次々と新たな作り手が頭角を表す演劇界。数ある劇団の中から、ジャケ買いならぬ“劇団名買い”で観劇に行った経験はないだろうか。チラシやニュース、SNSなどで目にする劇団名は、シンプルなものから不思議な音の響きを持つもの、「どういう意味?」と目を引くものまでさまざまだが、それには名づけ主の希望や願い、さらには演劇的活動戦略が込められているはず。このコラムでは多彩な個性を放つ若手劇団たちの、劇団名の由来に迫る。劇団名が持つ秘密と共に、未来の演劇界を担う彼らの活動の軸を紐解いていく。
39番目に登場するのは、
ほろびて
Q. 劇団名の由来、劇団名に込めた思いを教えてください。
かつて自分(細川洋平)の主宰していた劇団や俳優として所属していた劇団が解散して、5年ほど演劇から離れていた時期がありました。その後、やっぱりもう一度自分で演劇をやろうと考えたときに、「滅びてから、またはじまる」という再生の思いを込めて名前を付けました。演劇もなくなったところからまた立ち上げる作業であり、そう考えると演劇そのものを示しているのでは、と考えたりもしています。また、同時に、「滅びて(ほしい)」と願う言葉でもあり、そういった意味が“やわらかく”包まれていますように、と思っています。
Q. 劇団の一番の特徴は?
作品についての特徴で言えば、ものごとを捉えるパースペクティブの自在さにある気がしていますが、自分で考えているものと周りから見えているものは違っているかも知れません。理解してもらうより、想像してもらう作品を作れていたらいいなと思います。そこには驚きも生まれるはずです。
カンパニーの存在としての特徴は、コアメンバーが劇作と演出を務める細川だけではあるので、毎回対話をたくさん重ねながら稽古を進め、参加する俳優によって作品のテイストが変化していくことだと思います。
Q. 今後の目標や観客に向けたメッセージをお願いします。
2024年2月に「芸劇eyes」として東京芸術劇場シアターイーストで「センの夢見る」という作品を上演します。1945年のオーストリアと2024年の日本が一箇所くっついちゃった、という2月から3月下旬までのお話です。歴史劇や評伝劇とは違い、ある史実を下地にしながらもオリジナルの創作劇として作りました。登場する人々のことをとても観てもらいたいですし、作中にはいろいろな仕掛けも凝らしているので、ぎゅっと詰まったものを見ていただけると思います。
初めての中規模劇場での上演ということもあり、この1年はずっと楽しみに準備をしてきました。ほろびてのような、ある種尖ったカンパニーを招いていただき感謝しています。一筋縄ではいかない作品を上演できることがうれしいです。こんな機会はめったにありません。ぜひ劇場で体験していただきたいと思っています。
この先も活動を続けていきますが、まずは芸劇ではじめましてやお久しぶりですができたらと心から願っています。
プロフィール
劇作・演出家、俳優の細川洋平が主宰する劇団。細川は、早稲田大学演劇倶楽部を経て劇団水性音楽を立ち上げ、俳優として演劇弁当猫ニャーに所属。両劇団が解散したのち、ほろびてを結成した。ほろびてでは、「あるこくはく」で第11回せんがわ劇場演劇コンクール グランプリ、劇作家賞、俳優賞を受賞した。
※初出時、プロフィール部分に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
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ほろびて @_horobite
\カンパニー名の由来が明らかに👀/
ステージナタリーさんの連載にて、
「ほろびて」の由来を細川洋平が回答!
#センの夢見る に向けた意気込みも🔥 https://t.co/IJ9D6jireA