今回の公演はASA-CHANG&巡礼が手がけた映画「合葬」のサウンドトラックアルバムのリリースを記念したもの。ユニット6年ぶりにして、ASA-CHANG(Per, Key, Euphonium)、後関好宏(Flute, Sax, Vo /
定刻から10分ほど遅れてステージに登場した3人は、ASA-CHANGの繰り出すヘビーなビートと後関のサックス、須原のバイオリンが奏でる妖しげなユニゾンのメロディに、不穏な言葉の数々が重なる9分超えの大曲「影の無いヒト」でライブをスタート。さらに延々とループされるカヒミ カリィのポエトリーリーディングのリズムにASA-CHANGがスティック状のチャイムを合わせる「慶応四年四月十一日」、オモチャのようなミニシンセとフルート、バイオリン、藤井貞和の現代詩を引用した詞を歌う原田郁子(クラムボン)のサンプリングボイスが絡み合う「つぎねぷと言ってみた」を続けて、オーディエンスが畳にあぐらをかくシチュエーションとは裏腹にシリアスな空気を作り上げる。
そのムードを引き継ぐかのようにゲストプレイヤー福原徹秋(笛)による、「合葬」サントラ収録の「月」の演奏が終わると、ASA-CHANGと須原がエレクトリックパーカッションとギターで、同じくサントラ収録の「はてしなく」の冒頭部分をセッション。その後メンバーがステージをあとにすると、「はてしなく」の続きのフレーズのシーケンスが流れ出し、ダンサー・菅尾なぎさがハードなコンテンポラリーダンスを披露した。
2人のゲストパートが終了し、後関、須原とともにステージに戻ったASA-CHANGはMCタイムをスタートさせるが、そのノリはなんともコミカルなものに。「いろんなアーティストのサポートをしていますが、自分の曲をやるとなるとなぜこんなに緊張するのか」と苦笑いを浮かべ、行きつけの歯科医師を見付けては慌て、白いワイシャツにタイトな黒いパンツというスタイリングに言及しては小学生男子みたいだと自らツッコみ、フロアの笑いを誘っていた。
しかし、プレイになればまたも一転。吃音の少女を描いた押見修造のマンガ「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」に着想を得た「まほう」では、作中の志乃ちゃんよろしくチョップされた女性のサンプリングボイスと後関のボーカルで切なくも感動的なムードを現出してみせる。また同じく押見原作のアニメ「惡の華」のエンディングテーマ「花 ~a last flower~」の冒頭では劇中の音声をサンプリング。主人公の春日高男役の声優・植田慎一郎の不吉な絶叫を晴れ豆じゅうに響かせてから、「花が咲イタヨ 花が 花が咲イタヨ」とこの曲をプレイした。
「光はイラネ水ヲ下さイ」と「花」を終わらせた3人は万雷の拍手の中、フロアへと降り、サントラ「合奏」のラストナンバー「エンディング」の歌詞カードをオーディエンスに配り始める。「映画ではある意味宗教的な曲がエンドロールとともに流れるんですけど、その曲を皆さんと一緒に唱えて今日の別れとしたいと思います」と、“謡い”のようなこの曲でオーディエンスと声を合わせて、ライブ本編を締めくくった。
鳴り止まない拍手に応えてステージに姿を現したのは後関と須原。2人が「合奏」収録のメロディアスな1曲「納屋」でアンコールのステージをスタートさせる。そしてASA-CHANGが合流すると、3人は2014年のライブイベント「アウフヘーベン!vol.2」で共演した映像作家・勅使河原一雅のプロフィールにインスパイアされて作ったという「告白」をプレイ。「幼い頃から飲み屋を連れ回された」「当時はホステスにモテた」「学校は登校拒否をしていた」というポエトリーリーディングが流れる中、アブストラクトなプレイと須原のボーカルを重ねて、改めて万雷の拍手を集めてみせた。
なおASA-CHANGは終演後、来春にアルバム(タイトル未定)をリリースすることを発表。これにオーディエンスはさらなる拍手を送っていた。
ASA-CHANG&巡礼「弔いの音を祀る夜」
2015年11月27日 晴れたら空に豆まいて セットリスト
01. 影の無いヒト
02. 慶応四年四月十一日
03. つぎねぷと言ってみた
04. 月
05. はてしなく
06. まほう
07. 花 ~a last flower~
08. エンディング
<アンコール>
09. 納屋
10. 告白
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ASA-CHANG&巡礼、新旧楽曲を深厚に響かせた6年ぶりワンマン - 音楽ナタリー https://t.co/7faKvqBoi2
いやあ、やっとアルバムでるのか。楽しみ!