大阪国際文化芸術プロジェクト「姫が愛したダニ小僧」ビジュアル

テンミニ!10分でハマる舞台

後藤ひろひと・紅ゆずるが再タッグ!「姫が愛したダニ小僧」リバイバル上演

変わりゆく大阪、変わらない大阪人の心

PR大阪国際文化芸術プロジェクト「姫が愛したダニ小僧」

大阪国際文化芸術プロジェクト「姫が愛したダニ小僧」が、1月9日から18日まで大阪の梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで上演される。「大阪国際文化芸術プロジェクト」は、「大阪・関西万博」開催時を中心に、国内外からの来阪者に大阪の文化芸術を楽しんでもらうことを目的に、2023年度から開催されている企画。その一環として実施される本公演では、後藤ひろひとが1998年に書き下ろした「姫が愛したダニ小僧」が、後藤自らの演出によりリバイバル上演される。今年2月に大阪で上演された大阪国際文化芸術プロジェクト「FOLKER」に続き、「姫が愛したダニ小僧」では後藤と紅ゆずるが再タッグを組む。本番を約1カ月後に控えた12月中旬、クリエイターと俳優として信頼し合う2人に本作の見どころを聞いた。

取材・/ 興野汐里

夢のような時代が戻ってきた

「姫が愛したダニ小僧」は、大阪球場(大阪スタヂアム)が解体される1998年に同所の“さよならイベント”の一環としてメモリアル上演された野外演劇。大阪の街とファンタジーの世界が交差する“へんてこラブストーリー”が、このたび大阪にゆかりのある俳優を中心にした座組で新たに立ち上げられる。主演を務める紅ゆずる、作・演出を手がける後藤ひろひとに加え、水田航生、松井愛莉、男性ブランコの平井まさあきと浦井のりひろ、山崎真実、桜庭大翔、梅棒の梅澤裕介、大路恵美、腹筋善之介、中村まこと、波岡一喜といった面々がキャストに名を連ねた。

大阪国際文化芸術プロジェクト「姫が愛したダニ小僧」キャラクター相関図© MEG関西版 号外

大阪国際文化芸術プロジェクト「姫が愛したダニ小僧」キャラクター相関図© MEG関西版 号外 [高画質で見る]

介護老人ホームを訪れた夫婦、祐一(水田)とエリ(松井)は、自分がとある国の王の娘“すみれ姫”だと名乗る老婆(紅)に出会う。“すみれ姫”は、若き日に恋に落ちたダニ小僧との再会を夢見て、「自分をホームから出してほしい」と祐一とエリに懇願。老人のたわごとに付き合うつもりで、2人は“すみれ姫”を連れ出す。すると、どれが現実でどれが幻想なのかわからないような、不思議な世界が彼らを出迎えて……。

男A役を演じる後藤ひろひとのイメージビジュアル。

男A役を演じる後藤ひろひとのイメージビジュアル。 [高画質で見る]

今回の上演に向けて、脚本を改訂した部分について尋ねると、後藤は「実は、脚本にあまり手を加えていないんです。というのも『姫が愛したダニ小僧』は、大阪が発展し変わっていったとしても、大阪で暮らす人々の心は変わらない、というテーマで執筆した作品だから。今年『大阪・関西万博』が開催されて、大阪の状況はまたしても大きく変わりましたが、それでも変わらないものがある。1998年に執筆した戯曲でありながら、ジェンダーやルッキズムについてのトピック、自死に関する問題、介護の現場で実際に起こった出来事など、今の世の中に通じる部分があることに自分自身驚きました。また、“お客様いじり”と言いますか、お客様のうちどなたかに我々の共演者になってもらう演出があるのですが、コロナ禍を乗り越えたことにより、脚本に書かれているオリジナルの演出をそのまま表現することができそうで、私はそれがとてもうれしい。少し前の時期はマスクをしなければいけなかったことを考えると、夢のような時代が戻ってきたと感じます」とうれしそうに話す。

一方、演出面では、「今回、初めて一緒に仕事をする俳優が多いので、彼らの得意技が何かを見極めて、それをうまく引き出せたらと思います。公演が終わってから『彼はあんなことができたのか!』と思い残すことがないようにね。だから、常にみんなのことを見ながら稽古をしています」と笑顔で語った。

老婆とお姫様…緩急をつけて“変化”を見せる

「姫が愛したダニ小僧」の物語の中心となる“すみれ姫”(老婆)を演じるのは紅。本作と同じく、後藤が作・演出を手がけ、紅が主演した「FOLKER」では、女囚刑務所を舞台に、更生プログラムとして取り入れられたフォークダンスのコンテストに受刑者が出場する様が描かれた。紅は、周囲になじむことなく、ほかの受刑者たちと衝突する“問題児”の女囚・空那役を演じたことを振り返り、「空那という特殊な役柄を演じたこともあり、『FOLKER』の現場では共演者の皆さんとあえて距離を取っていたところがありました。こう見えて実は私、人見知りなんですけど(笑)、『姫が愛したダニ小僧』では自分から積極的に皆さんの輪に飛び込もうと思っています!」と目標を掲げた。

“すみれ姫”(老婆)役を演じる紅ゆずるのイメージビジュアル。

“すみれ姫”(老婆)役を演じる紅ゆずるのイメージビジュアル。 [高画質で見る]

今回、2度目のタッグとなる後藤の作品について、紅は「『FOLKER』も『姫が愛したダニ小僧』もそうなのですが、切なく悲しい出来事が描かれつつも、笑いの要素が随所にちりばめられていて、最後には観客の皆さんがすべての感情を解放できる瞬間が待っている。それが“大王”(後藤の愛称)の作品の大きな特徴ではないでしょうか。とにかく脚本が素晴らしいので、テキストに沿ってしっかりとお芝居をすれば、きっとうまくいくだろうという信頼感があります」と後藤に視線を送る。

演出家・後藤ひろひとから見た俳優・紅ゆずるの魅力について、後藤は「宝塚歌劇団のトップに上り詰めて、その後、他ジャンルの演劇に果敢に挑戦し続けている、とても頼もしい俳優だなと思います。稽古をする中で自然と良いものが出てくるし、私が好きなコメディのテンポを理解してくれている。君の能力を信じているがゆえに、『FOLKER』のときは(紅に)任せすぎてしまったかもしれないね」と率直な思いを吐露する。すると、紅も「宝塚育ちなものですから、演出家の方が何かをおっしゃってくださるまで待つ、という文化がしみついていて、『こういう場合はお聞きしても良いのかな……?』と探り探りな部分がありました。『姫が愛したダニ小僧』では、大王をはじめ、カンパニーの皆さんと積極的にコミュニケーションを取っていきたいです」と意欲を見せた。

「FOLKER」で演じた空那が、仲間たちとの交流を通じて成長を遂げたように、本作においても、老婆──“すみれ姫”の“変化”が物語のキーになる。今回自身が演じる役どころについて、紅は「老婆を演じるうえで緩急をつけたいと考えていて、老婆は勝ち気でパワフル、負けず嫌いな人物として立ち上げつつ、自身を“すみれ姫”だと思い込んでいるときは、十代後半くらいのお姫様という意識で演じようと思っています。幼いけれども芯が1本通っている、仲間思いなお姫様として、家来たちと一緒に冒険に出かけることを今から楽しみにしています」と抱負を明かした。

「姫が愛したダニ小僧」公式サイト

大阪国際文化芸術プロジェクト「姫が愛したダニ小僧」

開催日程・会場

2026年1月9日(金)〜18日(日)
大阪府 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

スタッフ

作・演出:後藤ひろひと

出演

紅ゆずる / 水田航生 / 松井愛莉 / 平井まさあき(男性ブランコ) / 浦井のりひろ(男性ブランコ) / 山崎真実 / 桜庭大翔 / 梅澤裕介 / 丹下真寿美 / 大路恵美 / 大西ユースケ / 天知翔太 / 中尾多福 / 平松美紅 / 腹筋善之介 / 中村まこと / 後藤ひろひと / 波岡一喜

公演・舞台情報

後藤ひろひと(ゴトウヒロヒト)

1969年、山形県生まれ。劇作・演出家。別名“大王”。1987年、大阪の劇団・遊気舎へ入団し、2代目座長を務める。遊気舎を退団後、1997年にPiperを結成。2001年には、自身が主宰する王立劇場を旗揚げした。関西を中心に、変幻自在なギャグとキテレツなキャラクターを持ち味にしたコメディ作品を多数発表している。代表作に「ガマ王子VSザリガニ魔人」「ダブリンの鐘つきカビ人間」「人間風車」「止まれない12人」など。

紅ゆずる(クレナイユズル)

1982年、大阪府生まれ。2002年、宝塚歌劇団に第88期生として入団、初舞台を踏む。2016年から星組トップスターを務め、2019年に「ミュージカル・フルコース『GOD OF STARS-食聖-』」「スペース・レビュー・ファンタジア『Eclair Brillant(エクレール ブリアン)』」で退団。退団後の主な出演作に、ブロードウェイ・ミュージカル「エニシング・ゴーズ」、「アンタッチャブル・ビューティー ~浪花探偵狂騒曲~」、「詩楽劇『沙羅の光』~源氏物語より~」、「Classic Movie Reading Vol.2『風と共に去りぬ』」など。

この記事の画像(全7件)

関連記事

後藤ひろひとのほかの記事

リンク

このページは株式会社ナターシャのステージナタリー編集部が作成・配信しています。 大阪国際文化芸術プロジェクト「姫が愛したダニ小僧」 / 大阪国際文化芸術プロジェクト「FOLKER」 / 後藤ひろひと / 紅ゆずる の最新情報はリンク先をご覧ください。

ステージナタリーでは演劇・ダンス・ミュージカルなどの舞台芸術のニュースを毎日配信!上演情報や公演レポート、記者会見など舞台に関する幅広い情報をお届けします