Bimi「【人】 / INORI」インタビュー|27歳を過ぎボーナスタイム突入、新EPで提示するオリエンタルポップス

Bimiの新たなEP「【人】 / INORI」がリリースされた。

廣野凌大として俳優活動をする一方、アーティストとしても楽曲を発表してきたBimi。昨年4月、彼は自身の27歳の節目に「生まれ変わること」をテーマに掲げたメジャー1stフルアルバム「R」をリリースし、生前葬をイメージしたワンマンライブ「Bimi Live Galley #04 -Dear 27th」に臨んだ。

あれから1年、音楽ナタリーでは「【人】 / INORI」を完成させたBimiにインタビュー。オリエンタルポップスを掲げた本作の手応えや、「Bimi Live Galley #04 -Dear 27th」を経て起こった心境の変化について語ってもらった。

取材・文 / 小松香里撮影 / YOSHIHITO KOBA

攻撃的ではなくなった

──Bimiさんは、墓石や墓標と表現していたメジャー1stフルアルバム「R」を引っさげ、27歳の誕生日にあたる昨年4月28日にご自身の“生前葬”となるライブ「Bimi Live Galley #04 -Dear 27th-」を行いました。改めて「Dear 27th」はどんなステージになったと思いますか?

過去の清算がだいぶできたライブでしたね。本当はそこで自分のちっぽけな命が終わる予定だったんですが、今はボーナスタイムに突入した感覚です。

──“27クラブ”(才能のあるアーティストや俳優が27歳で命を落とすケースが多いことに由来する言葉)の呪縛から解き放たれたことで、マインドにどんな変化がありましたか?

攻撃的じゃなくなりましたね。トガリを内に隠して、周りの人間と手を取り合う気持ちが出てきたというか。逆に見ていてどうですか?

──お会いした瞬間から柔らかい雰囲気を感じました。新しいEPの曲にもその変化が出てますよね。

そうですね。「Dear 27th」は初期衝動のまま突き進んできた自分の葬式で、いろんな人の協力でライブを作り上げることができました。「自分1人の力じゃ何もできない」とはたくさんの人が言ってることだけど、それを痛感しました。例えばの話ですけど、これまでのBimiの曲を好きな人が、身内や仲間に「自分が好きなアーティストはこれなんです」と聴かせたときに、「こういう攻撃的で過激な音楽が好きなんだ」という印象を持たれると思うんですが、「【人】 / INORI」は皆さんに受け入れられやすい作品に仕上がってると思うんです。これまでの楽曲は「どうして周りはわかってくれないんだ」という気持ちが強すぎて……それはそれでいいことだと思うんですけど、それゆえにいろんな人に聴いてもらうことに対して自分の中で抵抗がありました。でも今回のEPはみんなに聴いてほしいし、楽しんでもらいたいですね。それで、ライブに来てくれたら超うれしいです。

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エキセントリックな部分はどうしても出ちゃう

──「自分らしくあれ」というメッセージはこれまでも歌ってきたことですが、1曲目の「ガラポン」からサウンドのキャッチーさも相まって前向きさが伝わってきました。

これまでの自分らしさはリスナーと一緒に探しているものだったけど、「ガラポン」では俺の中の答えを提示できました。その答えを探してもがいていたのが今までの自分の楽曲だとすれば、「【人】 / INORI」には答えを導き出したうえで、また葛藤しながら新しい自分と出会っていくイメージがあります。

──EP全体を通してキャッチーなサウンドであることは意識したんでしょうか?

意識しました。27thまでの楽曲は「すごく前衛的だね」と言われるようなものにしたいと思ってました。過去を否定するわけではなく、今まで好きなことをさせてもらってきたからこそ、今度は他人と交わって自分の好きなことを探すフェーズに入りました。自分の好きな表現でどう他者に影響を与えて、どんなライブを作っていくかというアーティストとしてのアイデンティティを持てたのが今回のEPです。

Bimi

──でもBimiさんならではのエッジやトゲはしっかり残っていますよね。

「トガろうとしなくてもトガってんだから無理に鋭利にならなくていいじゃん。ほかの長所も伸ばそうよ」と自分に言い聞かせながら楽曲を作りました。エキセントリックな部分は歌詞にどうしても出ちゃうし、今までのサウンドはトガりをブーストするようなものが多かったけど、今回はかき消すトライをしてみました。

──そのことによってBimiさんの強みが伝わりやすくなってる気がしますが、以前だったら一番作り得なかった曲はどれだと思いますか?

「ガラポン」と「人」ですかね。

──2曲とも三味線がフィーチャーされた、和のテイストが強い曲ですよね。

はい。「人」のリリックに「合わせる手と手 一人じゃつまらんわ」とありますが、以前だったら「一人がいい」か「わかってくれるやつがいればいい」という意味で「一人じゃつまんない」と書いていたと思うんです。今はどんなヤツが来ても、面白おかしく転がせる。そういう自信が付いたんでしょうね。

──なぜ自信が付いたんでしょう?

あるときにネガティブなほうに引っ張られそうになったところをいろんな人が戻してくれて。「引っ張られちゃう要因ってなんなんだろう」と改めて考えたときに、自分の中で理想と現実が乖離しているからだと気付いたんです。自分のことを天才だと思い込んで、フレックスして自分を見せびらかしたいという気持ちがありました。でもそのくせに、ライブをやっても曲を作っても、他者からの評価にビクビクしていましたが、「お前は死んじゃダメだ」と27thで突き付けられたおかげで、自分に自信が持てるようになりました。音楽を続けてきたからこそ、高校時代や20代前半に抱えていた寂しさがなくなったんだと思えたんです。そこから自分の考えをアップデートして、内に向けていたアンテナを少し外に向けられるようになって、結果いい意味で柔らかくなりました。

Bimi
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毒を吐き続けていたら別のものが吐きたくなった

──「人」は情報があふれる現代において、周りに左右されず、どう自分らしくたくましく生きるかというメッセージが歌われています。以前のBimiさんの曲に比べて、世間に対する揶揄や皮肉が減っている気がしましたが、いかがでしょうか?

そうですよね。あまりディスってないですよね。「exorcist -味変-」(「【人】 / INORI」ELR Store限定盤のみ収録)とかひどいですもんね。

──めちゃくちゃヘイトを吐き出してますよね。

俺はあの曲は「ヘドロ」って呼んでます(笑)。今までは底なしで毒を吐けると思っていたんですが、毒を吐き続けると別のものが吐きたくなる。マーライオンのようにきれいな水を吐きたくなることもあるっていうか。成功しないといくら毒を吐いても見向きもしてもらえないじゃないですか。もっと毒を溜め込んで、いずれ面白いことが起こせればなって。周りの人に支えてもらいながら、上に行ったところでまた毒を吐こうとは思っています。

──作品ごとの恒例となっているリミックスならぬ“味変”の曲を「exorcist」にしたのはどうしてだったんですか?

昔の自分に対する冷笑ですね。「光や音がやけに沁みる」で始まるヴァースを追加したんですが、これは昔の俺には書けない。逆に言えば、今の俺には昔の俺が書いていた歌詞は書けないので、面白いなと思いました。あと、この曲はシンプルにラップが難しいので、今の俺がやったらどうなるのかなという気持ちもありましたね。

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──「人」は三味線が入った和テイストのラップ曲ですが、中盤以降でオートチューンがかかってトラップっぽくなり、その後ダブルのラップになるという凝った展開ですよね。

不思議な構成で耳に残るというか。フックって、ワンヴァース蹴ってツーヴァース目で蹴ってラスト、アドフックとかの構成になることが多いですけど、フックが最後に2回出てくるだけという変わった構成にしました。Aメロ、Bメロ、Cメロ、ヴァース、フックみたいなポップスの定石を壊して、いろいろ切り貼りをしたのでカオスな感じになりました。歌詞はスクランブル交差点のイメージです。いろんな人種がクロスしてる中で「じゃあ俺はこう生きるわ」と主張してる感じ。サウンドともマッチしてよかったです。

──「ガラポン」も和のテイストが強いハイブリッドなサウンドです。

今回のEPは勝手に“オリエンタルポップス”というのをテーマに掲げています。いつか世界のクラブを回ったときのことを視野に入れて、クールジャパンとして日本の文化を取り入れつつ、変態性のある音楽を作ろうと思ったんです。

──「ガラポン」というのは商店街の福引とかの抽選機のことですが、ギャンブル好きのBimiさんらしいモチーフですね。

そうなんです。歌詞を読んでいただくとわかるんですが、自分の嗜好を悲観するより武器として使いつつ、「諦めるなよ」とリスナーを応援する曲です。「ただただがんばろう」と歌ってるキラキラソングじゃなくて、近所の兄ちゃんぐらいの距離感で「俺もどうがんばるべきか探ってるけど、お前はどう?」という感覚で曲を作れてよかったです。「俺もしんどいけど、お前もしんどいっしょ」みたいな。あまり気取りたくはないので。