょうか?
SU-METAL ワールドツアーを重ねる中で、ここ2、3年は海外の反響が大きくなっていまして、リスナーの年齢層もかなり若い方が増えてきました。「BABYMETALを聴いて育って、初めてライブに来ました!」というような年下の子たちや、長年メタルを聴いてきた往年のファンもたくさんいます。世代の層が広がっていると感じていて、今回の会社設立とキャピトル・レコードとのパートナーシップはBABYMETALの“Season2”の始まりであり、海外に本格的に挑戦する意思表明だと思っています。日本人アーティストが踏み込まなかった領域に挑むのは覚悟が必要でしたが、世界中のファンや共演アーティストが、私たちを後押ししてくれました。
──メンバーの皆さんは1年を通して、日本と海外どちらにいることが多いですか?
SU-METAL だいたい半々ぐらいです。
──日本のファンからすると、アメリカに会社を設立して、キャピトル・レコードとパートナーシップを締結することで、「日本での活動が減ってしまうのでは」と感じる可能性もあると思うんですが、実際はどうなるのでしょう。
MOAMETAL 私たちは日本で生まれ育ったので、日本が一番好きなのは変わりませんし、日本のお客さんも絶対に忘れていません。海外のレコード会社との契約は、“音楽界の大谷翔平”みたいな挑戦だと思ってください(笑)。大谷選手みたいに、海外で活躍することで今まで会えなかった人たちにも私たちの活動を届けたいです。日本発のグループだから、「日本に絶対戻ってきます」……なんて言うと“来日”みたいな感じになりますけど、日本のことはずっと大切にしたいです。
メタルのその先へ、ニューアルバムのコンセプト
──BABYMETALの新たな始まりを告げるニューアルバム「METAL FORTH」について、“メタルのその先へ”というコンセプトの解釈を含め、どのような作品になっているのか教えてください。
SU-METAL BABYMETALのアルバムはいつもかなりバラエティに富んでいて、私にとって“挑戦状”みたいなものなんです。いろんな歌い方を試しながら作るんですが、今回はそのバラエティの”富み方”がものすごいです(笑)。海外ツアーで出会った同世代や次世代のアーティストとコラボして、彼らの音楽を吸収することで新しいBABYMETALが生まれました。フィーチャリング相手が作った曲も多くて、今までとは違う一面がけっこう出ています。メタルのその先へ、新しい世界を切り開くという意思をこのアルバムで感じてほしいです。
──2010年に始動してから現在までの活動の振り返ってみても、BABYMETALのオリジナリティは時代の流行を超えたものだったと思いますが、さらなる新境地を示すということですね。
MOAMETAL BABYMETALはもともとメタルとJ-POPの融合で生まれたグループなので、常にジャンルを超えている感覚があります。今回はメタルだけでなくポップなアーティストともコラボして、これまで以上にジャンルを飛び越えた作品になりました。メタル以外との融合で新しいものが生まれるのは、15年の経験でわかっていることなので、これからも挑戦を続けて進化していきたいです。
日本とドイツに見る「フーフー!」の捉え方
──今作のコラボアーティストとは、実際にステージでもコラボしていますね。どんな場面が印象に残っていますか?
SU-METAL アルバムの中だと「RATATATA(BABYMETAL × Electric Callboy)」ですね。
MOAMETAL Electric Callboyとはドイツの「Rock am Ring 2024」や日本の「FOX_FEST」のステージでコラボしたのですが、日本とドイツで盛り上がるポイントが違って面白かったです。制作ではアレンジの仕上がりを密に話し合って、ミュージックビデオ撮影の前日まで……。
MOMOMETAL いや、当日まで話してたよ(笑)。
MOAMETAL そうだったっけ? 「フーフー!」ってかけ声があって、Electric Callboyは「なんでフーフーなの?」「ドイツ人にはわからないよ」って(笑)。私たちは「こういう音楽だから、みんなでフーフー言うんだよ」と伝えたけど、「はあ?」みたいな反応で、どうしても「フーフー」を入れたかった私たちと、減らしたかったElectric Callboyでちょっと揉めました(笑)。でも「FOX_FEST」で日本のファンが盛大に「フーフー」って言ってくれたから、Electric Callboyも「なるほど!」と納得してくれました。
──日本のファンがElectric Callboyを納得させたんですね。ケビン、ニコとBABYMETALはとても仲良しな雰囲気を感じます。
MOAMETAL めっちゃ仲いいです! お友達だと思ってます。
MOMOMETAL うん、最初からめっちゃフランクに話しかけてくれて、お友達って言葉がぴったり。ホントにいい人たちばかり。
MOAMETAL 英語が第一言語じゃない者同士、歩み寄って話せるのがよかったんですよね。
SU-METAL ドイツでMV撮影をしたとき、Electric Callboyチームが言ってたドイツ語の“イヤーゼッヒャー”(Ich bin fertig?)を真似して言ってたら、みんな爆笑してて。“I'm ready”って意味らしいんですけど、めっちゃウケてて、会うたびに「イヤーゼッヒャー!」って言われます(笑)。
MOAMETAL ケビンやニコだけじゃなく、ほかのメンバーもスタッフも優しくて。フェスで一緒になったら挨拶し合ったり、ごはんを食べたり。仕事でこんな友達ができるなんて意外でしたね。性別も年齢も違うけど、仲よくしてくれるからホントにありがたいです。
BABYMETALファンを公言するPoppyとの会話
──アルバムリリースを前に、この春にはPoppyさんとのコラボ曲「from me to u feat. Poppy」のMVが公開され、話題になりました。
MOMOMETAL CGがすごくて、ビーストが出てくるんですよね。間奏でPoppyがシャウトして、私たちもシャウトして、エネルギーがぶつかり合う感じがすごく壮大です。応援ソングっぽい振付になっているし、MVや曲を通して元気を与えられる作品になったと思います。
MOAMETAL この曲はBring Me The Horizonの元メンバー、ジョーダン・フィッシュに作ってもらいました。バンドに在籍していた時代から「コラボしようね」って話してたから、構想はずっと前からあったんです。
SU-METAL マイクなしで踊るのは、ライブの特別な演出以外だとMVだけですね。振付はみんなで覚えて、私が歌う部分だけ抜くことが多いから、一応全部踊れるんです。……踊れない曲もあるけど(笑)。ダンスがメインのMVは珍しいよね。
MOAMETAL Poppyとは別々に撮影したから会えなかったけど、完成したMVを一緒に観たかったですね。こんなに反響があるなんて、びっくりでした。
──世界中からコメントが書き込まれてますよね。ちなみにPoppyさんはBABYMETALのファンだとおっしゃっていたそうですね。
MOMOMETAL そう聞きました!
SU-METAL ブラジルのフェスでPoppyと会って、楽屋で少し話したんです。そこで「あなたたちのファンだよ」と言ってくれました。
日本×インド=妖怪メタルソング
──「METAL FORTH」は欧米だけでなく、アジアのアーティストとのコラボ曲も収録されたワールドワイドな作品です。「Kon! Kon!(feat. Bloodywood)」はインドのヘヴィメタルバンド・Bloodywoodとのコラボで生まれた“妖怪メタルソング”で、日本らしさとインドらしさのバランスが絶妙です。
SU-METAL Bloodywoodが作ってくれたオケに私たちが歌詞を入れたんですが、最初にオケだけ聴いたときは「すっごいインド!」って思いました(笑)。独特な楽器の音や「えいえい!」って合いの手にインドを感じるけど、妖怪をテーマにした歌詞を入れると急に日本っぽくなって、まるで古いお屋敷や提灯を持って森を歩くような雰囲気。そこにダンスが入ると今度はボリウッド感が強く出るんです。振り入れにあたってインドのダンスを研究したけど、独特な動きが多くて慣れるのが大変でした。
MOAMETAL 「Road of Resistance」みたいな激しい振付で、中腰になる動きが多いからハードなんですよね。インドのダンスの奥深さも感じました。この曲って、日本語やインド音楽になじみのないアメリカやイギリスの人が聴いたらどう感じるんだろうね?
SU-METAL 気になるよね。日本の方にはオケだけで聴いてほしいな、機会があれば。きっと「すっごいインド!」って思うはず。
MOAMETAL たぶんそんな機会ないよ(笑)。
SU-METAL じゃあライブで私の声を聴かないようにするとか? すっごいインドになるよ(笑)。
MOAMETAL ヒンディー語のラップも入ってるよね。Bloodywoodのメロディと合いの手がしっくりきて、日本人もインド人も絶対に盛り上がると思います。
MOMOMETAL インドでライブしたら面白そう! どんな光景になるか想像がつかないですけど、いつかできたらなって思います。
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3人のストイックさ「初披露までに100回は踊るんです」