映画「
イベントの冒頭で永積は「またこうやって監督とお話をする機会がもらえてうれしいです」と挨拶し、是枝は「音楽を担当していただいた方とゆっくり話すことって、実際に作業をしているときはともかく、あまりないですよね」と返す。そして是枝は「いろいろ話したいことがあるんですけど、せっかくたくさんお客さんに来ていただいてるので質疑応答ができれば」と観客に呼びかけた。
するとすぐさま手が挙がり、「監督はどんな子供だったんですか?」「永積さんにとっての母の味は?」「日常生活で一番大切にされていることはなんですか?」など次々と質問が寄せられた。「親と似てしまった自分の嫌な部分は?」という質問に永積は「僕は父親に似てるって言われるんですけど、実家に帰ったときとかにおふくろから『ソファとかでダラっとしているときの汚い感じが似てる』と言われて。父親を見るとTシャツとかがよれよれで、『これに似てるのか……』と思うと胸が苦しくなりますね」と苦笑いし、是枝は「最近、歳のせいか朝起きたときの枕の臭いとかがね……。あれ、どっかで嗅いだことあるぞこれって。父親の臭いなんですよね」と口にした。
また永積と是枝は映画の劇伴制作にまつわるエピソードをトーク。永積は「(音楽を付ける際に)説明をしてはいけないんじゃないかと思ってました」と語り、「映像を観たあとにいろんなフレーズの断片を作って、それを『このシーンに合うかな、あのシーンに合うかな』というふうにはめ込んでいったんです。その結果、説明ではなくて映像に寄り添うような音楽にできたんじゃないかと思います」と述べる。この発言を受けて是枝は、クライマックスのシーンの音楽について触れ、「僕は『悲しい感じの音楽で』とお願いしたんだけど、永積さんは楽しげな曲を書いてきた。実際に音楽が付いたそのシーンを観てみたら、自分の映画なのに感動しちゃって。あの音楽が、登場人物の思い出を悲しいものから楽しいものにしてくれたんです」とコメントした。
最後に永積は「今回の仕事で自分がどういう音楽をやりたかったのかというのがわかった気がして、すごいうれしかったです。何気なく流れる時間を切り取るのが好きなのですが、今回は映画を観ながら自分のことを反芻していて。そういうメッセージの在り方ってあってもいいんだなとわかったんです」と「海よりもまだ深く」に関わることができた喜びを語る。是枝は「あまり明快なメッセージのない映画を作りたいといつも思ってるんですけど、今回の作品はいつかなくなってしまうものへの愛情というものが中心にあります」と映画に込めた思いを明かした。
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音楽ナタリー @natalie_mu
ハナレグミ&是枝裕和「海よりもまだ深く」劇伴裏話を明かす https://t.co/dlOJsbBUwp https://t.co/w87Yvw6N68