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スギム(クリトリック・リス)

愛する楽器 第18回 バックナンバー

クリトリック・リスの股間にジャストフィットなテルミン

もはや僕にしか需要ないですよ

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アーティストがお気に入りの楽器を紹介する本企画。第18回ではクリトリック・リスのスギムに登場してもらい、彼のトレードマークとも言えるHIWATT製のテルミン、Echo-Thereminについて語ってもらった。

取材・文 / 高橋拓也 撮影 / 阪本勇

股間にテルミン、付けれへんかな

クリトリック・リスはたまたまバーで出会ったバンドマン同士で「一緒にライブに出よう」って話になって、初ライブ当日に僕しか来なかったところから活動が始まったんです。それから僕とリズムマシンの2人組で活動してた時期もあったんですけど、リズムに合わせて僕が即興で言葉を乗せていくライブをやってました。全然ラップとは程遠いものやったんですけどね。その頃のレパートリーにLed Zeppelinの「移民の歌」の替え歌みたいな曲があって、「アアアー」と歌うところを悶えながらマネしてたんです。Zeppelinのギタリスト、ジミー・ペイジの演奏するテルミンを、股間をいじりながら「ホワンホワンホワー」とか言いながら再現したり。それがわりとお客さんにウケて、「ホンマに音が鳴ったら面白いんやないかな」「ここ(股間)にテルミン付けれへんかな」とか思いついて、いろいろ探すうちにHIWATTのEcho-Thereminを見つけたんです。仕入れてみたら、もうサイズも形も股間にぴったりでね。活動1年目から使ってました。

総重量10kgのパンツで動けず

その後リズムマシン担当が抜けたり、次に入ったギタリストもメロディじゃなくパーカッションのように弾く特殊な演奏方法の人だったので、結局自分でオケを作ることになったんです。この時期はテルミンのほかに、KORGのKaossilatorをパンツに付けてました。ほかにはKaoss Pad、小型のミキサー、そして電飾を付けたり。たくさん付けまくった結果、パンツだけで10kgぐらいになって身動きが取れなくなっちゃいましたね。

DTMでトラックが作れるようになると機材がいらなくなって、最終的にはテルミンだけに落ち着きました。動きやすさを重視してテルミンはワイヤレスです。最初の3、4年でいろんな楽器を試しましたけど、テルミンだけになってからはもう10年ぐらい経つんかな。今でもKaossilatorとCasiotoneをライブに持ち込むことがありますよ。

灰野敬二さんより使いこなせてる自信、あります

Echo-Thereminはテルミンと言っても、あんまり繊細な音階が出せないんです。僕はあくまで効果音やノイズを発するための装置として使ってます。もう何年も全国でライブをやってるんですけど、ほかに使ってる人、ほとんど見ないですよ。見たの灰野敬二さんと、いったんぶのクマベ(G)くんぐらいかな? それだけEcho-Thereminで演奏するの、難しいんやと思います。エフェクターのように足で演奏できなくて、必ず手を使わないといけないし、しかも個体や日によって音の鳴り方にものすごくムラがあるし、使っていくうちに音が細くなっちゃう。僕もいまだに勘で操作してます。メインで使う楽器じゃないですね。もはやクリトリック・リスにしか需要ないですよ。灰野敬二さんより使いこなせてる自信、あります。ほかに使ってる人が少なすぎなんですけど(笑)、持ってる方は意外と多くて、ツアー中にテルミンをどこかに忘れてきちゃったり、壊れてしまったとき、現地の人が貸してくれたことがありました。あらかじめ決められた恋人たちへのクリテツ(Perc)くんからも「貸します」って連絡をもらったこともあったな。僕のパンツに付けるんですよ(笑)。

ギターの音にも全然埋もれない

そういえば昔、ドラびでおの一楽(儀光)さんのムチャぶりで七尾旅人さんとセッションしたことがあったんですけど、何もできなかった(笑)。いい曲を台無しにしてるだけで、誰も喜びませんよ……。

セッションは何度かやる機会があって、イベントの最後とか、出演者全員がステージに集合することがありますよね。そのときEcho-Thereminの音ってかなり高いから、めちゃくちゃ目立つんですよ。ギターの人たちがディストーションをかけてガーって大きな音で鳴らしても全然埋もれない。そういうときは強いっすね。以前このテルミンにファズとかディストーションとかいろんなエフェクターをつなげて、どう鳴るか試したことがあったんですけど、ほとんど音は変わりませんでした。本体に付いてるディレイとエコーで十分ですね。

今まで買ったやつ、全部状態がいいんですよ

Echo-Thereminは今15台ぐらいストックがあって、そのうち10台は新品です。僕が使い始めた頃にはもう店頭では売ってなくて、ヤフオク!やメルカリとかで買ってます。発売されてからかなり経つんですけど、今まで買ったやつは全部状態がいいんですよ。おそらく持ってても使いようがないんでしょうね……。Echo-Theremin以外には石橋楽器製のイシバシテルミンも試してみたんです。エフェクターサイズのちっちゃいやつなんですけど、アンテナがビヨンビヨン邪魔でパンツに合わなかった。僕の場合は動き回るパフォーマンスを重視してるから、ほかにぴったりな楽器はなかったです。

テルミン引火事件の真相

分解したこともあるんですけど、このテルミンって中身がスカスカなんですよ。だから軽いし、走り回ったりぶつけたりしても案外壊れないんです。一時期テルミンの中に煙玉をパンパンに入れて、煙を出すパフォーマンスを行ってました。これやると一発でテルミンがダメになっちゃうので、やるときは野外ライブで使い古したものを犠牲にしてます。僕の股間が燃えてる画像がTwitterで話題になったことがあったんですけど、ここだけの話、あれ仕込みです。Zippoのライターオイルをテルミンの表面にかけて、中の煙玉を燃やしました。思ってた以上に火が点いて、股間をやけどしましたよ。HIWATTのためにも言うときますけど、Echo-Thereminの不具合で燃えたわけじゃないですから!

脱がそうと思っても脱げないんで

パンツは数枚履いてます。まず一番下のパンツに黒いガムテープでテルミンをガチガチに固定して、その上から本体とつまみの部分に穴を開けたパンツを重ねていくんです。重ね履きしてるのはまずテルミンをしっかり固定するため。それから僕、ライブではよくフロアに降りるんですけど、調子乗りのお客さんがパンツを脱がそうとしてくるんですよ。もう1つの理由はそれを防ぐためですね。しっかり固定してるから、脱がそうと思っても脱げないですよ。

僕のライブ大丈夫よ、楽しいよ

僕のライブって名前もそうだし、見た目もパンツ一丁だから女性のお客さんが引きながら観てることがよくあるんですけど、こんなん初めて観たらびっくりしますもんね。そういう方に向けて「大丈夫よ、楽しいよ」って意味でここ(テルミン)を触ってもらうこともありますね。別に嫌がらせじゃないですよ。あと、子供はすごく興味を示してくれることが多い。そういうときもテルミンをいじらせるとすごく喜ぶっす。

アルバムには全然テルミンの音が入ってない

ライブではテルミンを駆使してて、もはやクリトリック・リスのアイコンのようになってるけど、これまで出したアルバムでは一切この音が入ってないんですよ。別に入れたくなかったり、録音するのが難しいってことじゃないんです。どの作品もレコーディングのスケジュールがタイトすぎて、もうボーカルを入れるだけでいっぱいいっぱいで。次のアルバムは絶対テルミンの音を入れようと思います。いっそボーカルは全然収録しないで、テルミンソロでもええかもと思ってるぐらい(笑)。

クリトリック・リス

現在50歳の男性、スギムによるソロユニット。2006年にバンドとして結成されたが、初ライブ当日にスギム以外のメンバーが集まらずそのまま活動がスタートした。メンバーの加入脱退を繰り返し、最終的にスギム1人の現体制を確立。パンツ一丁で日常の悲しみや不条理を熱唱するパフォーマンスが話題を呼ぶ。近年では2015年に「あなたのあな」、2017年に「HAGE CORE」、2019年に「ENDLESS SCUMMER」と次々とアルバムを発表。今年4月にはスギムの生誕50周年を記念したワンマンライブが東京・日比谷野外大音楽堂で開催された。映画「光と禿」「ウィーアーリトルゾンビーズ」に出演したりと、役者としての活動も積極的に行っている。

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