昨日9月19日、東京・アップル銀座で行われたイベント「Perspectives」にイキウメの
前川が2005年に発表した同名戯曲を原作とする本作は、宇宙からやってきた“侵略者”たちによって、日常が非日常へと変化していくさまを描いたSF作品。黒沢が監督、長澤まさみが主演を務めている。
イキウメのファンだという黒沢は、その魅力を「ごく当たり前のような日常があって、そこに『それ本当?』っていうありえないようなことが起こる。映画とは確実に違うスリリングさがあります」と説明。また自身が演劇の世界に足を踏み入れる前に、映画のシナリオを書いていたという前川は、その頃に黒沢の「CURE/キュア」「回路」「降霊」「カリスマ」などの作品を観ていたといい、「影響を受けた人の名前に黒沢さんの名前を挙げるくらいファンでした。先ほどおっしゃっていただいたイキウメの作風、それを語る言葉はそのまま黒沢さんの作品にも言える要素だと思います。僕の創作のベースには黒沢映画があるので」と続け、映画で描かれるようなSF、ホラー、オカルトをいかに演劇に落とし込むかがキャリアのスタート地点であったことを明かす。
また、黒沢が「演劇って、ごく普通の少年少女が興味を持つことは少ないですよね。どうして劇作家を志そうと思ったんですか?」と興味津々の様子で尋ねると、前川は「身も蓋もない話をすると、演劇は映画に比べてお金がかからなかったというのがあって(笑)。それに、演劇の台本を何作か書いていくうちに、僕が描きたいホラーやSFは演劇というフォーマットに合ってるんじゃないのかなと感じたんです」と当時を振り返った。
続くトークテーマは、映画と演劇における“日常”について。黒沢が「映画は日常を撮るのがえらく簡単なんです。でも舞台で日常を描くのは大変ですよね。演劇では日常と非日常の区別をどうつけているんですか?」と問うと、前川は「1つは会話の雰囲気です。演劇では、しゃべっているときに『やっ、えっ、ああ』と言いよどんだり、思考する間があったり、そういった“ノイズ”が日常として機能する。黒沢さんから稿を重ねるたびに送っていただいていた映画の脚本は、演劇に比べて言葉がシンプルでストレートだと感じました」と述べ、「でも実際に完成した映画を観ると、ある程度言葉が日常とかけ離れていても、すでに画面に日常が映っているせいか情報としてストンと入ってきました」と感想を述べる。
これを受け、黒沢は「ものすごく納得しました。前川さんが言ったような生々しい会話を映画でやってしまうと、日常ではなく、変な雰囲気になってしまう。だから映画では俳優にシンプルにしゃべらせたほうが成立するんです」と解説。一方で、実力のある俳優が生々しいセリフを発するからこそ成立してしまう場面もあるといい、劇中の長澤の出演シーンに言及。「『絶対に言わないだろうけど、言ってください』とお願いして。そこを実にうまくやってくれたので、ああ、これが俳優の力だなと思った」と語った。
映画「散歩する侵略者」は全国で公開中。なおイキウメによる舞台版は、10月から12月にかけて東京、大阪、福岡にて上演される。
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- 映画「散歩する侵略者」公式サイト
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