ステージナタリーが2026年2月2日に10周年を迎えることを記念し、過去10年の舞台を振り返るユーザー投票企画「もう一度観たいあの舞台」総選挙を実施している。11月4日から13日にかけて行われた「事前投票」でユーザー投票を募るべく、YouTubeのショート動画で話題のコントユニット・
ステージナタリーでは、動画制作を快く引き受けてくれた転転飯店の作家である
なお、12月2日にスタートする「もう一度観たいあの舞台」総選挙の「本投票」に向けて、新たな動画を準備中。公開をお楽しみに!
取材・
転転飯店は最高のチームってことやね!
──私ごとで恐縮ですが、平山さんと中村さんとの出会いは10数年前にさかのぼります。平山さんと中村さんがかつて所属していた劇団時代からお二人の活動を拝見していて、2023年にお二人を中心としたメンバーが転転飯店を“創業”したときは心が躍りました。その後、YouTubeに投稿されたショート動画が話題となり、現在では68.7万人のチャンネル登録者を獲得しています。
平山犬 あたしたち自身も予想だにしていなかった出方ではあったんだけど、いろいろな人たちに転転飯店を知ってもらえてすごくうれしかったな。でも、自分としては“ドーン!”ってバズった実感はなくて……。
中村亮太 カッコつけない、カッコつけない! 実際、“ドーン!”ってなったんだから。
平山 へへへ。そうだね。でも、東スポさんのYouTubeチャンネル登録者数10万人を突破した人物に直撃する「銀の盾に聞いてみた」っていう企画で取材してもらったときに初めて実感がわいたかも。
──お二人は、パフォーマンスユニット・妖精大図鑑をはじめとする作品で共に舞台に立ってきましたが、転転飯店はどのようなきっかけで“創業”することになったのか、改めて教えてください。
平山 「一緒に何かやろう」っていう話は転転飯店を結成する前から出てたんだけど、何度か立ち消えて、あるときあたしが「やっぱり一緒にやろうよ!」って話を持ち出したんだよね。LINEで何度も念を押して、押し切った(笑)。
中村 そうだったね(笑)。今もスタッフをやってくれているハラ、井関、こぞ、それぞれに参加してもらえるタイミングだったのも本当に運が良かった。
──出役の平山さん、中村さんはもちろん、転転飯店はスタッフ陣もクリエイティビティを持った方々ばかりですね。“イセキ”*の方々から、スタッフ陣を含めた転転飯店という団体全体が愛されていることが伝わってきます。
※イセキ:転転飯店のファンの総称。カタカナ表記のイセキは転転飯店のファンを指し、漢字表記の井関は転転飯店のメンバーを指す。
平山 メンバーそれぞれが得意なことをやって、分業できているのがいいのかもね。ハラちゃんはディレクター業や動画編集、井関は舞台監督や広報、こぞは動画編集や制作、作家業。本公演のコントはあたしが書いてるんだけど、ショート動画のネタ出しはみんなでやっていて、主にこぞが考えてくれています。まあ、最高のチームってことやね! ここ、太字でお願いします!*
※残念ながら、システムの関係でご要望にお応えすることができませんでした。平山さん、申し訳ありません。
信頼し合ってコントを作る、それが転転飯店方式
──ステージナタリーでは、媒体立ち上げ10周年を記念して、ユーザー参加型の投票企画「もう一度観たいあの舞台」総選挙を行っています。11月4日から13日にかけて実施された「事前投票」でユーザー投票を募るべく、転転飯店さんにショートコント動画「もう一度観たいだけの俳優」を作っていただきました。「もう一度観たいだけの俳優」は、“俳優の中村さん”が再演してほしいと思う舞台について語るも、“日光でやってる忍者出てくるやつ”“舞浜のネズミ踊るやつ”といった、日常的にくり返し上演されているショーを挙げる、という内容でしたが、草案を作ったのは?
※「もう一度観たいだけの俳優」は現在非公開。
中村 「もう一度観たいだけの俳優」の内容は、自分がベースを考えて、犬とやり取りしながら決めていったと思う。
平山 ショート動画をたくさん撮るようになったことによって、長い尺のコントに生かせることが増えたよね。「ショート動画用に作ったネタだけど、もっと膨らませられそうだから、本公演用に回そう」とか。
中村 転転飯店で活動するようになって、2人の間で意思疎通を図る速度がかなり上がったと思う。出演者は2人だけだから、「亮太、ここのセリフ、こう言ってみて」「オッケー」みたいな感じですぐ完結するじゃない? 一方で演劇はみんなで作るものだから、すごく大変な作業だったんだっていうのを改めて実感した。
平山 ね! 演劇って本当に大変! でもさ、2人の意思疎通の速度が上がった話、あたし的にはあんまりピンと来てないんだけど、それを強く感じるのは亮太が役者だからなのかな? 作家よりも役者さんのほうがそういうところに敏感な気がする。
──個人的には、平山さんのことを作家であり俳優でもあると認識しているのですが、平山さん的にはご自身が俳優であるという感覚はあまりない?
中村 犬、プレイヤーって名乗るのやめたもんね?(笑)
平山 うん! 専業作家になった!
──そうなんですね。「スケスケ・ア・ゴーゴー」で平山さんが演じたシャロンお嬢様がとても可愛らしかったので、これからも平山さんのお芝居が観られることを楽しみにしています(笑)。中村さんは長らく俳優として活動していますが、作劇や演出などをやってみたいという思いは?
中村 まだ実行には至っていないんだけど、演出にはずっと興味があって。
平山 亮太が演出するなら、あたしが脚本を書くよ!
──平山さん作、中村さん演出の作品も観てみたいですね。転転飯店で作品を作るときは、中村さんから平山さんに対してオーダーすることもあるんですか?
平山 あるある! 芝居の間やテンポのこともそうだし、「ここの表現を削っても次につながるから大丈夫じゃない?」みたいなアドバイスをくれることもある。
中村 あるね。でも、どうやったら感情が乗った芝居ができるかとか、リアリティがあるやり取りをするにはどうしたらいいかとか、演技に関することにはそんなにこだわりがなくて、自分の場合、見え方をすごく重視してると思う。「あっちを向いてからこっちを向いたほうが、視線の移動が大きくなるから、観ている人に伝わりやすいんじゃない?」とか、お客さんが演劇を観るときに無意識にやっているズームを表現するにはどうしたらいいのか、とか。コントの内容については犬に一任してます。転転飯店の活動を始めてから変わったことはほかにもあって、犬の脚本の完成度が格段に上がったなって感じるよ。
平山 ありがとう。それは、あたしが書いた脚本に亮太がボケを足してくれるようになったからだと思う。「ここ、どうしようかな……」「いいボケが思い浮かばないな……」って悩んでも、現場に行けば亮太がアイデアをくれるから、「よし、一旦この形で持って行ってみよう」って割り切れるようになった。脚本の話で言うと、“いろいろな部署のあたし”が増えたの。コントの設定を持って来るあたし、そこからストーリーを考えるあたし、脚本を書くあたし……みたいな。そこに関しても今までより少し余裕ができた気がする。
演劇界と他ジャンルをつなぐドアになれたら
──転転飯店のお二人はもともと演劇畑の出身で、現在は演劇、コント、YouTubeなど、さまざまなフィールドを股にかけて活動しています。人気を博したきっかけがYouTubeだったことについて、お二人はどのように捉えていますか?
中村 転転飯店が名刺代わりになって客演に呼んでもらうことが増えたし、ありがたさしかない!
平山 あたしも全然戸惑いはなかったな。たぶんあたしがやりたいことって、自分が書いた作品をたくさんの人に観てもらうことだから、それはどこのジャンルにいてもできることだと思うの。なんなら、この露出の仕方が最高の形だったかもしれませんね! ここも太字にしておいてね! 一同笑。
中村 インタビュー記事に登場する「一同笑」って、その場にいる一同が笑ったときに入れるものなんだよ。別に「一同笑」って言ってるわけじゃないんだよ。
平山 へへへ。
中村 真面目な話をすると、僕は「演劇をやるぞ」という気持ちが軸にあるから、お笑い芸人の方々に対して「すみません! ちょっとコントをやらせていただきます」みたいな気持ちがあるし、YouTuberの方々に対しても「すみません! ちょっとYouTubeをやらせていただきます」みたいな気持ちがあるかも。「皆さん、すみません! ちょっとここにいさせていただきます」的な思いが常にある。でも、「キングオブコント2025」に出たとき、「『キングオブコント』に出たということは、我々は真剣にコントに取り組むチームになったんだ」っていうのを初めて意識したかな。
平山 あたしは、お笑い芸人の方々に対して「すみません! ちょっとコントをやらせていただきます」の気持ちが強いかも。演劇畑出身なのと、あたし自身、お笑いが好きだからなのかな。お笑いが好きな人間として、「キングオブコント」の準々決勝に進出できたのはもちろんうれしかったけど、それ以上に本公演のとき客席が満席になったことが一番うれしかったかな。
中村 そうだね。本当にうれしかったよね。最初は演劇界隈からお客さんを呼んできたいなと思ってたんだけど、インターネットで自分たちを知ってくれた人たちが想像以上に劇場へ足を運んでくれて、すごくびっくりしたし、すごくうれしかった。
平山 亮太が「この芝居が面白かった!」みたいな感想をポストすると、実際に劇場へ観に行って、お芝居の感想をつぶやいてくれたりするんだよね。そういう、インプットもアウトプットもしてくれるファンの方がすごく多いの。本当にありがたいことだよね。お客様は神様やね!
中村 また出た! 太字要求(笑)。自分たちに興味を持ってくれて、熱量高く応援してくれる方が多くて、本当に助かっています。ありがとうございます。今まで演劇を観る機会がなかった人たちにとって、「こっちからも(演劇界に)入れますよ」みたいなドアになれたらいいな。
平山 この記事を読んでくださっている方はきっと、相当演劇が好きな方でしょう。皆さんと転転飯店とステージナタリーとで一緒に演劇界を盛り上げていきましょう!
中村 よし! 夢の遊眠社全盛期ぐらいの頃のレベルまでみんなで盛り上げていこう!
夢は本多劇場と地方公演!
──ステージナタリーが2026年2月2日に10周年を迎えることにちなんで伺いたいのですが、この10年はお二人にとってどんな10年でしたか?
中村 しんどい時期のほうが長かったかなあ。コロナ禍に入って、演劇が止まったときは特にしんどかった。でも三十代に入ってから、急に楽しくなってきて、なんだか視界が開けた感じがする。
平山 あたしは基本的にいつも楽しいんだけど、この10年の間にあたしの人生において最悪な1年があって、毎晩夜中に2時間くらい歩いて銭湯に行って、2時間かけて家に戻ってくるみたいな時期があったの。転転飯店を結成することになったのは、谷底に落ちて、10cmくらいフワッと上がったときくらいだったかな。あの頃は相当つらかったと思うんだけど、もう忘れちゃった(笑)。そんな出来事があって良かったとさえ思えるぐらい今が楽しいからオッケーだね!
──5周年、10周年……と転転飯店の活動が太く長く続くことを願っています。最後に、お二人が今後かなえたい夢を教えてください。
平山 中学生のとき、本多劇場で宮藤官九郎さんの舞台を観て、演劇をやりたいなと思ったんです。だからあたしにとって本多劇場は、甲子園みたいなものなんですよね。なので、いつか本多劇場で転転飯店の単独公演をやるのが夢です!
中村 いいね! 僕は転転飯店で地方公演をやって、“高校生のときの僕”みたいな人を救いに行きたい。というのも、自分は熊本出身なんだけど、九州公演って大体が福岡公演だけなんだよね。当時はWOWOWで舞台を放送していることも知らなかったし、演劇を観るすべがなかった。自分が高校生のとき、演劇ユニット・雨傘屋の公演で、天野天街さんが熊本のキャスト・スタッフと一緒に制作した作品を観て、すごく面白かったんだよね。民家の2階みたいなところで上演された作品なんだけど、僕たちは押し入れに置かれた椅子に座ってお芝居を観てさ。すごく良い体験だった。あとは、飴屋法水さんが演出して、石田えりさん、佐野史郎さん、音尾琢真さん、山中崇さんが出演した「おもいのまま」も熊本公演をやってくれて、あれを観たときもすごく救われたなあ。
平山 本多劇場で東京公演をやったあと、地方公演にも行こう!
中村 それだ! 決まり!
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