最後にもっともっと、ぼくプリが好きになる!「『Dancing☆Starプリキュア』The Stage3」田村升吾・和合真一インタビュー&稽古場レポート

ぼくプリの愛称で親しまれる「『Dancing☆Starプリキュア』The Stage」シリーズが、いよいよクライマックスを迎える。「プリキュア」シリーズが20周年を迎えた2023年にぼくプリシリーズ第1弾「『Dancing☆Starプリキュア』The Stage」が上演され、2025年2・3月に第2弾「『Dancing☆Starプリキュア』The Stage2」が上演された。

ステージナタリーでは、ぼくプリ最終章となる第3弾「『Dancing☆Starプリキュア』The Stage3」の公演に先駆け、第1弾からキュアトップ / 星河ほしかわがく役を演じる田村升吾、パドドゥ役を務める和合真一にインタビュー。また特集の後半には、ぼくプリの制作過程を追った稽古場レポートも掲載している。

取材・文 / 興野汐里撮影 / 藤田亜弓

田村升吾(キュアトップ / 星河楽役)和合真一(パドドゥ役)
インタビュー

舞台を飛び出してアニメにも進出したぼくプリシリーズ

──ぼくプリシリーズは、ダンスに青春を捧げる“男子プリキュア”たちの姿を描いた舞台オリジナル作品です。2023年10・11月に第1弾「『Dancing☆Starプリキュア』The Stage」、2025年2・3月に第2弾「『Dancing☆Starプリキュア』The Stage2」が上演されました。田村さんと和合さんは、第1弾からそれぞれキュアトップ / 星河楽役、パドドゥ役で参加していますが、改めて「プリキュア」シリーズ、ぼくプリシリーズとの出会いについて振り返っていただけますか?

田村升吾 僕が小学生くらいのときにテレビアニメ「ふたりはプリキュア」の放送が始まったんですけど、大人になって「プリキュア」シリーズと再び出会うことになるとは思いもしませんでした。ひとくくりにプリキュアと言ってもいろいろなタイプがいて、さまざまな技で戦いますが、ぼくプリではボディアクティングを用いたダンスの力で、闇のリズムにとらわれたイビルダンサーと戦います。“生の熱量”はやはり舞台でしか感じられないものだと思うので、今アニメシリーズを観ている子供たちや、僕ら世代の大人の方々など、いろいろな世代の方々に観ていただきたいですね。

和合真一 確かに、自分が「プリキュア」シリーズに携わるなんて想像していなかったよね。そういえば、ぼくプリでプリキュアに扮する5人とパドドゥが、テレビアニメ「キミとアイドルプリキュア♪」の11月9日放送回(第39話)にゲスト出演させていただいたんですけど、アニメでぼくプリの存在を知ってくださった方は「これをどうやって舞台で表現しているの!?」と思われたのではないでしょうか。気になった方はぜひ劇場へお越しいただければと思います!

「『Dancing☆Starプリキュア』The Stage3」キービジュアル

「『Dancing☆Starプリキュア』The Stage3」キービジュアル

大切にしているものはずっと変わらない

──田村さんは、煌星きらぼし高等学校ダンス部の2年生でヒップホップダンスを得意とする楽と、変身後のキュアトップを演じ、和合さんは、楽たちにプリキュアになる力を与えた妖精パドドゥ役を演じます。ぼくプリ第1・2弾を経て発見したご自身の役どころの魅力、また今回のぼくプリ第3弾で特に意識して演じたい部分を教えてください。

和合 第1弾は「パドドゥは光の国サイドの妖精なのか? 闇の国・デスパレードサイドの妖精なのか?」というところで幕が降りたのですが、僕自身、第2弾以降の展開を知らずに演じていたんです。第2弾の稽古中に、脚本・演出を手がけるほさかようさんから今後の構想を僕だけ聞き、プリキュアキャストのみんなは行く末を知らないまま演じていて。第3弾の台本をいただいたときに、「パドドゥのあのセリフの裏にはこういう意味が込められていたんだ」という発見がありました。第3弾では、パドドゥが抱えている思いをすべて舞台上で解放して、戦う姿をお見せできればと思います。

田村 楽を演じるうえで大切にしていることは、第1弾からずっと変わっていないような気がします。第1弾の脚本をいただいたときに、楽は明るくて真っすぐで、プリキュアの主人公らしく、センターに立つことがふさわしいキャラクターだと感じました。でも、脚本に書かれていない部分──楽が抱えているかもしれない悲しみや苦しみを想像することによって、楽の明るさがより一層際立って、人物に重みが出ると思ったんです。ほさかさんと「そういうアイデアも面白いね」とディスカッションしながら、楽のバックボーンを作っていきました。第1弾で楽の人物像をしっかりと作り込めていたことにより、ほさかさんも楽の魅力を引き出してくれる脚本を書いてくださったし、お客様もそれを求めてくださったのではないかと思っています。

田村升吾扮するキュアトップ。

田村升吾扮するキュアトップ。

後悔なく終われる作品に

──ぼくプリ第1弾では、キュアソウル、キュアカグラ、キュアブレイクが3人で活動していたところに、キュアトップとキュアロックが新メンバーとして加わる場面や、あることをきっかけにプリキュアとしての活動をリタイアしようとするキュアブレイク、そして彼を支える4人の姿が描かれました。ぼくプリ第2弾では、煌星高等学校のライバル校・満天星まんてんせい高等学校のダンス部顧問・姫沼ひめぬまのばらや、部員の音切おとぎり百合夜ゆりや音切おとぎりねむとの関わりを通して、キュアソウル / 月宮つきみや爽々奈ささな、キュアカグラ / 天弦てんげん晃雅こうがの過去が明らかになりました。第2弾の終盤では、楽とパドドゥのエピソードが第3弾でさらに掘り下げられるような印象を受けたのですが……。

田村 はい! おっしゃる通り、僕たちのエピソードが掘り下げられます。第3弾には、今まで観劇してくださった方々が観たいものがすべて詰まっているので、楽しみにしていただけたらと思います。

和合 第2弾に「もう1人で踊りたくないんだ」というパドドゥの意味深なセリフが登場したんですが、そもそも“パ・ド・ドゥ”はバレエ用語で“2人のステップ”を指す言葉。要するに“2人で踊る”という意味を持っているんですね。そういった、これまでに打たれた布石が第3弾でどのように作用するのか……乞うご期待です!

田村 現段階で言えることとすれば、パドドゥはわごちゃん(和合)が人間体のまま演じるシーンと、わごちゃんがパペットを操演するシーンと両方ありますが、これも実はあるメタファーになっていて……。なぜ人間体がパペットを操って、それに声を当てているのか、そして妖精がなぜ人間体に変身するのか、この謎がようやく解ける時が来ます。

和合 「プリキュア」シリーズのプロデューサーである鷲尾天さんが「プリキュア」シリーズのテーマは「既存概念の破壊とそこからの創造」だとおっしゃっているように、男の子のプリキュアが登場したり、「プリキュア」シリーズはこれまでもさまざまな挑戦を続けてきました。ぼくプリ第3弾でも、さらに深いところにまで切り込んだ人間ドラマが展開します。「プリキュアでここまでやっちゃっていいの!?」と戸惑う方もいるかもしれないのですが、誰も置き去りにせずに楽しんでいただけるコンテンツに仕上がっていると思うので、恐れずに観に来ていただけたらうれしいです。

和合真一扮するパドドゥ。

和合真一扮するパドドゥ。

──お二人のお話を伺って、ぼくプリのクライマックスがさらに楽しみになりました。最後に、ご自身が演じるキャラクターの「ここに注目してほしい!」というポイント、公演全体を通して楽しみにしてほしい部分を教えてください。

和合 パドドゥはこれまで、表の顔と裏の顔がある表現が多かったと思うのですが、そんなパドドゥにも実はさまざまな葛藤があり、もしかするとパドドゥは“大人たちが抱える複雑な思い”を背負った存在なのかもしれないと感じました。第3弾では、どんな方にも共感してもらえるような物語が描かれているので、さまざまな方に観にきてもらえたらうれしいです。第3弾を観て、人生観が変わる方がいるかもしれません!

田村 第3弾で描かれる物語は、僕たちとお客様が築いてきた信頼があるからこそ紡ぐことができるストーリーだと思うんです。皆様が求めていたもの、見たかった景色を最後にお見せして、後悔なく物語を締めくくることができるんじゃないかと。第3弾を観たあとに、もっともっとぼくプリが好きになるような作品になっているので、ワクワクした気持ちで劇場に足を運んでいただければと思います!