GEZANが満員の日本武道館で示した想像力の向こう側、8000人の心に灯した炎

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4人組ロックバンド・GEZANが、3月14日に東京・日本武道館で単独公演「独炎」を開催した。

GEZAN 日本武道館 単独公演 「独炎」の様子。(撮影:水谷太郎)

GEZAN 日本武道館 単独公演 「独炎」の様子。(撮影:水谷太郎)

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この先、あなた以外立ち入り禁止

2009年に大阪で結成されたGEZAN。インディペンデントながらフリーフェス「全感覚祭」などを通して音楽シーン全体を盛り上げ、反戦デモの主催といった社会的なアクションも取り続けてきた気概あふれるロックバンドだ。1年前の3月に武道館公演の開催を発表した彼らは、そこから47都道府県ツアー「集炎」を行い、各地で出会ったさまざまな人々を巻き込んで、その「火」を大きくしていく。ワンマン直前には100時間リレーと題した耐久企画を実施するとともに、ニューアルバム「I KNOW HOW NOW」をリリース。こうしたD.I.Y.な取り組みにより、チケットはついにソールドアウトし、約8000人を武道館に集結させた。

当日の日本武道館の様子。(撮影:水谷太郎)

当日の日本武道館の様子。(撮影:水谷太郎) [高画質で見る]

当日、武道館の入口に掲げられたのは公演タイトルではなく「この先、あなた以外立ち入り禁止」という看板。これは「関係者以外立ち入り禁止」のもじりで、ここに足を運んだ全員が関係者というメッセージだろう。さまざまな世代の“あなた”が看板の前で写真を撮って、その先へ進む。その多くは全身のどこかに赤いアイテムを取り入れており、武道館の内部は赤く染まっていった。

自転車に乗って現れた4人

客席が約8000人の“あなた”で埋め尽くされた18:38、スクリーンに映し出されたスプレーが「GEZAN」と描くと、描かれた文字がバチバチと燃え上がる。歓声が飛び交う中、聴こえてきたのは澄んだバグパイプの音色。観客が辺りを見回すと、アリーナ後方から自転車と荷台に乗ったGEZANの4人が現れ、客席の間を通ってステージにたどり着いた。

客席の間を通ってステージに向かうGEZAN。(撮影:水谷太郎)

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赤いライトが灯った舞台の上に立った4人。マヒトゥ・ザ・ピーポー(Vo, G)の「退屈をぶちこわああああしにきたあ!」という宣誓から、新曲「HAPPY HIPPIE」でライブの口火を切る。「焦るな 急ぐな 走るな いらだつな 勝つな やり返すな でも降参するな」と力強く繰り返すマヒトたちの演奏のテンポは徐々に上がっていき、爆音が武道館に響きわたる。両脇のスクリーンには顔を歪ませながら歌うマヒトの顔が大写しになり、イーグルタカ(G)は「裸の付き合いしようぜ!」と客席に笑いかける。あのGEZANが本当に武道館に立っている。その興奮で客席は燃え上がった。

GEZAN(撮影:水谷太郎)

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トライバルなダンスと破壊的衝動の炸裂

「歌いたいやつは歌え! 手挙げたいやつは手挙げる! 静かにしてたいやつは静かにしてる! 自由!」というマヒトの呼びかけからGEZANは「blue hour」を演奏。歌詞を変えて「きょうも4人で武道館にたってる」と歌うマヒトにファンは一層沸き上がり、続く「Memoria」では激しいビートとセンチメンタルなメロディが高揚感をもたらす。演奏明けにイーグルは「裸の付き合いしようぜ!」と繰り返し、石原ロスカル(Dr)も「心の話しようぜ!」とシャウト。メンバーも武道館に立った興奮ではち切れんばかりの様子だ。

GEZAN 日本武道館 単独公演 「独炎」の様子。(撮影:水谷太郎)

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「武道館は上裸になっただけで音が止まるから」とイーグルを笑顔でたしなめたマヒトが「今日は赤色警報が出ています。そんなときはどうするか? 踊るんです」と告げると、トライバルなダンスチューン「EXTACY」へ。サンプラーでループされる叫び声、PAの内田直之によるダブ処理、背後に映し出される中山晃子の「Alive Painting」が呪術的なムードを醸し出す。

さらに「誅犬」を続けて、観客をドープなトリップ感に浸らせたGEZANは、「赤曜日」「School Of Fuck」「NO GOD」「もう俺らは我慢できない」「MAN 麻疹」「共振」「AGEHA」を怒涛の勢いで畳みかける “狂メドレー”でそれまでの空気を一気に破壊。GEZANの攻撃性が一気にむき出しとなり、疾走感あふれる映像も相まって、異様なカタルシスがもたらされた。

轟音とストレートなメッセージ

「Soul Material」で一気に音数を減らして観客を惹き付けたGEZANが、再び荒れ狂う嵐のような音で武道館を満たすと、スクリーンには「NO WAR」の文字が。轟音とともに、そのストレートなメッセージが強烈に観客に刻み込まれる。続けざまに歌われたのは反差別・反戦の思いが込められた「東京」だ。

マヒトゥ・ザ・ピーポー(Vo, G)(撮影:水谷太郎)

マヒトゥ・ザ・ピーポー(Vo, G)(撮影:水谷太郎) [高画質で見る]

演奏後「みんなに武道館来てほしかったんですよ」と切り出したマヒトは、「歌を聴いてほしかったから。ネット上で垂れ流される吐いて捨てるような言葉と違って、自分たちが生み出した音楽なんで聴いてほしかったんです」と率直な思いを吐露。「何1つあきらめなくていいし、欲しいものは本当にちゃんと求めて要求したらいいんじゃないかなって思ってます。それが今日の景色だと思う」と語った彼は、常識やルールにとらわれずに、それぞれの中にある可能性を放つことを観客に強く求めた。

過去と未来が交差するステージ

穏やかなアコースティックナンバー「I」に続けて披露されたドリーミーな「i ai」では、想像力が生み出す可能性として、「未来では戦争は終わりました」というメッセージが映し出される。さらに「さよなら、すべての戦争、使い古された直感。さよなら、忘れていい過去、忘れたほうがいい過去。さよなら、選ばなかった可能性、錆びついた直感、すべての叶わなかった夢」というマヒトの言葉から、再びバグパイプの音色が響きわたると「BEST DAY EVER」へ。盟友の青葉市子がゲストボーカルとして迎えられ、“ムーブメントアーティスト”Rikubouzが幻想的にステージに舞い踊る。

GEZAN 日本武道館 単独公演 「独炎」の様子。(撮影:水谷太郎)

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その静謐な空気をマヒトの絶叫がぶち壊すと「忘炎」に突入し、爆炎が何本も噴出。再び熱狂が渦を巻く中、2021年に加入した最年少メンバーのヤクモア(B)は「ロックバンドやってます!」と胸を張り、ロスカルは「人間って燃えるんすよね。あんたらの前で僕らは燃えてるんすわ! 燃えとるで武道館!」と雄叫びを上げる。またイーグルは「集炎」ツアーの追加公演として、7月28日に彼らのルーツである大阪・難波ベアーズでワンマンライブを開催することを発表。7月に閉店する難波ベアーズに華を添える粋な計らいだ。

「beat」を歌うGEZAN。(撮影:水谷太郎)

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満員の客席を見渡して「なんか……普通やな。悪い意味じゃないんすよ。全員知ってるわ」と笑ったマヒトは、あっという間に過ぎていく時間も曲がすべて記憶してくれているという実感を語り、「潔く未来に行こうと思います」と宣言。そんな語りから始まった「beat」では、メンバー4人が向き合って歌い、スクリーンにはGEZANの結成当初から現在に至るまでの映像が映し出される。その中には2016年に脱退したシャーク安江、2020年末に脱退したカルロス尾崎の姿もあった。

戦争なんてダサいことやってる暇ないんだよ

壮大な「Amrita」を経てライブはエンディングへ向かう。「当飛行船はまもなく着陸体制に入ります」というナレーションから「TRANSIT」が演奏され、マヒトは「ここにいる8000人がもう俺らの関係者なんで、これからもこのクソな時代を一緒に生きましょう。間違い探しとかじゃなくて、わかりにくさに耐えながら、生きてるってことに集中しよう」と呼びかける。

GEZAN 日本武道館 単独公演 「独炎」の様子。(撮影:水谷太郎)

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集まった8000人それぞれがバラバラな人間であることを語ったマヒトは、「でも周り見渡してみな。最高到達点に向けて一緒にいれたろ。別にミサイルなんか撃ち合わなくたって一緒にいれたろ。俺たちは戦争なんてダサいことやってる暇、はなっからないんだよ」と叫ぶ。8000通りの人生に集中して進んでいこうという呼びかけから彼が歌ったのは、GEZANの代表曲の1つ「DNA」。「今オレがクソむかついてるのは 最低な政治家その類もそうだけど 誰かを傷つけないと、自分でいられないキミ ぼくらは幸せになってもいいんだよ」という優しいメッセージをエネルギッシュな演奏とともに届けた。

怒涛のマイクリレーで予想外のゲストが

約2時間の演奏を経て、ライブはアンコールへ。再びステージに現れたイーグルが「ありがとう! 行くでえ!」と声を上げると、ノイジーで鋭いギターと重厚なリズムが絡み合う。マイクリレー曲「BODY ODD」だ。トップバッターのマヒトのシャウトに続いて、鎮座DOPENESS、ハマジ(KK manga)、Racco(IdolPunch)がそれぞれ荒々しいパフォーマンスを繰り広げる。

観客を特に驚かせたのは向井秀徳ZAZEN BOYS)。「ボウルいっぱいのポテトサラダが食いてえ」と連呼して熱狂を巻き起こす。そこに畳みかけるようにミドリ(the hatch)、永山愛樹(TURTLE ISLAND)、下津光史(踊ってばかりの国)が続き、最後に登場したのは、なんと元メンバーのシャーク安江とカルロス尾崎。すべての感情が一気に吹き出すようなカオティックな興奮で客席は爆発的に湧き上がった。

「BODY ODD」で登場した元メンバー2人。(撮影:水谷太郎)

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「BODY ODD」で登場した元メンバー2人。(撮影:水谷太郎)

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俺たちの名前知ってる?

「END ROLL」演奏後、今までで一番うれしかった日として、イーグルに声をかけて初めてスタジオに入った日、一番悲しかった日として、カルロスとシャークが抜けた日を振り返ったマヒト。その後ヤクモアとロスカルが入った日も今までで一番うれしい日になったと語り、「今日もこんな日になるんやなと思って。今までで一番うれしいです。本当にありがとう」と観客に感謝を伝える。

マヒトゥ・ザ・ピーポー(Vo, G)(撮影:水谷太郎)

マヒトゥ・ザ・ピーポー(Vo, G)(撮影:水谷太郎) [高画質で見る]

「やっぱ続けてたらホンマ何があるかわからんすね。自分のちっぽけな想像力では、たどり着けないような未来がやっぱりあって。だから続けてください」と語りかけたマヒトは、「ところで! 俺たち4人でなんて言うか知ってる?」と唐突に質問。大声で応えるファンに「もうちょい欲しい」と求めつつ、「クセになったらどうしよう。今までコール&レスポンス散々ディスってきたのに」と戸惑う様子を見せたマヒトは「変わって何が悪いねん! 間違えたときに謝れないような空気作るのやめろ! そしたら挑戦できなくなるから!」と1人で怒り出す。

「間違えたら謝って、注意されて考え直して、そんなもんやろ。お互い様や。GEZANのことも簡単に信じんなよ? 集中しよう、お互い」と言葉を続けたマヒトは、やや脱線したMCを仕切り直して、もう一度「名前知ってる?」と呼びかける。そして観客から自分たちの名前を受け取った彼は「そうそう、そうそう! 俺たちはGEZAN。お前らの想像力をブチ上げるバンド!」と名乗りを上げ、「Absolutely Imagination」へ。2時間半の演奏を締めくくるラストナンバーだ。4人は音を鳴らす喜びをぶつけ合うように激しい演奏を繰り広げ、曲の終わりにマヒトは「まーた始まっちゃった」と呟いた。

退場するGEZAN。(撮影:水谷太郎)

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こうしてライブを締めくくった4人は、再び自転車と荷台に乗って退場。圧倒され尽くした8000人の観客は、道すがら感動を語り合い、その中にいた数多くのアーティストもGEZANから受けた刺激をSNSに投稿した。インディペントなオルタナティブロックバンドが、想像力の向こう側の可能性を示し、音楽シーン全体に火をつけた歴史的な一夜だった。

コラム

GEZAN「beat」ミュージックビデオ

セットリスト

GEZAN 日本武道館 単独公演 「独炎」

01. HAPPY HIPPIE
02. blue hour
03. Memoria
04. EXTACY
05. 誅犬
06. DUB ZONE
07. 狂メドレー
(赤曜日 / School Of Fuck / NO GOD / もう俺らは我慢できない / MAN 麻疹 / 共振 / AGEHA)
08. Soul Material
09. Fight War, Not Wars
10. 東京
11. I
12. i ai
13. BEST DAY EVER
14. 忘炎
15. beat
16. Amrita
17. TRANSIT
18. DNA
<アンコール>
19. BODY ODD
20. END ROLL
21. Absolutely Imagination

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読者の反応

yoshitomo nara / 奈良美智 @michinara3

ほんとそれ!
みんなに自慢したい。俺、彼と知り合いなんだよ!小樽で一緒に立ち飲みしたこともある!初めて会った時は、カレー屋さんだと思われたけど 😂 https://t.co/mJOXFga9yp

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