LOW IQ 01と松田“CHABE”岳二。

渋谷系を掘り下げる Vol.9 [バックナンバー]

対談:LOW IQ 01×松田“CHABE”岳二

AIR JAM世代とのクロスオーバーを語る

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シーンをまたいだ交流

──イチさんは、CHABEさん以外の渋谷系周辺のアーティストとは交流があったんですか?

LOW IQ 01 うん。渋谷系の頃って、アシッドジャズの影響でレアグルーヴっぽいサウンドのインストバンドがたくさん出てきたじゃない。COOL SPOONとか、あのへんのバンドとはAPOLLO'Sの頃から仲がよかったよ。

CHABE 僕が参加してたSoul Missionとか。

LOW IQ 01 あとWack Wack Rhythm Bandも。そういえば俺、Wack Wack Rhythm Bandのライブでベロベロに酔っぱらってステージからダイブして出禁になったことあるよ。

CHABE ははは(笑)。イッちゃんはめちゃくちゃだったもんね。だってDJしてるとブースの前で中指突き立てるんですよ(笑)。

LOW IQ 01 「もっと激しい曲かけろー!」って(笑)。当時はクラブとかライブハウスに音楽聴きつつお酒を飲みに行ってたんだよ。

CHABE 基本みんなそんな感じだったよね。遊びに行けば誰かしら友達がいたし。

ACROBAT BUNCH時代のLOW IQ 01。(写真提供:LOW IQ 01)

ACROBAT BUNCH時代のLOW IQ 01。(写真提供:LOW IQ 01)

ACROBAT BUNCH時代のLOW IQ 01。(写真提供:LOW IQ 01)

ACROBAT BUNCH時代のLOW IQ 01。(写真提供:LOW IQ 01)

LOW IQ 01 そういえば、さっきの話に戻るけど、自分ら周辺の渋谷系のバンドでいえば、ラヴ・タンバリンズの存在も大きかったよね。俺、パンクとかハードコアが好きだけど、ラヴ・タンバリンズも仲よかったし好きで聴いてた。めちゃくちゃ影響受けてるよ。

──ラヴ・タンバリンズは完全に一般層にも届きましたよね。

LOW IQ 01 ラヴ・タンバリンズがCrue-L Recordsっていうインディレーベルから10万枚以上のヒットを出して、あのときは世の中変わったなと思った。渋谷公会堂でライブやったりしたじゃん。

──イチさんはブレイク前からラヴ・タンバリンズのメンバーと交流があったんですか?

LOW IQ 01 ギターの(斎藤)圭市さんと仲よくてしょっちゅう遊んでたの。圭市さんはおとなしいタイプだけど中身が熱いんだよね。WRENCHが企画した新宿LOFTのオールナイトイベントに、WRENCH、ACROBAT BUNCH、ラヴ・タンバリンズ、シアターブルックで出演したこともあったよ。

CHABE へえ、そんなことがあったんだ。でも、あの頃って本当にそんな感じだったもんね。5つくらいのシーンがあって、みんなシーンをまたいで交流してた感じがする。

LOW IQ 01と松田“CHABE”岳二。

LOW IQ 01と松田“CHABE”岳二。

──渋谷系周辺との交流といえば、イチさんは小沢健二さんがテレビの音楽番組に出演した際に何度かバックでベースを弾いていましたよね?

LOW IQ 01 ああ、やったやった。94年くらいかな? 「ミュージックステーション」とか、何度かテレビに出たよ。「Mステ」で昔の小沢くんの映像が流れると、たまに俺も出てくるもん(笑)。

CHABE あれは、おいちゃん(及川浩志)から声が掛かったの?

LOW IQ 01 そう。ACROBAT BUNCHのパーカッションだったおいちゃんが小沢くんのバンドのメンバーだったから。「イッちゃん、テレビ出ない?」「出る出る!」って(笑)。小沢くんのバックには、木暮(晋也)さんとか真城(めぐみ)とかヒックスヴィル勢が参加してたよね。

CHABE その3人は今もメンバーだね。

LOW IQ 01 そういえば、APOLLO'Sのときにロッテンハッツと対バンしたこともあった。「ベースの人(高桑圭)デカいなー」って思ったの覚えてるよ(笑)。その後、ロッテンハッツが解散して、片寄(明人)くん、(高桑)圭くん、けんちゃん(白根賢一)がGREAT3を作ったんだ。で、木暮さんや真城はヒックスヴィルを始めて。あの頃はみんな、それぞれの音楽を独自に追及してたよね。

──イチさんはACROBAT BUNCH 解散後の94年にSUPER STUPIDを結成しますが、当時はどんなサウンドを目指していたんですか?

LOW IQ 01 ACROBAT BUNCHが徐々にミクスチャーというよりも、もっと本格的な方向に向かっていってさ。例えるなら、レッチリよりもP-FUNK寄りみたいな感じ? でも俺の周りの友達はみんなコークヘッドとか元気な音楽をやってて、自分でもそういうのをやりたかったんだよね。「とにかく速いのやりたい! 上半身裸でやりたい!」って(笑)。それで最強のバンドを組もうと思って始めたのがSUPER STUPIDだったの。

CHABE そういえば僕、「Pull Up From The Underground」(輸入レコード店シスコ・ラウド店によるハードコア系レーベル)のコンピレーションでSUPER STUPIDのレコーディングに参加したよね。あれが初めてのセッション仕事だったんだよ。

LOW IQ 01 なんでCHABEに頼んだかっていうと、パンクはもちろんクラブシーンも知ってるから。パンクの曲にパーカッションが入るのって異質だと思うんだけど、やっぱり自分がやるからにはミクスチャーっぽいものにしたくて。だったら両方のシーンを知ってるCHABEが適役かなって。それ以来、かれこれ今もお願いしてるっていう(笑)。

「Pull Up From The Underground」から1995年にリリースされたSUPER STUPIDとYOUNG PINEのスプリットシングル。YOUNG PINEはHI-STANDARDとCOKEHEAD HIPSTERSのメンバーによるセッションバンド。

「Pull Up From The Underground」から1995年にリリースされたSUPER STUPIDとYOUNG PINEのスプリットシングル。YOUNG PINEはHI-STANDARDとCOKEHEAD HIPSTERSのメンバーによるセッションバンド。

AIR JAM世代の快進撃

──90年代中盤になると、いわゆるAIR JAM世代のバンドを中心とした東京のパンクシーンが一気に盛り上がっていきます。

CHABE 94年までは、そうでもなかったんですよ。僕、Soul MissionかFreedom Suiteで大阪に行ったとき、前日にSUPER STUPIDがライブをやるっていうから観に行ったんだけど、そのときは全然お客さんが入ってなくて(笑)。それをすごく覚えてる。

LOW IQ 01 ははは(笑)、そうだったね。SUPER STUPID初の大阪ライブで、対バンが吉本興業のSo What?ってバンドだった。まだ俺らの名前じゃ人を呼べない時代で、BAYSIDE JENNYってデカいハコにお客さんが5人しか集まらなかったよ(笑)。

CHABE でも、その後いきなりドンって入るんだよね。

LOW IQ 01 半年後にBAYSIDE JENNYに行ったらお客さんがめちゃくちゃ入ってびっくりした。95年になったらこんな変わるんだって。

──95年に入って空気が一気に変わった?

LOW IQ 01 そう。一気に変わった。

CHABE Hi-STANDARDの「GROWING UP」とか、さっき話に挙がった「Pull Up From The Underground」のコンピレーションが95年にリリースされたのがデカかったんだろうね。

LOW IQ 01 お客さんが爆発的に増えたね。ハイスタが先頭切ってくれて、それまで一部のスケーターが聴いてたような音楽を一般の人も聴くようになった。それまでは新宿LOFTが満員になったら「すげえ!」って感じだったんだけど、95年に入ったら突然大騒ぎが始まって「あれ? なんかが起きてるぞ」ってなって。

1996年にソニーレコードからリリースされたSUPER STUPIDのアルバム「WHAT A HELL'S GOING ON?」。エンジニアはIllicit Tsuboiが担当。

1996年にソニーレコードからリリースされたSUPER STUPIDのアルバム「WHAT A HELL'S GOING ON?」。エンジニアはIllicit Tsuboiが担当。

「WHAT A HELL'S GOING ON?」の裏ジャケット。

「WHAT A HELL'S GOING ON?」の裏ジャケット。

──当時AIR JAM世代のバンドが人気を得た要因ってなんだったと思いますか?

LOW IQ 01 やっぱりメロディがキャッチーで聴きやすかったからじゃない? あとはそれぞれのバンドの個性かな。ハイスタの登場をきっかけに、ミクスチャーっぽいBACK DROP BOMBとかギターポップをスピーディに荒々しくしたようなHUSKING BEESCAFULL KINGとか面白いバンドがどんどん出てきて一気にシーンが盛り上がって。AIR JAM世代のバンドってメロコアだけじゃなくてジャンルがバラバラで、それもよかったんじゃないかな。似たバンドがいないのが面白かった。いい意味でみんなライバル精神を持ってたし。

CHABE 確かにね。そうやって、いろんな要素が重なって短期間に状況が変わったのかも。

LOW IQ 01 とはいえ突発的に生まれたムーブメントじゃなくて、そこにはちゃんとした下地があったわけよ。それこそ大貫さんが「LONDON NITE」を長くやってくれてたこともそうだし、あとは雑誌がパンクシーンをちゃんと取り上げてくれてたり、いろんなことが重なったんだと思う。でも、あの盛り上がりは一番インディらしい形だったんじゃないかな。どのバンドもテレビとか出てないしね。あんな手作りで、よくあそこまで動かせたよ。すごいと思うな。

──日本中を巻き込むムーブメントになると思ってましたか?

LOW IQ 01 思うわけないって(笑)。誰もそんなこと思ってなかったし、知らない間にそうなっちゃったとしか思えなかったね。そりゃもちろん音楽をやり始めた頃には「有名になりたい!」とか漠然とした気持ちはあったけど、まさか自分たちがやってるような音楽を一般の人が受け入れてくれる時代が来るなんて考えたこともなかった。

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2000年代、ムーブメントの終焉

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──当時AIR JAM世代のバンドが人気を得た要因ってなんだったと思いますか?

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