「ZORRO THE MUSICAL」は2008年にイギリス・ロンドンで初演されたミュージカル。日本では2011年に、坂本昌行が主演を務めたクリストファー・レンショウ演出版が上演された。今回は、谷貴矢による潤色・演出で立ち上げられる。舞台は、19世紀初頭のアメリカ・カリフォルニア。ロサンゼルス市長である父に後継者としてスペイン留学を命じられ、嫌々ながらも新天地に赴いた非力な少年ディエゴ・デ・ラ・ベガ(桜木)は数年後、プレイボーイに成長していた。そこへ幼なじみのルイサ・プリド(
開口が高い東急シアターオーブのステージ上では、可動式の階段と砂色の巨大な柱や壁などを駆使して、荒涼とした街の様子が表現された。作中では、ディエゴ、ルイサ、ラモンの関係性が、過去の記憶を織り交ぜながら紡がれる。桜木は、気の弱い青年が愛情を持って兄に立ち向かう様子を、時にコミカルに、時に頼もしく演じ、持ち前の明るさと求心力によって“愛されるリーダー像”を浮かび上がらせた。ルイサ役の春乃は、スペイン帰りのディエゴの変わりように落胆する一方で、謎めいた“ゾロ”にときめき、自ら戦いに身を投じようとする女性を凛とした雰囲気で熱演。また、そんな2人や民衆の敵でありながらも、実は父からの愛情不足や弟への嫉妬心に長く苦しんできたラモンの悲哀を、瑠風が見事に演じた。
ジプシー・キングスのサウンドが全編を彩る本作では、「Bamboleo」「Djobi Djoba」などの聞きなじみある楽曲が物語を躍動感たっぷりに押し進める。情熱的な歌唱に加え、地を踏み鳴らすような振付で民衆の怒りや苦しみを表したり、娘役がフリルのスカートを翻してフラメンコダンスの群舞を見せたりと、パワフルなパフォーマンスの数々が、ステージ上を生命力で満たした。その前向きさは、桜木の新トップスターお披露目公演にふさわしく、また桜木と春乃が率いる新生宙組への期待にも重なった。
上演時間は約3時間5分。公演は7月3日まで。なお、6月29日の15:30開演回ではライブビューイング、ライブ配信が行われる。
宝塚歌劇宙組「ZORRO THE MUSICAL」
2025年6月14日(土)〜7月3日(木)
東京都 東急シアターオーブ
スタッフ
潤色・演出:谷貴矢
“Zorro - The Musical” is presented in association with Zorro USA LCC Original Executive Producer - John Gertz
タカラヅカ歌劇ポータル │ 宝塚歌劇・宝塚OG情報を発信中 @zukazuka_info
【公演レポート】桜木みなと“ゾロ”が悪を断つ、新トップスターお披露目の宝塚歌劇宙組「ZORRO」パワフルに開幕(舞台写真あり) https://t.co/p0765mgNGi