ステージナタリーは2026年2月に10周年を迎えます。あなたはこの10年、どんな舞台に出会い、どんな舞台に心揺さぶられてきましたか?
このコラムでは、さまざまな舞台で活躍中のアーティスト10人に、舞台ファンとしての“10年の観劇ライフ”を振り返ってもらい、「もう一度観たい」と思う、心と記憶に刻まれた舞台作品を教えてもらいました。
アーティストたちの“客席からの視点”を糸口に、ぜひあなたの10年の観劇ライフも振り返ってみてください。
須賀健太
思えば自分が舞台に多く立たせて頂くようになったのは、ここ10年くらいのこと。
あの頃は自分が役者としてだけでなく、クリエイターとして舞台に関わるようになるなんて想像もしていなかった。
振り返ればこの10年はまさに、“舞台に育ててもらった10年”であり、“舞台が彩ってくれた10年”だったと強く感じる。
そんな自分が“もう一度観たい舞台”に挙げたいのは、2018・2019年に初演、2021年に再演された三谷幸喜さん作・演出の「日本の歴史」だ。
歴史上の偉人からテキサスに暮らす家族まで、60人以上の登場人物を、少数精鋭の俳優陣が演じる作品。
「この人がこの役を!?」という面白さや、1人が複数役を担う早替えの面白さも演出に盛り込まれていた。セットはシンプルであり、役者と観客の想像力を信じる気概を感じ、“舞台”という表現の豊かさを実感させてくれた。
序盤の笑いどころが物語が進むにつれ切なさや悲しさを孕んでくる三谷作品の強みも感じられ、
「あなたが悩んでいることは / いつか誰かが悩んだ悩み」
このメッセージを受け取った時、歴史上の人物がグッと身近に、愛おしく思える感覚があった。
願わくばキャストが変わる事なくまた観ることができたら嬉しい。
(欲を言うと自分も出たいけど……笑)
松崎史也
「アンサンブルデイズ―彼らにも名前はある―」
この作品は2025年3月20日~23日にシアターコクーンで上演されており、
私にとっては近年ベストワン観劇だったことに加え
拝見したのが千秋楽だった為、どうあっても一公演しか観られず
もう一度と言わず何度でも毎年でも観たい作品であった為、この作品を選びます。
俳優にとって“何者か”になると言うことは
「売れる / 有名になる」という側面がどうしても存在していて
その現実を現在進行形でもがいている俳優たちに演じさせるという仕掛け自体が面白過ぎたし
脚本と演出の圧倒的な力が惜しみなく注がれていて、愛だった。
冒頭、コクーンの奥扉、渋谷の街から一人また一人とジャージ姿で歩いてくる俳優達の登場シーンから
演劇あるある、アンサンブルと大御所あるある、イケメン俳優やアイドルとの演劇あるあるが解像度高く連打され
劇中劇として、例えば「例えばこんな…」と即興で2.5次元ミュージカル風演劇をつくっていくポジティブな盛り上がりがあって
そこからビターにドライに現実的に、演劇は皆がうまくいくわけではないところに着地するラストまで
演劇を観察する面白い瞬間しか舞台上に存在してなかった。
ここでしかできない、今ここでやることにあまりにも価値があった演劇だったことが
私には何の関わりもないというのに、自分の演劇人生まで肯定してもらえたような観劇で
見ず知らずの俳優達をパンフレットで愛おしく眺めながら帰る道が、とても幸せだった。
須賀健太 @suga_kenta1019
【掲載情報】
ステージナタリーさんの連載『もう一度観たいあの舞台』に寄稿させて頂きました!自分がナタリーさんにコラムを書ける日が来るとは…サントラ買うほど好きだった作品を取り上げさせて頂いたらまさに今日、三谷幸喜さん×荻野清子さんの再タッグが発表されました!なんか俺すごくない⁉︎笑 https://t.co/zESBaopZfl