凛として時雨×THE BACK HORN、真夏の野音で壮絶バトル

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凛として時雨が恒例のライブイベント「トキニ雨#12」を7月25日に日比谷野外大音楽堂で開催。ゲストにTHE BACK HORNを迎え、激しいライブを披露した。

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凛として時雨とTHE BACK HORNは8月3日に大阪・なんばHatchで対バンライブを開催。会場がライブハウスとなるため、野音とは異なる雰囲気が味わえそうだ(写真:河本悠貴)。

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この日は、最高気温が30度を超える、真夏らしい天候に。湿度も60%以上と高く、日が暮れかけている時間になってもねっとりとした空気が体に絡みつくような状態。会場となった野音は、立ち見を含む観客で後方まで埋め尽くされ、オーディエンスの期待感が充満していた。

蝉の声が四方八方から聞こえる中、荘厳なSEに乗せ先攻のTHE BACK HORNが登場。いつものライブのように山田将司(Vo)が「こんばんは。THE BACK HORNです」と挨拶すると大歓声が上がる。そして1曲目の「ブラックホールバースデイ」の重々しいリズムでイベントの口火が切られた。

この日のセットリストは、対バン相手を意識してからか全般的に好戦的な楽曲揃い。また普段の野音では聴けないような爆音が鳴らされ、時折ハウリングを起こしながら肉体に叩きつけてくる様はまさに圧巻。ゲストだからといって遠慮はなく、菅波栄純(G)と岡峰光舟 (B)は、冒頭からステージ上を暴れオーディエンスを発奮させていたのも印象的だった。

「世界を撃て」「罠」を続けざまに披露したところで、松田晋二(Dr)の独壇場とも言うべきMCコーナーに移行。「かなりの雨を期待していたんですが、THE BACK HORNも凛として時雨も憂いのあるバンドなんで、『トキニ雨』が『トキニ晴れ』になってしまった」と少し残念そうに語る一方、「苗場ではフジロックが行われていますが、この2バンドで素晴らしいライブにしたいと思います」と力強く宣言。その言葉に続いて「サーカス」で鋭利なサウンドと艶っぽいボーカルの妙を聴かせると、野音を淫靡な世界に誘った。

「サーカス」が終了した後には息が詰まるような静寂が会場に横たわり、蝉の声だけが会場を反響する。山田はタイミングを見計らい呼吸を整えると、緊迫した空気を溶かすようにやわらかな声で「未来」を歌い始めた。シンプルなアンサンブルと包容力のある歌声は、空気を伝ってどこまでも伸びていき観客を優しく包み込んでいった。

野音の開放感ある雰囲気と絶妙にマッチした「未来」の後は、再び“動”のモードに突入。松田の猛々しいドラムをバックに、菅波と岡峰はステージ中央までせり出し、激しいパフォーマンスを見せつける。終盤は「蛍」「光の結晶」と疾走感あるナンバーを連発し、最後はライブの定番「コバルトブルー」を披露すると約50分のステージに幕を下ろした。

転換時間には、凛として時雨のライブでおなじみのSEが何度か繰り返され、THE BACK HORNが作り出した熱気を冷ましていく。19時過ぎ、陽も落ちた頃に主催者の凛として時雨がステージに登場。3人が姿を現すや否や、怒号のような歓声が空高く轟いた。

興奮したオーディエンスのために彼らが1曲目として用意したのは「想像のSecurity」。ライブハウスのような密室空間とは異なり、3人の紡ぎ出す音は生々しく、どこまでも広がっていった。その後は、1曲目でつけた勢いを加速させるように、「ハカイノユメ」「knife vacation」と激走チューンが続く。憂いを帯びた楽曲たちは、野外の湿気と絡み合い狂気を倍増させ観客の興奮を煽り、絶え間なく焚かれるスモークがステージ上のメンバーの姿を隠し幻惑的な雰囲気を演出した。

「秋の気配のアルペジオ」でほのかに爽やかな音色を響かせ一瞬会場の雰囲気を落ち着かせるが、「DISCO FLIGHT」で会場は狂騒状態に。イントロのベース音が鳴った瞬間に猛々しい歓声が轟き、息もつかせないスリリングなアンサンブルが畳み掛けるように展開されていった。

TK(Vo,G)がアコギを用いた「Tremolo+A」と、静けさの中にも狂気がにじみ出る「mib126」の後は、この日1回目のMCコーナーが始まる。まずはTKが「今日は日比谷まで来てくださってありがとうございます」と穏やかな口調で挨拶。そして「もう立ってますけど、リーダーのピエール中野(Dr)さんです」という紹介に続き、MCの主導権がピエール中野に渡される。

もはやライブの定番となっているピエール中野の爆笑MCはこの日も健在。まずはオーディエンスの様子伺いのために「お前たち盛り上がってるのか?」と問うと、客席からは威勢のいい返事が上がる。それに機嫌をよくした彼は、いつものように下ネタを用いて喜びを表現。当然のことながら話はそこで終わることはなく、この日もピエールのMCネタのメインはPerfume。スペースシャワーTVの「MONSTER ROCK」に出演した際、THE BACK HORNにPerfumeについてレクチャーすると松田が「PerfumeはSMAPなんだ!」と言ったことについて言及。加えて菅波が訛り混じりに「SMAPはSports Music Assemble Peopleの略称なんだ」と語ったことを菅波の口調を真似ながら語り、最後は「こんなバンドと対バンできてうれしいです」と喜びを口にした。

後半戦はTKと345(Vo,B)によるハイトーンボーカルの応酬と、咆哮するドラムの妙を聴かせる「JPOP Xfile」からスタート。さらに「Telecastic fake show」と「nakano kill you」 を披露した後は、345の可憐なMCがスタート。照れながらマイクの前に立つ345に対し、ピエール中野が「告知すればいいじゃん、345たん」とヲタ口調で激励を飛ばす。345はその発言に対し戸惑いを見せ、「助けて下さい」とオーディエンスに助けを求める。するとピエール中野は「俺、今キモイって言われた!」と憤慨したふりでオーディエンスを笑わせた。

ラストナンバーは、TKの「今日は雨が降らなかったんですか、最後の曲を聴いて下さい」という言葉に続いた「傍観」。鮮血のようなライトがステージを照らす中で披露されたこの曲は、始まりこそ静かだがクライマックスに向かうにつれ狂気を帯び、最後は生々しいライトとスモーク、耳をつんざくような音が溶け合い野音全体をすっぽりと飲み込んでいった。

曲が終わった後もステージ上の3人の興奮は冷めやらぬ様子。TKと345はそれぞれの楽器をかき鳴らし、ピエール中野は自らの存在を野音に刻みつけようとするかの如く渾身のドラミングで応戦。そして、耳をつんざくような音が会場を飽和した頃、3人は順々に持ち場を離れ淡々とした足取りでステージを降りた。彼らが残した悲鳴にも似たノイズはどこまでも広がり、誰もが長い間呆然と立ち尽くしながら壮絶なライブの幕引きを見守っていた。

「トキニ雨#12」セットリスト

THE BACK HORN
01. ブラックホールバースデイ
02. 世界を撃て
03. 罠
04. サーカス
05. 赤眼の路上
06. 未来
07. 蛍
08. 光の結晶
09. コバルトブルー

凛として時雨
01. 想像のSecurity
02. ハカイノユメ
03. knife vacation
04. 秋の気配のアルペジオ
05. DISCO FLIGHT
06. Tremolo+A
07. mib126
08. JPOP Xfile
09. Telecastic fake show
10. nakano kill you
11. 傍観

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