新国立劇場のシリーズ「かさなる視点ー日本戯曲の力ー」の合同取材会が11月28日に行われ、同シリーズに参加する
新国立劇場では、シリーズ「かさなる視点ー日本戯曲の力ー」と銘打ち、2017年3月から5月にかけて、
会見冒頭では宮田が、「日本の戯曲を大切にしたいと、常々感じていた」と語り、その上で「次代を拓き、日本の演劇界を引っ張っていってくれる人たちに、ここ(新国立劇場)を使ってもらいたい。その中で、このお三方は翻訳物をよくやられてはいるけれど、なかなか日本の戯曲には出会わないのではないかと思って、30代の彼らに日本の戯曲に触れてほしいと立てた企画です」と企画意図を説明した。当初はピックアップする戯曲の年代までは特に決めていなかったが、3人が選択した作品が偶然昭和30年代のものだったことから、シリーズ全体としても戦後を意識した企画になったと語る。また、「かさなる視点」というシリーズタイトルについては「昭和30年代の戯曲をそのままやるということではなく、これらの作品に、今の私たちの視点がどう乗っかるのか、どう“かさなる”のかということが大事。3人の作家の企みに、3人の演出家がどう企んでいくか、ということを観ていただけたら」と説明した。
1982年生まれの谷賢一は、本シリーズへの参加について「翻訳劇をやることが多いので、『日本の戯曲を』、と宮田芸術監督にお声がけいただき、2つ返事で『やりたいです』とお願いしました」と語る。演出する「白蟻の巣」については、「三島由紀夫のように文章がうまい人は見たことがない。最近になって三島の思想的なものにも興味が湧いてきて、彼がどういう思いで生きていたのか、現代の日本を捉えていたのかをこの戯曲や、本作以降の作品を通して考えたい」と語った。
1979年生まれの上村聡史は「城塞」を上演。作品選びのポイントを、「近年、グローバルな世界の価値観と、民族性や国民性などドメスティックに根付いている日本的な価値観がきしみ始めている感じがしていて。演劇を通してその根底にあるものと、戦争を経ても変わらなかった日本人の姿に迫れるのではないかと思い、この作品に決めました」と説明した。
1978年生まれの小川絵梨子は、宮田から「マリアの首」を勧められ、直感でやってみたいと感じたと話す。「とても難しい作品だと思ってはいるのですが、私の父が75歳で、この作品の時代には生きていたのだなと思ったら、急にリアリティがわいてきて、そこがとっかかりになるかなと。この時代をそのまま再現することはできないけれど、作品を通してぜひ当時の匂いを体感してみたいし、わかったふうな嘘はつかず、でも登場人物たちと同じような思いを背負ったり考えたりできたら」と語った。
最後に、3作品がシリーズとして並列に扱われることについて、記者から心境を尋ねられると、上村が「2人がやる作品を知って『よくやるよなあ』って、自分のことを棚に上げて思いました(笑)」と語り、会場が爆笑に包まれる一幕も。小川は以前、同劇場のシリーズ企画「Try・Angle(トライ・アングル)ー三人の演出家の視点ー」に参加した経験を踏まえ、「括りとして(メンバーに)入れてもらえるのはすごくうれしかった。でも“括り”に入れば(他作品と)比べられるわけで。今回もまた比べられるんだなって思ってます」と本音を吐露する。谷は、「演出家って孤軍奮闘しなければいけないところがあるので、今回のように演出家同士、話ができるのはうれしいです。演劇に限らず、いろいろな話ができる関係ができたらいいなと思っているので、一生懸命けんかしようと思っています」と笑顔で語った。
「白蟻の巣」は2017年3月2日から19日まで、「城塞」は4月13日から30日まで、「マリアの首-幻に長崎を想う曲-」は5月10日から28日まで、いずれも新国立劇場 小劇場にて。3作品の特別割引通し券もあるので、この機会にぜひ3作品を観比べてみては。
2016/2017シーズン かさなる視点―日本戯曲の力― Vol.1「白蟻の巣」
2017年3月2日(木)~19日(日)
東京都 新国立劇場 小劇場
作:
演出:
出演:
2016/2017シーズン かさなる視点―日本戯曲の力― Vol.2「城塞」
2017年4月13日(木)~30日(日)
東京都 新国立劇場 小劇場
作:安部公房
演出:
出演:
2016/2017シーズン かさなる視点―日本戯曲の力― Vol.3「マリアの首-幻に長崎を想う曲-」
2017年5月10日(水)~28日(日)
東京都 新国立劇場 小劇場
作:田中千禾夫
演出:
出演:
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ホッタタカシ @t_hotta
2017年3月〜5月、三島由紀夫『白蟻の巣』、安部公房『城塞』、田中千禾夫『マリアの首』が連続上演。
【新国立劇場「かさなる視点」で、芸術監督の宮田慶子「日本の戯曲に触れて」】 https://t.co/uJeZgKJVBD