女王蜂が国内のライブハウスでライブを行ったのは2023年12月のアヴちゃん(Vo)の聖誕祭ライブ以来。熱気渦巻くひさびさのフロアで女王蜂はコンセプチュアルなセットリストのライブを展開し、オーディエンスを約1時間半にわたって翻弄し続けた。
ライブハウスならではの距離感「みんないつもありがとう!」
開演時刻を迎え、サポートメンバーの山口美代子(Dr)によるスネアの連打が響く中でステージ前方の幕が開き、やしちゃん(B)、ひばりくん(G)、サポートメンバーの山口とながしまみのり(Key)が姿を現した。そこへアヴちゃん(Vo)が加わり、マイクのシールドを一閃させてオーディエンスの大歓声を浴びる。5人が着用しているのはフリルやオーガンジーをふんだんにあしらった、スモーキーブルーの新衣装。視覚面でもファンの期待を高めたところでアヴちゃんは1曲目「Serenade」のイントロを高らかに歌い、ライブの火蓋を切った。
ステージ上や会場の天井にはいくつものミラーボールが回り、5人のパフォーマンスを鮮やかに彩る。アヴちゃんはアウトロで「みんないつもありがとう!」と叫び、ライブハウスならではの距離感の近さを感じさせる。その後は「バイオレンス」「ヴィーナス」など、ライブに欠かせないアッパーなキラーチューンが連投されて場内の熱気はさらに上昇。オーディエンスが握ったジュリ扇が起こす風はその熱気を煽り立てるようにフロアに渦巻いた。
蜂月蜂日の8曲目はライブ初披露「08」
山口のドラムとひばりくんのギターが刻む高速ビートのイントロですさまじいどよめきが起こったのは「ギラギラ」。ライブで演奏されるのはひさしぶりの楽曲を、同じく高速で回るミラーボールの光が盛り立てる。アヴちゃんはライブ中に何度も「調子はどう?」「踊れる?」とフロアに呼びかけ、ことさらに楽しそうな表情だ。さらに8曲目には最新アルバム「悪」の収録曲である「08」をライブ初披露。蜂月蜂日のライブで8曲目にパフォーマンスするという粋な演出、骨太なアンサンブルとアヴちゃんが歌うラップ調のボーカルに、観客は大いに酔いしれた。
ライブ中盤では「しゅらしゅしゅしゅ」の浮遊感に満ちた音像で会場全体をクールダウンさせつつ、続く「MYSTERIOUS」はながしまのピアノと山口のバスドラが印象的なアレンジで聞かせるなど、前半とはまた異なるバラエティに富んだ楽曲群でオーディエンスを魅了する女王蜂。アヴちゃんが悠然とステージを去ったのち、4人は「つづら折り」のインストバージョンを奏で、ひばりくんが鳴らす哀切なギターの音色が優しくフロアを満たしていった。アヴちゃんは総スパンコールのマイクロミニドレスに衣装を改めステージに再登場し、「HALF」を熱唱。何度も拳を突き上げながら歌うその姿に牽引され、オーディエンスも大歓声を上げてジュリ扇をはためかせた。
絶望から希望へ、後半で描かれたストーリー
大盛り上がりのまま走り抜けるのかと思いきや、会場の空気は「01」から少しずつ不穏に変化していく。後半で披露されたのは不幸や絶望や死に直面した悲痛な思い、そんな運命に立ち向かい強く生きていこうとする思いを歌った楽曲ばかり。近年のライブではあまり披露されてこなかった「無題」を、聴く側を絶望の底に叩き落とすように届けたあとは、「聖戦」「メフィスト」を「それでも生きていこう」と語りかけるようにパフォーマンス。ストーリー性のある展開で会場を深い感動に導いた。
前向きなメッセージを壮大なアンサンブルに乗せた「燃える海」で終盤のダークな展開にピリオドが打たれ、ステージ上の5人に万雷の拍手が送られる。ハッピーエンドの空気が漂う中、本当のラストナンバーとして届けられたのは「雛市」。まさかの展開に息を呑む観客を前に、アヴちゃんは現実を叩きつけるように「強く 強く生きてゆかなきゃ 世の中が優しい日はひとつもなかった」と歌い、やしちゃんが鳴らすヘビーなベースラインと相まって観客の身も心もビリビリと震わせた。すべての曲が終わった静寂の中でアヴちゃんがゆっくりと手を振り、ステージ前の幕が静かに閉じる。観客の手を優しく引いて希望の扉に導くのではなく、背中を突いて扉の外に叩き出すかのようなエンディング。オーディエンスに強い衝撃を与えたまま、今年の「蜂月蜂日」は終了した。
終演後には恒例のアヴちゃん聖誕祭ライブが今年も開催されることが発表された。「アヴちゃん聖誕祭2025~GAL GAL GAL~」は12月25日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)で開催。公式ファンクラブでは8月17日までチケットの先行予約を受け付けている。
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