坂東巳之助、父・坂東三津五郎の追善公演に「ありがたいの一言に尽きます」と感慨

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「吉例顔見世大歌舞伎」に出演する坂東巳之助の取材会が、本日10月13日に東京都内で実施された。

坂東巳之助

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坂東巳之助扮する曽我五郎。(c)松竹

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坂東巳之助

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巳之助は、自身の父・十世坂東三津五郎の七回忌追善狂言として上演される「寿曽我対面」に出演。本作で巳之助は、三津五郎にゆかりのある、曽我五郎時致役を初役で演じる。歌舞伎座で追善公演を開催できることに「ありがたいの一言に尽きます」と感謝を口にした巳之助は、今回の公演が、工藤左衛門祐経役を勤める尾上菊五郎の呼びかけで実現したことを明かす。「菊五郎のおじさまからは『おう、11月“対面”な。よろしくな!』と言われまして(笑)。『ありがとうございます!』とお返ししました」と菊五郎とのやり取りを、その語調を真似をしながら再現し、うれしそうにほほ笑んだ。

「寿曽我対面」より、左から坂東巳之助扮する化粧坂少将、中村雀右衛門扮する大磯の虎、十世坂東三津五郎扮する曽我五郎。(c)松竹

「寿曽我対面」より、左から坂東巳之助扮する化粧坂少将、中村雀右衛門扮する大磯の虎、十世坂東三津五郎扮する曽我五郎。(c)松竹[拡大]

三津五郎が五郎を最後に勤めたのは、東京・新橋演舞場で2011年に行われた「壽初春大歌舞伎」。同公演で、巳之助は化粧坂少将役で共演した。舞台上では「ほぼ(三津五郎の)後ろ姿しか見えていなかった」と話す巳之助は、「父は(『壽初春大歌舞伎』の)夜の部で『寿式三番叟』も踊っていました。『対面』の舞台稽古の前に『三番叟』の稽古がありまして、工藤を播磨屋さん(中村吉右衛門)、十郎を高砂屋さん(中村梅玉)といった先輩が勤められていたので、お待たせするわけにはいかないと思ったんでしょうね、『対面』の舞台稽古に、父が『三番叟』の顔のまま出てきたんです。花道から出てくるときに、舞台上からその顔が見えたんですけど、『迫力ねえなあ』と(笑)。強烈な思い出ですね」と当時を振り返り、懐かしむ。

坂東巳之助

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坂東巳之助扮する曽我五郎。(c)松竹

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巳之助は、公演に向け、扮装姿でのスチール撮影を行った。撮影の感想を「撮影で一通り五郎の形をさせていただいたことで、少し見えてくるものがありました」と述べる。撮影の現場には、巳之助に五郎役を教え、自身も小林朝比奈役で出演する尾上松緑が同席した。「(松緑からは)撮影の合間、形についてもアドバイスをいただきました。『写真だから、本番よりも衣装を気にした方がいいね』など、状況に合わせたご指導もいただけて、ありがたかったです」と語る。また、松緑との稽古を通し「改めて、儀式的な部分が強く出ている作品だと感じました」と言う巳之助は「これは長く上演されている演目のすごいところなのですが、(作品の中の約束事や決まり事を)知っていようが、知っていまいが、面白く観ることができる。これまで受け継がれてきたものを、事細かく知ったうえで楽しむこともできますし、衣装やそれぞれの人物像、音楽的なセリフ回しから、感覚的に楽しんでいただくこともできると思います」と作品の魅力に触れた。

坂東巳之助

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記者から、舞台上での姿が、三津五郎と重なる瞬間があると伝えられた巳之助は、「(似ているとは)生前から思っていました(笑)。でも当時は『似ていらっしゃいますね』と言われると、居心地が良くない、むずむずする気持ちでした。でも父が亡くなったあとは、『そりゃ親子だから似てますよね』と開き直れて。そういう気持ちの変化からも、だんだん似てきたのかなと思います」と話す。さらに「五郎の役について、父は『小難しいことを考えてはいけない』と言っていました。でも“考えないでできる”ことが難しく、それは稽古を重ねないとできない。基本的な部分を大切にしていくというのは、父の芸風でもありました。俳優として当たり前の部分を大事にすることが、ひいては父の追善になるのではないかなと思っています」と真摯に語り、取材会を締めくくった。

「吉例顔見世大歌舞伎」は、東京・歌舞伎座にて、11月1日から26日まで。

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「吉例顔見世大歌舞伎」

2021年11月1日(月)~26日(金)
東京都 歌舞伎座

第1部

一、「神の鳥(こうのとり)」

作・演出:水口一夫

出演
狂言師右近実はこうのとり(雄鳥) / 山中鹿之介幸盛:片岡愛之助
狂言師左近実はこうのとり(雌鳥):中村壱太郎
仁木入道:中村種之助
傾城柏木:上村吉弥
赤松満祐:中村東蔵

二、「井伊大老 千駄ヶ谷井伊家下屋敷」

作・演出:北條秀司

出演
井伊直弼:松本白鸚
仙英禅師:中村歌六
老女雲の井:市川高麗蔵
お静の方:中村魁春

第2部

一、「十世 坂東三津五郎七回忌追善狂言 寿曽我対面」

出演
工藤左衛門祐経:尾上菊五郎
曽我五郎時致:坂東巳之助
曽我十郎祐成:中村時蔵
小林朝比奈:尾上松緑
八幡三郎:坂東彦三郎
梶原平次景高:坂東亀蔵
化粧坂少将:中村梅枝
秦野四郎:中村萬太郎
近江小藤太:河原崎権十郎
梶原平三景時:市川團蔵
大磯の虎:中村雀右衛門
鬼王新左衛門:市川左團次

後見:坂東秀調

二、「連獅子」

作:河竹黙阿弥

出演
狂言師右近後に親獅子の精:片岡仁左衛門
狂言師左近後に仔獅子の精:片岡千之助
浄土僧専念:市川門之助
法華僧日門:中村又五郎

第3部

「花競忠臣顔見勢(はなくらべぎしのかおみせ)」

作:河竹黙阿弥、渡辺霞亭
補綴:戸部和久
構成・演出:石川耕士
演出:市川猿之助

出演(五十音順)
顔世御前後に葉泉院 / 大鷲文吾:尾上右近
河瀬六弥:中村歌之助
源蔵姉おさみ:市川笑也
高師直 / 戸田の局 / 河雲松柳亭:市川猿之助
晋其角:市川猿弥
大星由良之助:中村歌昇
井浪伴左衛門:中村錦吾
桃井若狭之助 / 清水大学:松本幸四郎
足利直義 / お園:坂東新悟
寺岡平右衛門:澤村宗之助
大星力弥:中村鷹之資
塩冶判官 / 槌谷主税:中村隼人
龍田新左衛門:大谷廣太郎
赤垣源蔵:中村福之助
小浪:中村米吉

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読者の反応

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adesu @adesu19

2021年11月 #歌舞伎座
十世 坂東三津五郎様 #七回忌追善狂言 「#寿曽我対面」を思い出しhttps://t.co/7gtq2PBV0k

今月は #日本舞踊坂東流家元 大和屋 #坂東巳之助 様が
音羽屋 #尾上眞秀 様の 「#音菊曽我彩」に #小林朝比奈 として万感の寿ぎを込めて舞われる
おおらかなお姿に…
目を奪われました

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