盛り下がりまくりの6時間!鬱フェス大成功
2014年9月25日 20:52
25 音楽ナタリー編集部
アーバンギャルドの主催によるイベント「鬱フェス 2014」が9月23日に東京・TSUTAYA O-EASTで開催された。
このイベントは夏フェスにおいてアウェイなアーティストをラインナップし、インドア志向のリスナーたちの前でライブを繰り広げるという、新しい音楽フェスのあり方を提案するイベント。みんなで一緒に鬱になって盛り下がろうという企画趣旨のため、アーティストがステージから観客に向けて「盛り下がってるかい!」と声をかけたりと、ほかのイベントとは一線を画した雰囲気のイベントになった。
開会宣言を経てメインステージ「地獄」にトップバッターとして登場したのは、アーバンギャルドのサポートキーボーディスト・大久保敬がケイ伯爵として参加するザ・キャプテンズ。振りつけ講座などを盛り込んだエンタテインメント性の高いステージで1組目にして早くも観客はヒートアップし、傷彦(Vo, G)がフロアに向けて愛の言葉をささやくたびに会場中から黄色い声援が湧き上がった。この日彼らは最新シングル「失神ロック」や、11月に発売予定の新曲「メロメロ」などを披露。客席に降りた傷彦が観客に愛の告白をして失神するおなじみのくだりでは、映画「アナと雪の女王」の主題歌「Let It Go」をテッド(B)が透き通った声で歌う一幕も。メンバー5人それぞれが気合の入ったパフォーマンスで、会場中の人々の心をぐっと掴んでいた。
サブステージ「天国」の1発目を務めたのは、“歌って踊るシンガーソングライター”情熱マリ子。2人のバックダンサーを引き連れて登場した彼女は、アニメ「魔女っ子メグちゃん」オープニングテーマのカバーからライブをスタートさせた。その後も彼女は、ソウルフルなダンスチューンからしっとりしたバラードまで妖艶に踊りながら熱唱。どうしてもこのイベントの物販に間に合わせたくて、開演前に自ら千葉のプレス工場にCDを取りに行ったという新曲「弱気な太陽」を最後に熱く歌い上げ、その名の通りの情熱的なステージを終えた。
続いてメインステージに登場したチャラン・ポ・ランタンは、まず「空中ブランコ乗りのマリー」を披露。サポートドラムを加えた3人で、それまでの流れから打って変わって緊張感に満ちたステージを繰り広げる。その後も彼女たちはアコーディオンとドラムだけのシンプルな編成とは思えないほどの、カラフルで表情豊かな演奏を展開。もも(Vo)のエキセントリックな振る舞いに驚く観客に向けて、彼女は「アーバンギャルドのお客さん、ビックリしてる? でもジャンルは違うけど、松永(天馬)さんもビックリするようなことしてるでしょ?」と言って笑いを取っていた。ももは「スーダラ節」では酒瓶を片手にふらつきながらステージ中を歩きまわり、「愛の讃歌」ではステージを降りて客席を練り歩きながら熱唱。独特な楽曲の世界観と型破りなパフォーマンスで、観客に強烈なインパクトを残した。
サブステージ2組目のサカモト教授は、まず「スーパーマリオブラザーズ3」の音楽を効果音も含めてキーボードの手弾きで再現。音楽が変わるたびに観客から大歓声が湧き上がる。その後は、最前列の客にファミコンのカセットをいくつか差し出して、その中から選んでもらったゲームの曲を弾くという企画も。「初心者が『トランスフォーマー コンボイの謎』をやったら」というネタや、ほぼ効果音しかない「麻雀」の再現などで会場を笑いの渦に巻き込んだ。そして彼は最後に、発売されたばかりの自身のアルバム「REBUILD」に収録されたオリジナル曲「僕らの世界にダンスを」を、ビデオクリップに合わせて演奏した。
松本明人(Vo, G)の「本日一番普通なバンドです」という自己紹介とともに、メインステージでは真空ホロウのライブがスタート。彼らは激しいギターサウンドと叩きつけるようなリズムに乗せて、内側に溜まった激情を吐き出すように歌う。MCでは村田智史(B)が「今日のために気合入れて髪を切ったら風邪引いたし、裁縫したら指に針刺したし、今日は電車に乗り遅れた。これが鬱フェスの呪いか」と茨城なまりのトークで笑いを誘う。ラストの「アナフィラキシーショック」では松本が「コール&レスポンスをしてみたいんですが」と提案し、「咳止めシロップ」「おかわり頂戴」というフレーズでオーディエンスとの掛け合いを繰り広げた。
続いてメインステージには、8月に1stアルバム「戦慄のグリムロッカーズ」をリリースしたROLLY & GlimRockersが姿を現す。バンドの中心人物であるROLLYは「51歳の新人バンドでございます」と自己紹介。彼がNHK Eテレ「大!天才てれびくん」のために制作した「アナコンダ・ラヴ」のセルフカバーなどをグラマラスにパフォーマンスした。なおROLLY & GlimRockersはメインボーカルが固定されておらず、「グリムシティ」ではギターの松本タカヒロ、「戦慄のグリム団」ではドラムの小畑ポンプ、「ミドナイトチン」ではベースの永井ルイが歌声を披露。さらに終盤にはROLLYがももいろクローバーZに提供した楽曲「僕等のセンチュリー」のJellyfish風なセルフカバーも飛び出した。
その後サブステージには、ピアノ弾き語りの女性シンガーソングライター、夜子が登場。まさに「鬱フェス」にピッタリと言えそうな、女性の情念を描いたような彼女の歌に観客はじっと聴き入っていた。歌う姿は凛々しさを感じさせる彼女だったが、MCでは人が変わったような雰囲気に。挙動不審な佇まいでたどたどしく話す、彼女の面白トークに会場では笑いが起こっていた。
筋肉少女帯のライブは1曲目「イワンのばか」から一気に大盛り上がり。観客は力いっぱい腕を振り上げ、ヘッドバンギングをしている。大槻ケンヂ(Vo)は「鬱フェス、いいね! 健康的な夏フェスと違って開放感がない。昔のハードコアパンクのギグを思い出すよ!」と大喜び。さらに彼らは「日本印度化計画」「踊るダメ人間」とキラーチューンを惜しみなく連発して会場のボルテージを上げていく。大槻は直前のステージでROLLYがももクロのセルフカバーをしていたことに触れて「我々も、ももクロちゃんの『労働讃歌』をやろうかと思ったんですけど、鬱フェスで『労働讃歌』ってちょっと違うなと思って」とコメント。「『労働讃歌』の真逆にある曲」として、友達がいない人々に捧ぐべく「蜘蛛の糸」を熱唱した。橘高文彦(G)と本城聡章(G)はステージ上を激しく動き回りながらテクニカルなギタープレイを繰り出していく。そして最後に「釈迦」が披露され、代表曲オンリーの終始ハイテンションなステージは幕を下ろした。
照明の落ちた客席が真っ赤なサイリウムで染まり、サブステージのトリを飾る上坂すみれが登場。「七つの海よりキミの海」が流れだすと、待ちわびたファンの全力のコールが会場に響き渡る。歌い終えた彼女は「出番が遅い人って、こんなに胃がムカムカするなんて知りませんでした……。私、緊張すると吐くから、大正漢方胃腸薬を飲んできました。憧れの人たちとご一緒できて死にそうです……」と動揺している様子を見せる。その後、彼女は最前エリアの観客にペットボトルの水を撒き、すみれ色のサイリウムに囲まれながら「すみれコード」を熱唱した。
そしていよいよこの日の主役、アーバンギャルドのライブが始まった。松永天馬は銀ラメの入った白スーツ、浜崎容子は白無垢のような衣装で登場。1曲目「さくらメメント」がスタートすると、客席では無数の赤旗が揺れる。浜崎は2曲目「自撮入門」からは白い衣装を脱ぎ、透明なピンク色のセーラー服のような衣装に。「戦争を知りたい子どもたち」ではスペシャルゲストとして大槻ケンヂが参加し、曲中で松永と激論を交わしていた。またMCでは、10月4日をもってバンドを脱退する鍵山喬一(Dr)が「10年後くらいにまた一緒にどこかで音を出せたらと思います」とメンバーへの思いを語っていた。
アーバンギャルドはこの日のステージで、「アーバンギャルドのクリスマス」と題したライブを12月に東京と大阪で行うことを発表した。大阪の会場はumeda AKASOで、東京は彼らにとって初のホール会場となる日本橋三井ホール。浜崎はこのイベントについて「さみしい皆さんのためにクリスマスの予定を入れてやったんですよ」と観客に説明した。アンコールではアーバンギャルドのほかこの日の出演者たちがステージに集まり、大人数で一緒に「ももいろクロニクル」をパフォーマンス。観客も巻き込んで「君の病気は治らない だけど僕らは生きてく」と合唱し、長丁場の「鬱フェス」は幕を下ろした。
アーバンギャルドのクリスマス(大阪編)~前衛都市に雪が降る~
2014年12月22日(月)大阪府 umeda AKASO
アーバンギャルドのクリスマス(東京編)~精神戦場のメリークリスマス~
2014年12月25日(木)東京都 日本橋三井ホール
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