TOMORROW X TOGETHERが通算4枚目のフルアルバム「The Star Chapter: TOGETHER」をリリースした。
TOMORROW X TOGETHERは2019年にBTSに続くボーイグループとしてBIGHIT MUSICからデビューした5人組。今年でデビュー7年目に突入し、デビュー当時はあどけなさが残る10代だった5人も、今や全員が20代に。少年から青年へと成長を遂げた今、彼らは新たなフェーズへと歩を進めようとしている。
「The Star Chapter: TOGETHER」は、そんな彼らにとっての“第1章”の集大成となる作品。過去作のモチーフをちりばめたコンセプトトレーラー、収録曲の構成、そしてそれらを体現するパフォーマンスまで、そのすべてに、これまで歩んできた軌跡とさらなる高みを目指す確かな意志が宿っている。ファンとともに前に進み続けてきた5人の“星”は、今どこへ向かおうとしているのか。本稿では、ニューアルバムに込められた思いや表現を読み解きながら、TOMORROW X TOGETHERの“第2章”の始まりを見つめていく。
文 / 岸野恵加
6年超の月日が流れて
キラキラと輝く星は、5つの“ツノ”が集まって形作られている。まるでTOMORROW X TOGETHERの5人を表しているようだ。そんな星、そしてグループ名の一部をタイトルに冠した4thフルアルバム「The Star Chapter: TOGETHER」は、TOMORROW X TOGETHERにとってこれまでの活動の集大成となる作品である。
2019年3月、多くの期待を寄せられながら、BTSが所属するBIGHIT MUSICよりデビューしたTOMORROW X TOGETHER。デビューアルバム「The Dream Chapter: STAR」は世界44の国と地域でiTunes「TOP ALBUMチャート」1位を獲得し、この年の韓国の各授賞式で新人賞10冠を記録。早くも超大型ルーキーとしてその名を轟かせた。またアメリカの大型音楽フェス「Lollapalooza」で2023年にK-POPグループとして初めてヘッドライナーを務め、2025年8月からは4度目のワールドツアーを控えるなど、グローバルに高い支持を得ている。
日本での人気も高まり続け、2020年1月にシングル「MAGIC HOUR」で日本デビュー。2ndアルバム「The Dream Chapter: ETERNITY」以降、最新作である今作「The Star Chapter: TOGETHER」まで12作連続でオリコン週間アルバムランキング1位を獲得し、海外アーティストによるアルバム連続1位獲得作品数歴代1位の記録を自己更新し続けている。2024年にはK-POPアーティスト史上最速で日本4大ドームツアーを成功に収め、「NHK紅白歌合戦」に初出場した。
2019年のデビュー時は、全員が10代。「それぞれ違う君と僕がひとつの夢で集まって共に明日を作って行く」という意味が込められたグループ名の通り、TOMORROW X TOGETHERはひとつの夢に向かって少年たちが互いにシナジーを発揮する、明るく活発なグループとして誕生した。そこから6年超の時が流れ、すっかり少年から大人の男性になった5人。「The Star Chapter: TOGETHER」ではその成長の過程が詰め込まれ、メンバーが磨き上げてきた表現力が惜しみなく発揮された。
MOAと一緒に世界を進む
TOMORROW X TOGETHERはこれまで、「The Chaos Chapter」「The Name Chapter」「The Dream Chapter」と、チャプターごとにさまざまな世界観を提示してきた。「The Star Chapter」シリーズは、2024年11月にリリースされた7thミニアルバム「The Star Chapter: SANCTUARY」でスタートし、今作「The Star Chapter: TOGETHER」で完結を迎える。同作では再会した“君”を通じて経験した魔法のような瞬間と、それによって変わった“僕”についての物語が紡がれたが、「The Star Chapter: TOGETHER」では“僕”が、守られた場所(SANCTUARY)を抜け出して“君”と世界を救おうとする能動的な姿が描かれる。
TOMORROW X TOGETHERのファンネームは「Moments Of Alwaysness」の略称である「MOA(モア)」で、「TXTとファンが共有する時間はどの瞬間も永遠である」「(韓国語の「모아=モア=集める」にちなみ)お互い夢の欠片を集め、1つの夢を完成させる」という意味が込められている。強烈なトラップのビートと幻想的なピアノラインが共存した今作のリード曲「Beautiful Strangers」は、まさに5人とMOAの物語が形になったような1曲だ。歌詞では「君が僕を呼んで目覚めさせてくれたように 今度は僕が君を呼ぶよ」と、“一緒に世界に進んでいく”意思が示される。振付制作にはYEONJUNが参加しており、リリックに込められた感情を全身で表現するかのような、TOMORROW X TOGETHERらしい繊細なパフォーマンスと表情に目が離せなくなる。なおアルバム発売日から2週間後の8月4日には、この曲の日本語バージョンが配信リリースされた。
メンバーの多くがお気に入りの楽曲として挙げているバラード「Song of the Stars」も、メンバーとMOAのこれまでの旅路と絆を思わせるような収録曲だ。エモーショナルかつ温かい歌声で「永遠になりますように 星の歌 僕たちの名前 一緒にいる理由」と歌われ、アルバムは締めくくられる。ライブでこの曲を聴いたら、間違いなく胸に熱いものが込み上げてくるだろう。
5つのソロ曲、5つのミュージックビデオ
そしてなんといっても、デビュー以降初めてメンバー全員のソロ曲が収められていることが「The Star Chapter: TOGETHER」の大事なトピックだ。ここではそれぞれの楽曲について、少しずつ紹介していきたい。
先陣を切るのは、2024年9月に「GGUM」でメンバーの中で初めてソロデビューを果たした最年長のYEONJUN。「GGUM」では強烈なパフォーマンスでファンを魅了したが、「Ghost Girl」ではレゲエロックサウンドに乗せて、ハスキーな歌声を響かせる。イギリスのシンガーソングライター・YUNGBLUDが楽曲をプロデュースし、YEONJUNも作詞に参加。幽霊のような相手に夢中になってしまう感情がストレートに歌われる。グループのダンスを牽引する存在である彼が、ステージでこの曲をどう見せてくれるかも楽しみだ。
続くSOOBINの「Sunday Driver」は一転して、軽やかで愛らしいナンバー。TOMORROW X TOGETHERの楽曲ではセクシーな表現も得意とする彼が、耳馴染みのいいポップソングで軽快な魅力を発揮している。「こうして僕たち2人でいれば 毎日が日曜みたいだ」と心地よいドライブで歌うような歌詞がなんともさわやかで、甘く優しい歌声には、リーダーとしてメンバーを包み込む普段の彼の魅力がそのまま表れているようにも思える。
HUENINGKAIは「Dance With You」で、最年少とは思えないセクシーな魅力を発揮。ミュージックビデオはメキシコで撮影されており、楽曲もラテンなムードが漂うギターリフが耳に残る。高音も得意なHUENINGKAIだが、「Dance With You」ではささやくような声の表現や、深みのある低音ボーカルで新境地を開拓。「1人じゃ踊れない 甘くて長いこのダンス 僕を君に 君を僕に 完全にゆだねれば ひとつになる2人」と、“君”と理解し合いたい思いをダンスになぞらえて歌った。
これまでもグループの楽曲制作に携わっており、2025年3月に「Panic」でソロデビューしたクリエイティブなメンバー・BEOMGYUは、今回のソロ曲「Take My Half」でも自らをプロデュース。「Panic」に続いて、彼のルーツにあるバンドサウンドで表現されるロックバラード「Take My Half」では、「自分が持っているものを分かち合うことが、自分が幸せになる方法」という考え方が歌詞のベースに据えられ、感情を剥き出しにしたようなBEOMGYUの歌声に引き込まれる。
ソロ曲の最後を飾るのはTAEHYUNの「Bird of Night」。本人が作詞作曲に参加した、ピアノの音色が響くイントロから童話のような世界観が広がっていくR&Bだ。TAEHYUNは透き通った歌声を存分に生かし、ボーカリストとしての力量を存分に発揮している。誰もが経験したことがあるだろう、不安で眠れない夜に寄り添うような優しい歌声と歌詞は、多くの人に共感と癒しを与えるに違いない。MVでは暗い夜を抜けてどこかへ向かうTAEHYUNの姿が描かれ、彼の没入感の高い演技を堪能することができる。
トレーラーにちりばめられた足跡
6月下旬に公開された「The Star Chapter: TOGETHER」のコンセプトトレーラーには、グループの過去の楽曲の要素が多数ちりばめられていた。「Nap of a star」のMVのワンシーンが挿入されているほか、6thミニアルバム「minisode 3: TOMORROW」のコンセプトトレーラーに登場した「星の王子さま」の王冠をオブジェとして活用。またSOOBINのエルフのような耳、YEONJUNの頭に生えたツノ、BEOMGYUのトゲ、TAEHYUNのオッドアイ、HUENINGKAIの翼も、デビュー当初からたびたび用いられてきた彼らの象徴的なモチーフだ(デビュー曲のタイトルは「ある日、頭からツノが生えた (CROWN)」である)。ちなみにこのコンセプトトレーラーは監督の柳沢翔、ファッションデザイナーの田中大資をはじめ、日本のクリエイターが多数参加して制作されている。
K-POPアーティストは新譜リリース日に発売記念ショーケースを行い、新曲のパフォーマンスを披露するのが恒例行事だ。7月21日に行われた「The Star Chapter: TOGETHER」のショーケースで、TOMORROW X TOGETHERは新曲のみならず、デビュー作「The Dream Chapter: STAR」より「Nap of a star」、1stフルアルバム「The Dream Chapter: MAGIC」より「Magic Island」、そして「The Star Chapter: TOGETHER」の最後を飾る「Song of the Stars」をメドレーで披露した。これは、今作がこれまでの成長の物語を描いた作品であることを表現しているようだった。グループの歴史と現在地、その両方を感じ取れる「The Star Chapter: TOGETHER」は、長年のファンはもちろんビギナーが最初に触れる作品としてももってこいだと言えるだろう。
走る、飛躍する、“第2章”へ進む
初めて彼らの存在を知ったとき、全員が華のある圧倒的なビジュアルの持ち主であることと、ファンタジックな衣装も違和感なく着こなしてしまう“コンセプト消化力”の高さに驚いた。しかし筆者が彼らの魅力に引き込まれたのは、トークやバラエティコンテンツで飾らない素の表情を見てからだ。自他ともに認める“顔面国宝”のBEOMGYUが率先して笑いを取りに行く姿には目を丸くしたし、今回のカムバックに紐付くプロモーション活動においては、SOOBINは番組でスイカを3秒で食べる特技を勢いよく披露して「デビュー7年目でここまでする必要があるのかとほかのメンバーには止められたんですが……」と話して共演者を笑わせていた。
また韓国の人気動画コンテンツ「アイドル人間劇場」では5人が2025年上半期の活動を振り返り、笑いを交えながらも、「今年になって団結力がより高まった」と、飽くなき向上心やメンバーの絆を感じさせるトークを繰り広げている。それぞれが嘘のない真摯な人間性の持ち主であるからこそ彼らは人気を高め続けてきたのだろうし、楽曲に込められた真心が、パフォーマンスを通してダイレクトに伝わってくるように感じる。
若さとエネルギーの発露を体現するように、TOMORROW X TOGETHERはMVでよく走っている。「Beautiful Strangers」のMVでも5人は草原をさわやかに駆け、危機が迫る都市から逃げつつ、互いのもとへひた走る。
走り続けてきた5人は、アメリカの「ハリウッド・リポーター」誌のインタビューにおいて、これからの“TOMORROW X TOGETHER ver.2.0”──いわばグループの第2章について「2.0に進んでいく中で、新しい挑戦も待っていると思います。でも、今の僕たちには、そうした挑戦に応える“新たな飛躍”が必要なんです」「ジャンルやスタイルにとらわれず、僕たちが得意とするものならどんな形でも挑戦していきたい」と意気揚々と語っている。「The Star Chapter: TOGETHER」をじっくりと聴き込みつつ、唯一無二の“星”である5人が見せてくれる第2章を、楽しみに待ちたい。
公演情報
TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : TOMORROW> IN JAPAN
- 2025年11月15日(土)埼玉県 ベルーナドーム
- 2025年11月16日(日)埼玉県 ベルーナドーム
- 2025年12月6日(土)愛知県 バンテリンドームナゴヤ
- 2025年12月7日(日)愛知県 バンテリンドームナゴヤ
- 2025年12月27日(土)福岡県 みずほPayPayドーム福岡
- 2025年12月28日(日)福岡県 みずほPayPayドーム福岡
プロフィール
TOMORROW X TOGETHER(トゥモローバイトゥギャザー)
BIGHIT MUSIC所属のSOOBIN、YEONJUN、BEOMGYU、TAEHYUN、HUENINGKAIの5名からなるボーイグループ。「それぞれ違う君と僕がひとつの夢で集まって共に明日を作って行く」という意味がグループ名に込められている。2019年3月にアルバム「THE DREAM CHAPTER: STAR」でデビューし、2020年1月には日本1stシングル「MAGIC HOUR」で日本デビュー。2020年発売の2ndアルバム「The Dream Chapter: ETERNITY」でオリコン週間アルバムランキング1位を記録して以降、最新作となる2025年7月発売の「The Star Chapter: TOGETHER」まで12作連続で1位を獲得し、海外アーティストによるアルバム連続1位獲得作品数歴代1位の記録を自己更新し続けている。2022年には初のワールドツアー「TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : LOVE SICK>」を開催し、9月に初めての来日公演を実施。2022年には、米シカゴの大型音楽フェスティバル「Lollapalooza」に初参加し、翌年にはK-POPグループとして初めて同フェスのヘッドライナーを務めた。2024年には3度目のワールドツアー「TOMORROW X TOGETHER WORLD TOUR <ACT : PROMISE>」の一環で東京、大阪、愛知、福岡を巡る初のドームツアーを開催。また同年末には「第75回NHK紅白歌合戦」に初出場を果たした。
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