「ショールームダミーズ #4」が本日2月8日に京都・ロームシアター京都 サウスホールにて開幕した。
「ショールームダミーズ」は、フランスの振付家ジゼル・ヴィエンヌとエティエンヌ・ビドー=レイが、マゾッホの「毛皮を着たヴィーナス」をもとに作り上げた作品で、2001年の初演以来たびたび上演を重ねている。今回は、ロームシアター京都の“レパートリーの創造”シリーズの一環として、女性ダンサーたちと「ショールームダミーズ #4」を新たに立ち上げる。
幕が上がると、間口17.9mというサウスホールの横長の空間に、白い床と白い壁で仕切られた、ロビーのような空間が立ち上がっている。舞台奥には、黒い髪で顔を隠し、うな垂れるように立ったり座ったりしている人形たち。手前には黒のソファが整然と並べられ、上手の1席に黄色のトレーナーを着た女が腰かけていた。モノクロの無機質な空間の中には、不穏さを感じさせるような音楽が響き、その中を黄色いトレーナーの女が歩き回る。すると、下手奥からスキニージーズンにピンクのトレーナー姿の女が、しゃなりしゃなりと歩いて来た。赤いルージュが印象的な女の仮面を付けたその女は、モデルのようにさまざまなポーズをとる。黄色いトレーナーの女はその様子を見つめているが、やがて仮面の女に近寄って行った。
すると舞台奥の人形の間からまた1人、今度は黒いミニスカートの女が進み出る。トレーナーの女が、ミニスカートの女に恐る恐る近づき彼女に触れると、ミニスカートの女はふっと脱力して人形のようにぐったりと倒れこんだ。そのやり取りが何度か続き、やがてミニスカートの女が自ら身体を床に打ちつけ始めると、颯爽と現れた黒のスラックスの女が彼女を抱きとめ、2人は静かなチークダンスを踊る。そんな柔らかに見えた2人の関係も、やがて過剰さを増していき……。
セリフは一切介さないが、刻一刻と変わっていく登場人物たちの関係性が、それぞれの動きを通して明確に伝わってくる。中盤、さらにもう3人、女たちが現れると、あしらう者とあしらわれる者、乞う者と見下ろす者、“扱う”者と“扱われる”者というような多様な人間関係が、舞台の随所で同時多発的に起こり始めた。女たちは痛々しいほど激しく床やソファに身体を投げ出し、すれ違ったり、動きの速度を変えたり、髪をかき上げたり、視線を交わしたり、動きを停止させたりしながら、その関係性の変化を体現した。特に止まった瞬間、動きを止めたときの身体は、人形というより、魂や意志が抜けた容れ物、死の輪郭を纏った影にも見え、舞台上にさらに不穏な空気を醸し出した。
「ショールームダミーズ #4」の公演は明日2月9日まで。9日公演終演後にはヴィエンヌ、ビドー=レイ、ロームシアター京都プログラムディレクターの橋本裕介が登壇するアフタートークが実施される。
ジゼル・ヴィエンヌ、エティエンヌ・ビドー=レイ「ショールームダミーズ #4」
2020年2月8日(土)・9日(日)
京都府 ロームシアター京都 サウスホール
演出・振付・舞台美術:ジゼル・ヴィエンヌ、エティエンヌ・ビドー=レイ
出演:朝倉千恵子、大石紗基子、高瀬瑶子、花島令、藤田彩佳、堀内恵
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【公演レポート】女たち6人が繰り広げる「ショールームダミーズ #4」開幕
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