5月にYOSHIKI(Dr, Piano)が人工椎間板置換の手術を受け、ドラム演奏がしばらくは難しいという判断から急遽アコースティック編成で実施された本ツアー。X JAPANは7月11、12日に大阪・大阪城ホール公演を行ったあと、13~17日に横浜アリーナで4DAYS公演を敢行した。最終公演ではドキュメンタリー映画「We Are X」の60分バージョンが上映されたのち、ステージの前に設置されたスクリーンが上がり、「Forever Love」が1曲目に届けられた。
マイクを手にするも、第一声を上げる前から感極まった表情を見せたこの日のYOSHIKI。彼は声を震わせながら「奇跡の夜にようこそ。本来であればここにドラムセットがあるはずだったんだけど、今日はピアノでがんばらせてもらいます」と話し始める。「何が奇跡ってさ、今日オンタイムで始まったんだよ。そういう『奇跡の夜』。ねえToshl」と発言すると、Toshl(Vo)は「(今回のツアーを)がんばってきたけどさ、奇跡ってそういう意味だったんだ」と返して会場の笑いを誘う。YOSHIKIは「待ってても奇跡は起こらない。なら奇跡を起こそうよ。オンタイムで始まったし、みんなと一緒に“奇跡の時間”を過ごしましょう」と呼びかけた。
「TEARS」ではToshlがステージサイドに伸びた花道を歩いて観客のすぐ近くで歌唱。続く「Kiss the Sky」ではSUGIZO(G, Violin)がバイオリンでメロディを奏で、それにあわせて場内いっぱいにファンのシンガロングが響きわたった。その後、HEATH(B)が花道でツアーグッズであるドラムスティック型のペンライトをファンから拝借してボトルネック奏法を披露するなど、アグレッシブなベースソロで観客を魅了。入れ替わるように姿を見せたPATA(G)はペンタトニックスケールを軸にしたブルージィなリードギターや、「Stab Me In The Back」「Celebration」のリフを盛り込んだソロで骨太なギターサウンドを鳴らした。
打ち込みのリズムトラックが流れ始めると同時にToshlがステージに戻り、「お前らの大和魂見せてみろよ! HIDEちゃんにも見せてやろうぜ!」とシャウト。PATA、HEATHと共にHIDE(G)作曲の「DRAIN」を投下し、激しいパフォーマンスで観客を熱くさせた。続いてスポットライトに照らされたSUGIZOが、LUNA SEA「Providence」の1フレーズを織り交ぜた即興演奏を聴かせたあと、しばし目を閉じて祈りを捧げるようなポーズを取ると場内がピンク色へと染まっていく。そしてhideの楽曲「ピンク スパイダー」の旋律をたおやかに奏で、最後には天を仰いで投げキッスを飛ばした。
アコギを抱えたToshl、SUGIZO、PATAと、ボトムを支えるHEATHという編成で「Silent Jealousy」が演奏されたあと、青いバラを持ったYOSHIKIが登場。薔薇を客席に投げる際に少しつらそうな表情を見せていたが、ピアノの前に座って鍵盤上で軽やかに指を走らせていく。YOSHIKI作曲の「Miracle」ではクラシックコンサート「YOSHIKI CLASSICAL」でもおなじみのシンガー、アシュリー・ナイトが迫力ある歌声を響かせた。MCでは「せっかくオンタイムで始まったのに今Toshl待ちだよ」と発言したYOSHIKIに向かって、Toshlが突進。驚いた様子でYOSHIKIが「昔の復讐?」と声を上げると、Toshlが「いや、つまずいただけなんだけど今の(発言への)復讐だ」と返すなど2人で仲睦まじげに会話を弾ませる。さらにYOSHIKIは「普段はリハーサル中に酒飲んでるPATAがさ、今回は『もう1回やっていい?』って。PATAは“弾き逃げ”っていう言葉があるくらいでレコーディングでも夕方になるとお酒飲んじゃうのに」と今回のツアーに臨んだPATAの姿勢を明かした。
「La Venus」「HERO」の2曲を経て、リクエストコーナーでは「X」が披露され、場内にはピアノ伴奏に乗せて観客がXジャンプをする光景が広がった。HIDEの逝去後すぐに制作されたというナンバー「Without you」では過去の映像がスクリーンに流れ、ファンはTAIJI(B)やHIDEの名を叫んでいた。その後、HIDEがアルペジオを奏でる映像で始まった「紅」では、HIDEの演奏からバトンタッチする形でYOSHIKIが伴奏を担当した。
アンコールではYOSHIKIを除いたメンバー4人でX時代の名バラード「Say Anything」が演奏されたほか、PATAがX時代のアルバム「Jealousy」に収録されているインスト曲「White Wind From Mr.Martin ~Pata's Nap~」を披露した。MCでメンバーそれぞれが感謝を伝える中、SUGIZOは「七転び八起きで今回X JAPANがかなりピンチの状況だったと思う。でもみんなのおかげで乗り越えられたし、このスタイルなら70歳までできるね」とコメント。「WEEK END」のアコースティックバージョンでは、HEATHがギターフレーズを弾くといったアレンジも盛り込まれた。
ToshlとYOSHIKIは「CRUCIFY MY LOVE」をショートバージョンで披露。この楽曲をレコーディングした当時、Toshlは大変な思いをしたことを振り返りながらも「その頃があったから、今があるんだよ」と話していた。その後YOSHIKIは「今日は親愛なるTAIJIが旅立った日です。ロックっていう言葉が合うアーティストだったね」と故人を偲び、Toshlと共にTAIJI作曲のナンバー「Voiceless Screaming」を捧げた。「Longing」ではツアー最終日の終盤ということもあり、Toshlが歌い出しで声を枯らしていたが、その様子に気付いたファンは彼を応援するかのように大合唱。Toshlは涙をこらえるようにステージの中央に佇み、合唱に身を任せていた。そしてメンバーは万感の思いを胸にラストナンバー「ENDLESS RAIN」を届けて全演目を終えた。
ライブ中に“X”には無限の可能性という意味があることを説き、その“X”という意味に「今回のツアーから何があってもあきらめない。何度倒れてもまた這い上がってくるという意味が加わった」と話していたYOSHIKI。カーテンコールで彼は「早くみんなの前にドラマーとしても戻ってこれるようにがんばります。『奇跡の夜』が実現できたこと、本当に感謝しています。本当にありがとう」と深く頭を下げた。そして「一緒に頑張っていくぞ! 愛してるぜ!」と気持ちを伝え、メンバーと共にステージをあとにした。
X JAPAN「X JAPAN WORLD TOUR 2017 WE ARE X Acoustic Special Miracle ~奇跡の夜~ 6DAYS」
2017年7月16日 横浜アリーナ セットリスト
01. Forever Love
02. TEARS
03. Kiss the Sky
04. HEATH Bass Solo
05. PATA Guitar Solo
06. DRAIN
07. SUGIZO Violin Solo
08. Silent Jealousy
09. YOSHIKI Piano Solo
10. Miracle
11. La Venus
12. HERO
13. Without you
14. X
15. 紅
16. ART OF LIFE
<アンコール>
17. Say Anything
18. White Wind From Mr.Martin ~Pata's Nap~
19. WEEK END
<アンコール2>
SE. PROLOGUE(~WORLD ANTHEM)
20. I.V.
21. CRUCIFY MY LOVE
22. Voiceless Screaming
23. Longing
24. ENDLESS RAIN
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