「ふじのくに→せかい演劇祭2018」プレス発表会、宮城聰がラインナップに自信

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「ふじのくに→せかい演劇祭2018」の東京プレス発表会が昨日3月16日に東京のゲーテ・インスティトゥート(東京ドイツ文化センター)にて行われた。

「ふじのくに→せかい演劇祭2018」東京プレス発表会より。左からゲーテ・インスティトゥート東京所長のペーター・アンダース、宮城聰、小島章司、ヤン・ブードー。

「ふじのくに→せかい演劇祭2018」東京プレス発表会より。左からゲーテ・インスティトゥート東京所長のペーター・アンダース、宮城聰、小島章司、ヤン・ブードー。

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「ふじのくに→せかい演劇祭2018」チラシ

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会見には「夢と錯乱」に出演するヤン・ブードー、「シミュレイクラム/私の幻影」に出演する小島章司、ゲーテ・インスティトゥート東京所長のペーター・アンダース、そしてSPAC‐静岡県舞台芸術センター芸術総監督で「マハーバーラタ」「寿歌」を演出する宮城聰が登壇。会見冒頭で宮城は、「現代は発信するスキルばかりが語られるようになって、たくさんの人が『いいね』と言ってくれる発信の仕方ばかりが取り上げられる時代になっている。そういう時代に、古いメディアである演劇やダンスの人たちがどう争うかはポイントの1つになっていると思っています」とコメント。さらに宮城は「自分の中から湧き出てくる止めようがないものを受け止めてくれる人を見つけ、その人たちに耳を傾けてもらおうとすることが舞台表現者の生理だと思います。そんな“必死に自分へ耳を傾けてもらおうとしている人”を集めたのが今回のラインナップです」と自信をのぞかせる。中でも「民衆の敵」「夢と錯乱」「リチャード三世」の3作品について、「西ヨーロッパの最先端と極北と流行の3作品が並びました。今日の西ヨーロッパの見取り図として、よい演目選択をしたのではないかと自ら思っています」と笑顔で紹介する。

宮城聰

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アンダースは、トーマス・オスターマイアーが演出する「民衆の敵」について、「この作品が今回静岡に招聘されることで、演劇の持つ力が世界にどのような役割を果たせるのかを考えるきっかけになることがうれしい。作品をきっかけにどのような対話が生まれるのか楽しみです」と上演に期待を寄せる。

ペーター・アンダース

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続けて「夢と錯乱」について、ブードーは演出のクロード・レジから俳優が求められる表現の難しさを語り、「クロードはこれが自分にとって最後の作品だと話しています。私とクロードは何度も仕事してきましたが、今回が私とクロードの最後の共同作業です。私にとって少し特別なこの作品を、宮城さんのご招待によって静岡で上演できることが楽しみです」と笑顔を見せた。

左からヤン・ブードー、SPAC-静岡県舞台芸術センター文芸部の横山義志。

左からヤン・ブードー、SPAC-静岡県舞台芸術センター文芸部の横山義志。[拡大]

ノルウェーの振付家アラン・ルシアン・オイエンが演出・振付を手がける「シミュレイクラム/私の幻影」について語るのは、小島。小島は「アランの振付は、フラメンコが根っこである私とは全然違うのですが、少し演劇的な要素もあり、今回のような演劇でもオペラでも舞踊でもない、シアターそのもののような最先端の作品が生まれました」と述べ、「七十代後半にさしかかった私に、すごく刺激を与えてくださった、生きる力を与えてくれた作品だと思っています」と作品への思いを語った。

小島章司

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最後に宮城が、自身が演出する2作品を紹介。「寿歌」については「稽古しながら、(作者の北村想は)こんな予言の書のような作品を、どうして二十代にして書けたのだろうと不思議に思っています」と話し、「一言で言えば人間の救済はどこにあるのかを巡る話。予言者が神の言葉を受けて書いているような本です」と作品を分析した。また静岡では3年ぶりの上演となる「マハーバーラタ~ナラ王の冒険~」については、「僕にとってはまさに天の恵みのようにもたらされた作品」と言い、「悪魔とは孤独な心に入り込んでくるもの。一体どうすればそれが克服できるのか、という演劇になっていると思います」と紹介した。

「マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~」より。(photo by HIOKI Masami)

「マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~」より。(photo by HIOKI Masami)[拡大]

2007年に宮城がSPAC芸術総監督に就任して以来、12回目となる「ふじのくに→せかい演劇祭」。記者から手応えについて問われた宮城は「大きな影響が与えられていないのではないかという反省もありますが」と前置きしつつ、「東京にはたくさんの資本主義の歯車が集まっているので、たとえ小さな活動であってもそれが歯車として巻き込まれていく可能性がある。そこから外れたことをやり続けるのはなかなか簡単なことではありません。でも東京から少し離れた場所で、『こんな芝居もあるよ』と発信し続けてきたことは、演劇の多様性に対してなんらかの担保になっているのではないかと考えております」と思いを語り、会見を締めくくった。

「ふじのくに→せかい演劇祭」は、「ふじのくに(静岡県)と世界は演劇を通じてダイレクトに繋がっている」というコンセプトのもと、静岡で毎年開催されている舞台芸術イベント。今年18年は8作品が披露されるほか、例年行われている路上パフォーマンス「ストレンジシード」や、シンポジウム「広場トーク」、お茶摘み、「みんなのnedocoプロジェクト」「フェスティバル bar / フェスティバル garden」などの関連企画も開催される。各イベントの詳細は公式サイトで確認を。

※初出時タイトル、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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「ふじのくに→せかい演劇祭2018」

2018年4月28日(土)~ 5月6日(日)
静岡県 静岡芸術劇場、舞台芸術公園、駿府城公園 ほか

「寿歌」

2018年4月28日(土)・30日(月・振休)
静岡県 舞台芸術公園 野外劇場「有度」

作:北村想
演出:宮城聰
出演:SPAC(奥野晃士、春日井一平、たきいみき)

「民衆の敵」

2018年4月29日(日・祝)・30日(月・振休)
静岡県 静岡芸術劇場

作:ヘンリック・イプセン
演出:トーマス・オスターマイアー
出演:クリストフ・ガヴェンダ、コンラート・ジンガー、エファ・メクバッハ、レナート・シュッフ、ダーヴィト・ルーラント、モーリッツ・ゴットヴァルト、トーマス・バーディンク

「夢と錯乱」

2018年4月28日(土)~30日(月・振休)
静岡県 舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」

作:ゲオルク・トラークル
演出:クロード・レジ
出演:ヤン・ブードー

「リチャード三世 ~道化たちの醒めない悪夢~」

2018年4月28日(土)~30日(月・振休)
静岡県 舞台芸術公園 稽古場棟「BOXシアター」

原作:ウィリアム・シェイクスピア
演出:ジャン・ランベール=ヴィルド ほか
出演:ロール・ヴォルフ、ジャン・ランベール=ヴィルド

「マハーバーラタ ~ナラ王の冒険~」

2018年5月3日(木・祝)~6日(日)
静岡県 駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場

台本:久保田梓美
演出:宮城聰
音楽:棚川寛子
空間構成:木津潤平
出演:SPAC

「シミュレイクラム/私の幻影」

2018年5月3日(木・祝)・4日(金・祝)
静岡県 静岡芸術劇場

演出・振付:アラン・ルシアン・オイエン
歌舞伎舞踊振付・音楽「Natsue」:藤間勘十郎
出演・振付:小島章司、ダニエル・プロイエット

「ジャック・チャールズ vs 王冠」

2018年5月6日(日)
静岡県 静岡芸術劇場

作:ジャック・チャールズ、ジョン・ロメリル
演出:レイチェル・マザ
出演:ジャック・チャールズ ほか

「大女優になるのに必要なのは偉大な台本と成功する意志だけ」

2018年5月4日(金・祝)~6日(日)
静岡県 レストランフランセ 3F

作・演出:ダミアン・セルバンテス
出演:ディアナ・マガジョン、マリ・カルメン・ルイス

※「ふじのくに→せかい演劇祭2018」の→は相互矢印が正式表記。

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SPAC-静岡県舞台芸術センター @_SPAC_

昨日3月16日に開催した「ふじのくに⇄せかい演劇祭2018」東京プレス発表会の様子をステージナタリーさんがアップしてくださいました。https://t.co/1r6O7bqz3i

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