「LIVE LEGEND X」は、音楽ライブやそれに関連する消費体験をクロスさせて新たな生活価値を提供する事業としてオン・ザ・ライン、キョードー⼤阪、TSP太陽が発足させた新プロジェクト。その第1弾として、シティポップのレジェンド2人がクロスするツーマンライブが企画された。ともに近似したシーンで40年以上にわたるキャリアを積み重ねてきた稲垣と杉山だけに、共演経験は多々あるものの、2人だけでジョイントライブを行うのは今回が初となる。そんな貴重な機会とあって、チケットは瞬く間にソールドアウト。会場には長年の熱心なファンから、シティポップリバイバル愛好家とおぼしき若年層まで、幅広い年代の観客が詰めかけた。
杉山清貴
定刻を迎え、まずステージにはバンドマスターを務める坂本昌之(Key)をはじめ、渡嘉敷祐一(Dr)、松原秀樹(B)、古川望(G)、大島俊一(Key, Sax)、近藤淳也(Sax, Per)、渡部沙智子(Cho)が現れて持ち場につく。バンドがおもむろに都会的でムーディなアンサンブルを奏で始めると、その軽快かつスタイリッシュなビートに乗せ、カジュアルジャケット姿の杉山がご機嫌な様子で舞台上へ。盛大な拍手とリズミカルな手拍子で迎えられた彼は、溌剌かつ朗々としたクリアなマイルドボイスを「ビルの影を蒼く映した」と、アーバンに響かせ始める。オープニングナンバーに選ばれたのは、この時期にぴったりな杉山の代表的ヒットナンバー「最後のHoly Night」だ。
早くも総立ちとなった客席を楽しそうに見渡しながら1曲を歌い終えた杉山は、「本日はようこそいらっしゃいました! よくもまあ、こんな忙しい時期に……」と、さっそく持ち前のサービス精神でほがらかなトークを繰り出す。「本日はちょっとお得なライブです。いや、かなりお得です」と自信満々に断言すると、「普通こういうコラボというのは1アーティスト3、4曲というところですが、今日はお互いにフルステージやりますので」という言葉で客席の喝采を呼んだ。そして「僕の腕の中で」や「ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER」といったキラーチューンから、「Nightmare」「Too good to be true」のような近年の楽曲まで、幅広い選曲でステージを展開。「年末にこんなにたくさん歌うと思わなかったです(笑)」などと軽快なMCを挟みながらも、衰え知らずの強靱なハイトーンボーカルでオーディエンスを魅了し続けた。
2026年にはソロデビュー40周年の節目を迎える杉山。記念企画などについては「まだ何も考えていません(笑)」と笑わせつつ、ラストナンバーとして39年前にリリースされたソロデビュー曲「さよならのオーシャン」を披露した。なお、この日のバックバンドに名を連ねるベーシストの松原は、本楽曲のオリジナルレコーディングメンバー。そんな豆知識も披露しつつ「それでは、次は稲垣潤一さんの登場になります!」と誇らしげに告げた杉山は、深々と頭を下げてから満足げな面持ちでステージをあとにした。
稲垣潤一
杉山がソロデビュー曲で手渡したバトンを、今度は稲垣が自身のデビュー曲で受け取る。パリッとしたグレーのスリーピースを身にまとった稲垣が杉山と入れ替わりでステージに姿を現すと、さわやかなシンセリフと軽快なエイトビートがメランコリックなメロディラインを牽引するミディアムチューン「雨のリグレット」で後半戦の幕を開けた。バンドメンバーの入れ替えは行われず、同一の顔ぶれが引き続き稲垣のバックも務める。控えめながら勘どころを心得たスキルフルかつエレガントな演奏で、稲垣の72歳という年齢を感じさせないイノセントなクリスタルボイスを大いに盛り立てた。
杉山と同様、聴衆を夢見心地にいざなう華麗なボーカル表現とは対照的な、漫談のような抱腹絶倒トークを随所にちりばめて緩急自在のステージを繰り広げる稲垣。杉山との過去の共演についてユーモアたっぷりに振り返ったほか、「夏のクラクション」のボーカル録りに1週間を要したという思い出について「普通はこういう話って、最初は2、3日だったものがだんだん盛られていくものなんですけど」と笑わせたのち、当時のディレクターに確認する機会があり改めて確信を得たことを淡々とした口ぶりで報告する。さらにこの日が“歌い納め”だという彼は、2026年へ向けた意気込みを「来年も働いて働いて働いて働いて、働いてまいります」とバズワードを引用して宣言するなど、ひっきりなしにオーディエンスを笑いの渦へと引きずり込んだ。
しかしひとたび歌い出せば、その唯一無二のシグネチャーボイスによってたちまち会場の空気を一変させる。稲垣は「ブルージン・ピエロ」や「オーシャン・ブルー」といったヒットナンバーを惜しげなく織り交ぜつつ、シックかつ洗練された楽曲群でみずみずしくもパワフルなボーカル表現を次々に届け、ステージ背面の壁に浮かびあがるビル群のシルエットとも相まって三軒茶屋の夜をアーバンに彩っていく。そしてラストソングには、自らの名が世に知れ渡るきっかけとなった1曲と位置づける「ドラマティック・レイン」をチョイス。クリシェするマイナーコードと特徴的な跳躍メロディ、そして稲垣のハリのあるハイトーンボーカルが聴く者の心をダイレクトに揺さぶる、文字どおりドラマチックな筒美京平ナンバーによって、会場のボルテージを最高潮にまで引き上げた。
稲垣潤一×杉山清貴
熱烈なアンコールに応え、稲垣と杉山が2人そろってにこやかな表情でステージへ帰還すると、会場は割れんばかりの喝采に包まれた。2人はリラックスした親密なムードをまといながら、さっそく軽妙な掛け合いトークを開始。互いの共通点について話が及ぶと、必然的に2人の楽曲を数多く手がけてきた作曲家・林哲司の話題に。杉山によると、林の生み出すメロディは「すごく覚えやすくて、でも歌うと難しい」のだという。その一方で、「日本人の琴線に触れるようなメロディ」だと高評価を下したかと思いきや、すかさず「今日来てるんで、ちょっとヨイショしておこうかと」と冗談めかす稲垣。さらにこの日、楽屋に用意された食事がハヤシライスであったという偶然の符合についても明かされた。
また、今回の共演に際して稲垣が「1曲ぐらい一緒に何か歌おうよ」と持ちかけたところ、杉山が即座に快諾したという逸話も。稲垣の口から「『クリスマスキャロルの頃には』を一緒に歌っていただけるということで……」との言葉が漏れるや否や、ホールに万雷の拍手と驚喜の歓声がこだまする。するとバンドがおもむろにきらびやかなデジタルシンセサウンドのイントロを奏で始め、日本ポップス史に燦然と輝く代表的なクリスマスソングの1つであるアーバンなマイナーチューンが、2種類のレジェンドボイスをクロスさせるスタイルで華々しく披露された。
これにより、1日遅れのクリスマスパーティは「最後のHoly Night」で幕を開け、「クリスマスキャロルの頃には」で締めくくられることとなった。曲中では2人による歌い分けはもちろん、甘美に溶け合う2声ハーモニーも存分に披露されたほか、2コーラス目のサビ前に挟まれる1小節分のタメを待たずに杉山が早めに歌い出してしまう“カラオケあるある”のようなひと幕も。杉山本人は痛恨の表情で平謝りだったものの、レアなコラボレーションならではのライブ感あふれるハプニングが聴衆へのスペシャルなクリスマスプレゼントとなった。
セットリスト
auFG presents「LIVE LEGEND X 2025 ~ライブ レジェンド クロス 2025~ JUNICHI INAGAKI 稲垣潤⼀ / KIYOTAKA SUGIYAMA 杉⼭清貴」2025年12月26日 昭和⼥⼦⼤学⼈⾒記念講堂
杉山清貴
01. 最後のHoly Night
02. 僕の腕の中で
03. ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER
04. 風のLONELY WAY
05. Flow of Time
06. Nightmare
07. Too good to be true
08. 渚のすべて(MORNING MOON, RISING SUN)
09. さよならのオーシャン
稲垣潤一
01. 雨のリグレット
02. 哀しみのディスタンス
03. 夏のクラクション
04. ブルージン・ピエロ
05. 君は知らない
06. UP TO YOU
07. オーシャン・ブルー
08. Memory Flickers
09. ドラマティック・レイン
稲垣潤一&杉山清貴
01. クリスマスキャロルの頃には
フル @f61326
【ライブレポート】稲垣潤一×杉山清貴、レジェンド2人の歌声が“クロス”!「クリスマスキャロルの頃には」でハーモニーを披露(写真16枚) https://t.co/PfJoEIHCyj