次々と新たな作り手が頭角を表す演劇界。数ある劇団の中から、ジャケ買いならぬ“劇団名買い”で観劇に行った経験はないだろうか。チラシやニュース、SNSなどで目にする劇団名は、シンプルなものから不思議な音の響きを持つもの、「どういう意味?」と目を引くものまでさまざまだが、それには名づけ主の希望や願い、さらには演劇的活動戦略が込められているはず。このコラムでは多彩な個性を放つ若手劇団たちの、劇団名の由来に迫る。劇団名が持つ秘密と共に、未来の演劇界を担う彼らの活動の軸を紐解いていく。
27番目に登場するのは、劇作家、演出家の
ムニ
Q. 劇団名の由来、劇団名に込めた思いを教えてください。
劇団と自ら名乗ったことがありません。演劇カンパニームニと名乗ってきました。
ムニ自体に特に意味はありません。作品を作り、年数も経っていく中で、やりたいことも変容していくだろう、ということで、意味が少なくて、音が良いものにしたいと思って、“ムニ”と名付けました。こんな作品を作るから、こんな名前という感じではなく、意味が少ない名前がいいなと、作品の変容可能性を最大限に生かした名前として“ムニ”です。
明治大学駿河台校舎で、演劇っていっぱいやらなきゃいけないことがあって疲れた、と言いながら、手の届く範囲から始めたいという思いで、友達何人かと集まって稽古をしていたときに名付けました。
ムニって、どんな意味があるんですか、と聞かれますが、意味はありません。と答えています。ムニって唯一無二からですか、と聞かれることもありますが、違います。最近、ムニって、無料のカニの略ですか?と聞かれて、いいですね。と答えました。これからは無料のカニの略です、って言おうかな。
Q. 劇団の一番の特徴は?
今年から、ムニの作家が宮崎玲奈と
そのほかにもクリスマスの企画など、タイトルメンバー(宮崎玲奈、黒澤優美、伊藤拓、黒澤多生、南風盛もえ、藤家矢麻刀、上薗誠、河野遥、中越唯菜)が「演劇の支持体は集まりである」ということに回起し、ただただ楽しく創作を行うような企画も行なっています。
宮崎、黒澤とも、主には、物語のある作品を作ります。同時に、物語とは何かをムニは探っています。そのとき一番興味があったり、面白いと思っていることを作品にしたいと思って創作しているので、作品ごとに選択するスタイルも変わります。強いて言うなら、日本語の特性である自動詞が多いことや隠喩性に着目して、言えない言語をどのように扱うか、言えない言語の特性を生かしたすれ違いの会話、言えない言語で内面を吐き出すような会話にも最近はチャレンジしています。現在は二十代の女性のキャラクターが登場することが多いです。
“集まり”や“どうしてわざわざ上演を行うのか”についてを根本的な問いとしながら活動しています。
Q. 今後の目標や観客に向けたメッセージをお願いします。
劇場という場所は公共的な場であるとともに、人によっては閉鎖的な場だと考えています。特に、性的ジェンダーマイノリティ・性的少数者が登場し、物語に搾取されないタイプの良質な作品はとても少ないと感じます。「ことばにない」(作・演出:宮崎玲奈)は性的少数者のキャラクター、特にレズビアン女性を中心とした4人の女性の物語で、4人の女性が置かれている社会的困難さの状況や人生の選択をできるだけ丁寧に描きたいと上演時間約8時間を掛けました。いつもムニを応援してくださっている方のほかにも、普段は劇場に来ないような方にも観ていただきたい作品です。
作家としての「演劇とは何か」「人間とは何か」に関しての興味関心は尽きません。これからも目の前で起こることと、いかにつながるかをムニは考え続けます。作家としても、団体としても、精進して、皆さんに楽しんでいただけるような作品を作り続けたいと思います。
プロフィール
劇作家・演出家の宮崎玲奈らが作品を上演する演劇カンパニーとして、2017年に活動をスタート。2020年より宮崎企画の活動をスタートさせ、青年団若手自主企画宮崎企画としても活動してきた。これまでの作品に令和元年度 希望の大地の戯曲賞「北海道戯曲賞」最終候補作品「須磨浦旅行譚」、第11回せんがわ劇場演劇コンクール演出家賞受賞作「真昼森を抜ける」など。
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【舞台】『ことばにない』ムニ「劇場という場所は公共的な場であるとともに、人によっては閉鎖的な場だと考えています。特に、性的ジェンダーマイノリティ・性的少数者が登場し、物語に搾取されないタイプの良質な作品はとても少ないと感じます」 [後編11月9日~]
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