ミュージカル「エリザベート」博多座公演ライブ配信に向け、望海風斗&明日海りおが明かす思い

ミュージカル「エリザベート」2025・2026年公演が、福岡・博多座で千穐楽を迎える。

ミュージカル「エリザベート」は、脚本・作詞をミヒャエル・クンツェ、音楽・編曲をシルヴェスター・リーヴァイが手がけた作品。日本では1996年に宝塚歌劇団によって初演(「エリザベート-愛と死の輪舞ロンド-」)され、2000年には東宝版が誕生した。東宝版初演から25周年の節目となる2025年、タイトルロールに望海風斗、明日海りおを迎えたプロダクションが開幕した。ハプスブルク帝国最後の皇后エリザベート(シシィ)の生涯と彼女を愛する死神トートの愛、そして時代を生きた人々の生き様が、小池修一郎(演出・訳詞)の手によって退廃的な世界観の中で立ち上げられ、舞台ファンの熱狂を呼んだ。

このたび、2025・2026年公演の掉尾を飾る博多座でのラスト2公演が、au Live StreamingおよびTELASAでライブ配信される。配信に先駆け、宝塚歌劇団時代にミュージカル「エリザベート」で別役を演じた経験を持つ望海と明日海それぞれに、作品への思い、現在の心境を寄せてもらった。

構成・文 / 大滝知里

au Live StreamingおよびTELASAでは、ミュージカル「エリザベート」望海風斗・明日海りおの博多座千穐楽の模様を独占配信!

ミュージカル「エリザベート」ライブ配信
2026年1月30日(金)・31日(土)

配信情報

①1月30日(金)17:00公演

キャスト
エリザベート:望海風斗
トート:山崎育三郎
フランツ:佐藤隆紀
ルドルフ:伊藤あさひ
ルドヴィカ / マダム・ヴォルフ:未来優希
ゾフィー:香寿たつき
ルキーニ:尾上松也
ほか


②1月31日(土)12:00大千穐楽公演

キャスト
エリザベート:明日海りお
トート:古川雄大
フランツ:田代万里生
ルドルフ:中桐聖弥
ルドヴィカ / マダム・ヴォルフ:未来優希
ゾフィー:涼風真世
ルキーニ:黒羽麻璃央
ほか


配信サイトオープン日時
開演時刻の30分前

配信チケット販売期間
①1月30日(金)17:00公演
2026年2月6日(金)20:00まで
②1月31日(土)12:00大千穐楽公演
2026年2月7日(土)20:00まで

アーカイブ配信期間
①1月30日(金)17:00公演
公演終了後準備でき次第開始~2026年2月6日(金)23:59
②1月31日(土)12:00大千穐楽公演
公演終了後準備でき次第開始~2026年2月7日(土)23:59

販売価格
Pontaパス会員価格:5000円(税込)
一般価格:5500円(税込)


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望海風斗インタビュー

東宝版は“生き抜く強さ”がより鮮明

──望海さんは今作に関する過去のインタビューで、出演が決まったときの気持ちを「まさか自分が」というふうに語られていました。開幕の際には、「お客様の温度感がわからないから1つひとつやっていきたい」とおっしゃられていましたが、今はどのような心境ですか?

お客様の熱量の高さに圧倒されつつも、その深い愛情を舞台上で毎日強く感じております。シシィとしてどのように生きるかを常に模索しながら舞台に立っておりますが、カーテンコールで客席からいただく拍手は、自分自身に向けられたものと、作品「エリザベート」そのものへ向けられたものが半分ずつ混ざり合っているように感じました。信じられない気持ちと、作品への深い愛情を寄せてくださるお客様のお気持ちが毎日胸に響き、1回1回の公演を大切にかみしめながら過ごしてまいりました。

ミュージカル「エリザベート」2025年公演より、望海風斗扮するエリザベート。(写真提供:東宝演劇部)

ミュージカル「エリザベート」2025年公演より、望海風斗扮するエリザベート。(写真提供:東宝演劇部)

──望海さんは、宝塚歌劇団在団中にもミュージカル「エリザベート」に出演されました。その際に作品に感じていた魅力と、今回、エリザベート役として出演し、改めて知った作品の魅力を教えてください。

宝塚版で育ってきた自分にとって、宝塚版の美しさや儚さ、そしてトートとの関係性がもつ幻想性には、今も強く惹かれています。一方で、東宝版では“生き抜く強さ”がより鮮明で、どんな立場の人でも“今を懸命に生きている力”が際立って感じられました。そして、どちらにも共通しているのが“音楽の素晴らしさ”であり、改めてこの作品の最大の魅力だと強く感じています。

「パパみたいに(リプライズ)」を歌うためには、人生の濃度が不可欠

──妻であり、母であり、国を背負う立場の女性でもあるエリザベートという役に向き合う過程で、望海さんの中に生まれた変化を教えてください。

遠い存在だと思っていたエリザベートが、実際にゆかりの地に足を運び、資料を読み込み、舞台で生きることで、1人の人間として近く感じられるようになりました。どんな立場にあっても悩み苦しみ、自らの力で乗り越えていった強さ──その“人間としての姿”に触れたことで、尊敬と実感をもって役に向き合えるようになったと感じております。この変化は、自分にとってとても大きなものになっています。

ミュージカル「エリザベート」2025年公演より、望海風斗扮するエリザベート。(写真提供:東宝演劇部)

ミュージカル「エリザベート」2025年公演より、望海風斗扮するエリザベート。(写真提供:東宝演劇部)

──望海さんにとってエリザベートを演じるうえで“核”になると感じているシーンや楽曲は何でしょうか?

東京で実際に上演してみて、“核”だと感じておりますのが「パパみたいに(リプライズ)」と「夜のボート」です。「パパみたいに(リプライズ)」は、シシィがこれまで駆け抜けてきた人生と正面から向き合い、“パパみたいにはなれない”と痛烈に気付く瞬間であり、その重さを歌うためには、人生の濃度が不可欠だと感じております。「夜のボート」は、フランツとの“2人にしかわからない愛”が宿る、とても大切な場面です。どちらも、シシィの人生と心の核心に触れる曲だと強く感じています。

明日海りおとは短い時間でも気持ちを共有、自然と支え合う関係に

──開幕前は、“明日海さんと一緒に稽古場で過ごすことで初心に帰る気持ちになる”とおしゃっていました。幕が開いてから、明日海さんとの関係性に変化はありましたか?

Wキャスト故に入れ替わりで劇場にいることが多いのですが、会えたときには「今日どうだった?」という会話や、「最近こんな感覚がある」といった気持ちを短い時間でも互いに共有しています。それぞれのシシィを尊重しながら、そっと支え合うような関係が自然と生まれており、その距離感をとても心強く感じています。

──望海さんはミュージカル「エリザベート」に出演が決定した際、演出・訳詞の小池修一郎さんに“キャスティング意図を聞きたい”と思われていたそうですが、お稽古場や開幕後の舞台裏で小池さんから受けたアドバイスなどがあれば教えてください。

思っていた以上に自由に任せていただけた印象が強くあります。従来のエリザベート像とは少し異なる提案をしながら臨んでおりましたが、その解釈を周囲の皆さんが新鮮に受け入れてくださり、小池先生の演出にも変化が生まれる瞬間がありました。大きな指示が多くなかったのは、私が持ち込んだ解釈を信じてくださったからかもしれない、と感じています。

ミュージカル「エリザベート」2025年公演より、望海風斗扮するエリザベート。(写真提供:東宝演劇部)

ミュージカル「エリザベート」2025年公演より、望海風斗扮するエリザベート。(写真提供:東宝演劇部)

「あのとき、全力で駆け抜けられてよかったね」と言えるように

──今回のプロダクションで、望海さんが“ライブ配信だからこそ楽しんでもらいたい、楽しんでもらえる”とおすすめしたい部分はどこですか?

劇場に来られないお客様が作品に触れられるのは、ライブ配信ならではの魅力だと感じています。外に出づらい方でも、自宅から身近にミュージカルを感じていただける機会になると思っています。ただ、できれば“近距離での視聴”は避けていただき、作品全体を味わっていただけるような距離感でご覧いただけますとうれしいです。

──博多座大千穐楽公演を迎えるにあたり、エリザベート役をWキャストで務めてきた明日海さん、そして未来のご自身に、どのような言葉を伝えたいですか?

まだ旅路の半分ですが、この先には“やり切った人にしか見えない景色”が必ずあると信じています。千穐楽を迎えたときには、「あのとき、全力で駆け抜けられてよかったね」と、自分にも、そして明日海さんにも言いたいと思っています。その思いを胸に、残りの道のりも丁寧に、生き抜くように歩んでいきたいです。

プロフィール

望海風斗(ノゾミフウト)

1983年、神奈川県生まれ。2001年に宝塚音楽学校に入学。2003年に89期生として宝塚歌劇団に入団し、月組公演で初舞台を踏む。2017年に雪組トップスターに就任し、2021年に宝塚歌劇団を退団した。退団後は「ネクスト・トゥ・ノーマル」「ガイズ&ドールズ」「ドリームガールズ」「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」「イザボー」といったミュージカルを中心に活動するほか、2025年に「マスタークラス」で退団後の初ストレートプレイに挑戦した。2022年度に第30回読売演劇大賞優秀女優賞、2023年度に第48回菊田一夫演劇賞を受賞。

明日海りおインタビュー

すべての音楽が心を揺さぶる名曲で、脚本の解釈の広がりは無限

──ミュージカル「エリザベート」には宝塚歌劇団在団中にもご出演されましたが、明日海さんが思う、本作の一番の魅力は何ですか?

やはり、楽曲の素晴らしさです。登場人物がそれぞれメインナンバーを持っていて、エリザベートであれば「私だけに」、トートであれば「愛と死の輪舞」「最後のダンス」、それに限らずすべての音楽が心を揺さぶる名曲ばかりで、曲が持つ偉大なパワーが一番の魅力だと思います。そして、脚本です。オーストリア皇后になる少女・女性を「死」が愛することがあるのだろうか、皇后を暗殺した者が物語を展開していくというところがほかにはないストーリーで、演じる役者やご覧になる方の受け取り方でさまざまな解釈ができます。エリザベートとトートの関係性もですし、エリザベートとフランツの関係性、ルドルフとの関係性など、解釈が無限に広がるところが魅力だと感じます。

──ミュージカル「エリザベート」の2025・2026年公演の幕が開き、約2カ月となります。明日海さんの現在の心境を教えてください。

あっという間だったと感じます。幕が開いたときは、1回1回が初日であり千穐楽であるようなすさまじさで、これが続くのかと思うと、少し気が遠くなるような気がしていましたが、Wキャストで組合わせが変わるたびに、新しい気持ちが生まれてきたり、自分の中でも解釈を探したりして、「今回はこういう所にたどり着いたなぁ」と味わいながら演じていたらあっという間でした。

井上芳雄さんが東京公演で大千穐楽を迎えられて、1つのエリザベート&トートの形にお別れをしたところですごく寂しい気持ちと、(山崎)育三郎さんが初日を迎えられて楽しみが増えた気持ちと両方あります。古川(雄大)さんもきっとまた進化していかれると思います。

ミュージカル「エリザベート」2025年公演より、明日海りお扮するエリザベート。(写真提供:東宝演劇部)

ミュージカル「エリザベート」2025年公演より、明日海りお扮するエリザベート。(写真提供:東宝演劇部)

私のシシィは、せいへのエネルギーがあるようにできている

──妻であり、母であり、国を背負う立場の女性でもあるエリザベートという役に向き合う過程で、ご自身との距離感や、役として受け取る感情など、明日海さんの中に生まれた変化があれば、教えてください。

私自身は妻でも母でもなく、平民と言いますか(笑)、国を背負う立場でもないので、置かれている状況としては距離があると思います。これだけ再演を重ねられてきた作品で、そしてWキャストでもあるので、動きやテンポ感がほぼ毎回同じでないといけない。そういった“型”のようなものがある中で、自分自身のリアルな感情が流れていないと意味がないと考えていますので、役との距離感はありますが、できるだけ自分の中に流れる感情は自分そのものでないといけないな、と公演を重ねるごとに思います。シシィとかけ離れないように軌道修正をしながら、その日お芝居をする相手から感じ取った本当の感情を積み重ねていきたいと思っています。

──明日海さんは過去のインタビューで、役作りについて「トートが惹かれるエリザベートが持つ魂とはどのようなものかを突き詰めたい」とおっしゃっていました。その“魂”はつかめましたか?

絶対的な「死」が唯一惹かれ、「ただ一つの過ち」と言うほどの引力を持った魂というのはどんな魂だろうと、お稽古に入る前に考えていました。久しぶりに振り返ると、つかめたかはわかりませんが、私自身のシシィはほかの人にはない、せいへのエネルギーがあるようにできていると思います。

「死」に出会って、恐ろしい、怖いという気持ちだけでなく、助けてもらったという思いで、どこか惹かれている。彼に返してもらった命があるからこそ私は自由をつかむんだ、思いっきり生きていくんだという、想像していたよりとても元気でポジティブなシシィになりつつあるなと。まだ公演が続くので引き続き深掘りしたいです。

ミュージカル「エリザベート」2025年公演より、明日海りお扮するエリザベート。(写真提供:東宝演劇部)

ミュージカル「エリザベート」2025年公演より、明日海りお扮するエリザベート。(写真提供:東宝演劇部)

望海風斗との“持っているものの違い”がより明らかに

──望海風斗さんとは、Wキャストでエリザベート役を演じるにあたり、お稽古場でさまざまな課題を共に乗り越えられてきたそうですが、開幕後の望海さん演じるエリザベート像にどのようなことを感じましたか?

開幕後はあまり正面から観る機会がないので、私の言葉をあてにしないでほしいのですが(笑)、より繊細さにあふれているシシィだなと思います。

こんなにも2人の表現が違ってくるものなのだなと感じます。稽古場でも、あやちゃん(望海)はこうやるけど、私はこうだな、私はこうやるけどあやちゃんはまた別のことをしたいのだな、と。進む道の違いや、持っているものの違いはもともと感じていましたが、それがより開いてきたという感じがして、あやちゃんはさらに繊細に、より守ってあげたくなる雰囲気が強くなっていると感じています。

──1人の女性の生き様に光を当てたミュージカル「エリザベート」では、エリザベートの年代別の心境を紡ぐ、さまざまな楽曲が歌われます。ご自身が役を演じるうえで“核”だと感じているナンバーについて教えてください。

「愛と死の輪舞」が核になると思います。

死というものに最初に直面したときのファーストインプレッションや、(トートとシシィの)2人がどうお互いを感じ合うのかなど、2人の関係の始まりになる曲なので、そこが良くないといけない。そこで今日はどんな人生を歩むのか、というのが全部決まってくるので、感性を研ぎ澄ませて、いろいろなものを吸収しながら発していくナンバーだと感じています。

あとは、1幕ラストの「私だけに(リプライズ)・三重唱」をトートとフランツと歌うところは彼女が皇后として生きていくチャンスを得た部分でもあり、皇后として生きていくという覚悟を決め、“シシィ”というものを心に封印する、大事な場面だと感じています。

粘着性の高かった古川トート 今はシンプルに削ぎ落とされ、芯に厚み

──ライブ配信される博多座の1月31日公演では、古川雄大さんがトート役を演じます。今回のプロダクションではトート役がトリプルキャストで演じられましたが、古川さんが演じるトートの一番の個性はどのようなところに現れていると思いますか?

古川さんはすごくいろいろな挑戦をされていて、開幕直後は、執着というか粘着性の高いトートを感じていました。古川さん自身が本当に楽しまれているというか、表情にもたくさんバリエーションがあって、引力にあらがえなくなるような感覚があります。今はもう少しシンプルに削ぎ落とされつつも、芯に厚みを持たせて演じられているような感じがして、これからもっと自由自在に変化されていくのではないかと思います。

本当にビジュアルも素晴らしいトートなので、負けないように美貌の皇后として、隣に立っていられるようにがんばりたいと思います(笑)。

ミュージカル「エリザベート」2025年公演より、明日海りお扮するエリザベート。(写真提供:東宝演劇部)

ミュージカル「エリザベート」2025年公演より、明日海りお扮するエリザベート。(写真提供:東宝演劇部)

──ミュージカル「エリザベート」ファンでもある明日海さん。今回のプロダクションで、“ライブ配信だからこそ楽しめる”部分を教えてください。

メイクやウィッグ、衣裳に関しても研究したくて、東京公演千穐楽のアーカイブ配信を見ました。やはりそういった細かなところ、役者のこだわりを配信ではより感じていただけると思いますし、劇場ではどうしても遠くからになってしまうそれぞれの表情などをよくご覧になれると思います。私もファンだからこそ思うのですが、「このシーンの〇〇さんのここが好きだからここを観ちゃう」と視点が決まってきてしまいますよね。ライブ配信ではカメラの視点で作品を観るので、何度も観劇してくださっている方でも新たな発見をしていただけるのではないかなと思います。

──博多座大千穐楽公演に向けて、エリザベート役をWキャストで務められてきた望海さんにどのような言葉を贈りたいですか? また、博多座で千穐楽を迎える未来のご自身にメッセージをお願いします。

稽古場からいつも同じ気持ちで歩んできましたが、公演期間を終えてさらに自分の中に自信を携えられて、毎日爽やかに公演しているあやちゃんを見て、カッコいいなと思います。そして今のところお互いに健康に過ごせている私たちは本当にえらいよね!と声かけてあげたいです(笑)。もうすぐ終わりですし、引き続き楽しみましょう!

(自分へ)
寂しい気持ちでいっぱいだと思います。稽古場や幕が開いたときに抱えていた怖さを思えば、「寂しい」と感じられる心境に至れたのは携わってくださっている方々のおかげなのだから感謝しなさいよ、と言いたいです。

プロフィール

明日海りお(アスミリオ)

1985年、静岡県生まれ。2001年に宝塚音楽学校に入学。2003年に89期生として宝塚歌劇団に入団し、月組公演で初舞台を踏む。2014年に花組トップスターに就任。2019年に宝塚歌劇団を退団した。退団後は在団中にも主演を務めたミュージカル「ポーの一族」のほか、近年は「王様と私」「9 to 5」「昭和元禄落語心中」「コレット」などのミュージカル作品に出演。2025年に第50回菊田一夫演劇賞を受賞。