のっち

のっちはゲームがしたい! 第5回 [バックナンバー]

気分はもう神室町の住人!「龍が如く」スタジオで3Dスキャンを体験してきました

総合監督・名越稔洋さんとの対談で明かされる、ジレンマを抱えながら開発を続けた15年

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敵を倒す理由は「自分が強いから」よりも、「やられてムカつくから」のほうがやりがいはある

のっち 私が「龍が如く」シリーズを始めたのは、ゲーム好きの女の子の友達から「のっちにどうしても『龍が如く 維新!』をやってほしい」って言われたのがきっかけなんです。でも「維新!」ってスピンオフ作品だから、キャラクターのことを全然知らないうちにやらないほうがいいんじゃないかなと思って。だから、ちょうどその頃に発売された「6(龍が如く6 命の詩。)」を先にやってみたんですよ。私は広島出身だから、ゲームの舞台が尾道っていうのも気になったし。そしたら「6」がそれまでのストーリーの最終章だったんですよね。すごく面白かったんですけど、「私、ここから始めちゃってよかったのかな……?」って思ってました(笑)。

名越 そうだったんですね。でも僕らからすると逆に「『1』から始めたほうがいいよ」とは言いたくないんですよ。シリーズをいくつも作ってると、気を付けないと途中から始める人を置いてけぼりにしてしまうので、そうならないように……例えば今までのおさらいを軽く入れたりしてるんです。だから、その人のタイミングで興味がある順にやってみたけど、それで全然問題なかったって言ってもらえるのが一番うれしいですね。たぶん音楽と一緒です。「最初の作品から全部聴いてもらわないと」って思ってるわけじゃないですよね?

左からのっちさん、名越稔洋さん。

左からのっちさん、名越稔洋さん。

のっち 確かに。実際それで「6」が面白かったから、今年発売された「7(龍が如く7 光と闇の行方)」をやって、次に「1(龍が如く)」をリメイクした「極(龍が如く 極)」もプレイしたので。最近、それまでのシリーズの前日譚の「0(龍が如く0 誓いの場所)」も終えたところだから、今は真島さん(真島吾朗)への気持ちが爆発中です(笑)。

名越 ははは(笑)。

のっち 「7」で「真島さんが重要なキャラクターっぽく出てきたな」と思ってから、さかのぼって「極」や「0」でそれ以前のストーリーを知ると「なるほどなー!」って納得しました。そういう楽しみ方もアリですよね。

名越 いいですね。

のっち あと、ほかの女の子は「JUDGE EYES:死神の遺言」をめちゃめちゃ薦めてくれてて、「龍が如く」シリーズが追いついたらやろうと思ってます。

名越 そういう女性ファンが増える未来って、昔は全然考えてませんでしたね。子供も女性もまったく反応ありませんでしたから。毎回データを取ってるんですけど、最初はプレイヤーの男女比は9.5対0.5ぐらいで男性のほうが多かったです。今は男性のほうが若干多いくらいですが。

のっち 女性ファンが増えて変わったことはありますか?

名越 逆に「それによって何かを変えるっていうのはやめようね」って話はしました。

のっち へえー! カッコいいなー!

名越 そうでないと、たぶん男性ファンが離れるだろうというのもあるし。もちろん、うまくやればファンをさらに増やすことはできたと思うんですが、「せっかくつかんだものが濁ってしまいそう」という気持ちが強かったんです。

のっち たぶん女性ファンはみんな、この物語が好きなんだろうなと思います。狭い世界の中で繰り広げられる、男同士の熱い気持ちのぶつけ合い。それを覗いてるような感覚なんですよ。女の子って“関係性”に惚れますもんね。

名越 なるほど……勉強になります。

のっち それと感情移入しやすいところですね。私はほかのゲームをしているときも、ボス戦とかで相手が本当に憎い気持ちになることがあるんですけど(笑)、「龍が如く」では親友とかと戦ってると「おいっ! 目を覚ましてくれよ……!」みたいな気持ちになってきて。

名越 「2」ではプレイヤーがホストクラブの経営をするんですが、そのときに、順調に売り上げてお金が貯まって、お店をきれいに装飾して、スカウトも雇って……というときに敵に襲撃されて全部ぶっ壊されたら本当にガッカリするじゃないですか。だからその犯人と戦いに行くときはみんな、それはもうコントローラーをへし折るぐらいの力を込めて倒しに行くはずなんですよ。ゲームで敵を倒す理由は「自分が強いから」よりも、「やられてムカつくから」のほうがやりがいはあると思うんです。

のっち ちょうど今「2」をやってるところなんで、ちゃんと襲撃されるところまでホストクラブ経営します(笑)。

名越 あ、言っちゃダメだったかな(笑)。

これを売ることに対して社内に賛成派はほとんどいなかったんです

のっち 「龍が如く」を最初に作ったときから、シリーズがこれだけ続くだろうというのは考えていたんですか?

名越 15年前にプレステ2用ソフトとして「1」を作ったときは、これを売ることに対して社内では賛否両論、というか賛成派はほとんどいなかったんですよ。

のっち ええーっ!

名越 よく言えば斬新。悪く言えば、流行りにまったく乗ってないゲームだったので。でもそこである程度の手応えがあったから、その後のシリーズを続けていくことができたんですが。

のっち よかった!

名越 ただ、遊んでくれるユーザーがいたとしても、入ってくるお金をコストが超えたら、ビジネス的には必ず見切りを付けないといけないんです。シリーズを重ねるごとに皆さんから「ストーリーをもっと見たい」「街を増やしてほしい」という要望が挙がったんですが、すべてはコストを叩くことでしかなく。プレステも2、3、4とどんどん進化していきますし、ユーザーの期待に応えること=開発費を注ぎ込むことになっていたので、「どこかで見切りを付けないと」というのはずっと考えていたんです。ぶっちゃけて言うと、「4(龍が如く4 伝説を継ぐもの)」あたりで限界を感じてました。

のっち えっ! そうだったんですか!

名越 そんな中で作っていたから「5(龍が如く5 夢、叶えし者)」は、僕の中では限界を振り切ってたんですよね。実はその「5」がセールス的に最も成功したタイトルだったんですが、お話としてはこのあたりで一旦ケジメを付けなければいけなかった。それが「6」だったんですよ。

のっち なるほどー。「0」が発売されたのは「5」の次でしたよね。物語がラストを迎える前に「桐生(一馬)さんと真島さんがどう変化して今のようになったか」というのを描いておきたかったってことですか?

名越 そうですね。僕は「0」で、真島吾朗という人間でラブロマンスを描いてみたかったんです。あのエンディングは“男”としてはハッピーエンドなんだけど、「本当にハッピーエンドなのか?」と言われると微妙なところで。そこに僕は一種のダンディズムがあると思うんです。海外での評価が一番高いのは「0」なんですが、「そういう感性って国が違っても伝わるものなんだな」とわかってうれしかったですね。

期待されなくなるのはつらいですが、期待が大きいとそれはそれでつらい

のっち 私がプレイする前になんとなく持っていた「龍が如く」のイメージって、「歌舞伎町そっくりな街のキャバクラで遊べるよ」「自転車で人を殴れるよ」みたいなものだったんです。

名越 正しいです。

のっち ははは、間違ってはないですよね(笑)。最初に「龍が如く」を出したときは、そういう部分を打ち出していこうと考えてたんですか?

名越 そうですね。似たゲームもなかったし、説明するのが難しいじゃないですか。だから「ゲーム内にドン・キホーテがあるんだよ。キャバクラにも行けるんだよ」みたいなところから、まず「なんじゃそりゃ」と興味を持ってもらって、「触ってみようかな」って思ってもらおうと。「1」のときはまだ、その後のようにタレントさんに出演してもらうこともありませんでしたし。今でも覚えてるんですが、「1」と同時発売だった他社のゲームがものすごく華やかな発売イベントをやってる中で、僕も一応サイン会をやったものの、会場に4、5人しか来なかったんですよ。

のっち ええー!(笑)

名越 もう「なんのこっちゃ」でした(笑)。まったく勝負にならないなというか、「これは終わったな」と思ってましたね。まあ、いくら自分がやり切ったからといって、必ずしも結果に直結するわけではないのが世の常ですから、そのときは「ここで得た経験を次につなげていこう」ってぼんやり考えてました。でも蓋を開けてみると、さっきおっしゃっていたような「ドンキやキャバクラがある」「自転車で殴れる」という部分が変な評判になって、だんだんそれがセールスにつながっていって。

のっち 言い方はアレですけど、当時のユーザーは「龍が如く」のようなゲームを求めていなかったのに、そこに挑戦的に提示したらみんなが面白さに気付いて、受け入れられたということなんですかね。

名越 そうですね。その頃はプレステ2も発売されて何年も経ってたから、成熟期というか、ヒットするジャンルも決まっていたんですよ。ウチもそれに合わせたゲームを作っていましたし、それはユーザーの欲求に応えるという意味では間違えてないんだけど、「たまには違うものをやりたいな」という潜在的なニーズは絶対にあるはずだと思っていて。まあ、「龍が如く」がそこにハマってくれたのは運がよかったんですけどね。

のっち ご自分でも、作る側として「いつもと違うゲームが作りたいな」という思いがあったんですか?

名越 いや、僕は常に新しいことをやりたいタイプなので、それ以前から主流でないゲームもちょいちょい作ってたんですよ。だから「龍が如く」がヒットしたことで、初めて「応え続けるって大変だな」と感じるようになりまして。やっぱりファンは「次の『龍が如く』がやりたい」「ストーリーの続きが見たい」と期待してくれるものなので。こういう商売は期待されなくなるとつらいですし、それに応えようとがんばれるんですが、期待が大きいとそれはそれでつらい。そういう気持ちの波を繰り返した15年でしたね。

のっち あー、ゲームと音楽は違うけど、わかるところはあります。私含めファンの皆さんって、自分が求めるような作品になることを期待している一方で、その期待を裏切ってほしいとも思っているじゃないですか。だから毎回、新しい作品を生み出すたびにチャレンジが続いていくというか。

名越 たぶんそのジレンマは永遠に続くんでしょうね。それまでと変えれば「裏切った」と言われ、変えなければ「またかよ」と言われる。でも長く続けていく以上、そこに正解はないので。

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「誰が歌うんだ?」ってことになって、Perfumeの名前も挙がったんですよ

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