カラノア特集|初のドラマタイアップで注目度急上昇、ネオンテトラのようにきらめく新作へのこだわり語る

カラノアの新作EP「ネオンテトラ」が配信リリースされた。

カラノアは2020年11月に結成され、現在は雄大(Vo, G)、樹(B)、かずき(Dr)の3人で活動しているバンド。7月よりテレ東系で放送中の連続ドラマ「雨上がりの僕らについて」にオープニングテーマ「aquarium」を提供し、注目を浴びている。「雨上がりの僕らについて」はらくたしょうこによる同名BLマンガを原作としたドラマで、池田匡志が演じる主人公・奏振一郎と、堀夏喜(FANTASTICS)が演じるもう1人の主人公・真城洸輔の不器用ながらも心温まる恋模様が描かれる。

今回のEP「ネオンテトラ」には「aquarium」のほか、3人体制で初めてリリースされた楽曲「MIREMIRE」など全5曲が収録されている。新作のリリースを記念し、音楽ナタリーではメンバー3人にインタビュー。曲作りのこだわりやそれぞれの音楽やバンドに対する思い、収録曲の制作エピソードなど、幅広い話題について語ってもらった。

取材・文 / 天野史彬撮影 / 梁瀬玉実
ヘアメイク / シゲヤマミク

雄大の曲はメンバーもワクワクできる

──カラノアはカテゴライズが難しいバンドだと思うんです。作品を経るごとにさまざまな要素が混じり合いながら音楽性が広がっているので、いわゆる「邦ロック」という枠組みに入れて語ると違和感がある。もし「カラノアはどんな音楽をやっているバンドなんですか?」と問われたら、自分たちとしてはどう答えますか?

雄大(Vo, G) 僕がずっと掲げているのは「なんでも屋さん」みたいなバンドですね。ポケモンで言うとメタモンみたいな(笑)。「そっちもやっちゃうんだ?」と言われるくらい、壁をなくしたいという気持ちが、1つの芯としてあります。

──その芯はバンドを結成した当初からありましたか?

雄大 最初からずっとありました。活動を続けていく中で、やりたかったことがちょっとずつ形にできるようになってきた感じです。

──最近はバンドサウンドと打ち込みによるトラックが徐々に混ざり合うようになっていますけど、そういった変化も、やりたかったことが徐々に具現化されている結果と言えますか?

雄大 そうですね。ようやくできるようになってきた感じで。まだまだできるようになりたいことはたくさんあります。

雄大(Vo, G)

雄大(Vo, G)

──カラノアの曲作りはどのように進んでいくんですか?

雄大 基本的には、僕がデモを作ってメンバーに投げて、各々でアレンジしてもらうパターンが一番多いです。デモの段階でだいたいドラムとベースも入れてあるんですけど、そのうえでメンバーから返ってきたものを取り入れながら、レコーディングに向かっていく感じですね。アレンジを2人に相談するのもすごく楽しいんですよね。2人とも、僕が「こういう感じにしたい」と言った通りのことができちゃう技術を持っているし。

──曲を聴いていても、雄大さんの作曲には固定観念があまりないんだろうなと感じるんですけど、かずきさんと樹さんから見て、雄大さんはソングライターとしてどんな人ですか?

かずき(Dr) こだわるタイプだなと思いますね。音色1つとってもこだわり抜いて選んでいるんだろうなと思う。ただ、それなのに自分の機材とかに関しては無頓着なんですよ。そこはちょっと不思議で。ベースの音とかはあんなにこだわるのに。

樹(B) 言われてみればそうだわ(笑)。僕から見ると雄大の曲は「そんな発想、どこから持ってきたの?」と思うことが多いです。「こんな曲できたよ」って持ってくるんですけど、いつも「そのアイデアはいつ生まれたの?」と思う(笑)。それでこっちもワクワクするんですよね。

──最初に雄大さんが言った「メタモンのような音楽」というのは、かずきさんと樹さんも共感しながら作っているんですね。

 そうですね。同じことばかりやっていても飽きちゃうし。

雄大 3人に共通して飽き性っていうのがあるよね。無理やり守備範囲を広げていくのも楽しい(笑)。

かずき 基本的に雄大が作る曲はどんな曲が出てきても「好きだな」となるし、自分が今までやったことのないようなジャンルの曲が雄大から急に来ても、やってみると意外とできたりして。その気持ちよさもありますね。

雄大 そうだね、新しいジャンルを自分たちに「ねじ込んだ!」っていう瞬間(笑)。それがハマったときが気持ちいいんだよな。

カラノア。左からかずき(Dr)、雄大(Vo, G)、樹(B)。

カラノア。左からかずき(Dr)、雄大(Vo, G)、樹(B)。

「aquarium」は難しいからこそ楽しい曲

──では、新作EP「ネオンテトラ」で特に「ねじ込んだな」と感じる曲を挙げるとすると?

雄大 それは意外と3人それぞれ違う可能性もありますね。僕は「やさしいね」かなあ……。

──「やさしいね」は、日常に溶け込んでいくようなポケットサイズの素朴さと、アリーナやスタジアムで響き渡る光景も想像できるような壮大さが同居しているような楽曲だなと感じました。

雄大 アリーナやスタジアムで鳴らしたときのことはめちゃくちゃ想像しますね。パソコンの前で曲を作るときも「この曲、めっちゃデカいステージでやったらこんな感じだろうな」とか想像したり。同時に「やさしいね」は、日常に馴染むものにもしたくて。朝起きて聴いてもいいし、通勤通学で聴いてもいいし、夜のお散歩にもピッタリだし。そういう1人ひとりの日常の中にワクワク感が届けられたらと思って書いていました。

──樹さんとかずきさんはどうですか?

 自分のアイデアをねじ込んだので言うと、僕は「ice」かな。全体的に音数が少ない分、ベースがドンッと出ている部分があると思う。

雄大 「ice」は素晴らしいね。

かずき 僕は「aquarium」ですね。

雄大 「aquarium」は今までやってこなかった王道ポップスで、こだわりがすごかったね。

かずき そう、「aquarium」は難しいからこそ、こだわると楽しくて。レコーディングのときに何回も録り直したんですけど、聴き返すと「最初のやつがいいじゃん」となったり(笑)、そういう試行錯誤が面白いんですよね。

──雄大さんは、手持ちのものから何かを作り出すのが好きなんですかね。

雄大 創作はめちゃくちゃ好きですし、パソコンの前に座って曲を作っているときが一番楽しいので、確かにそういう部分はあるのかもしれないです。

──雄大さんにとっての創作の芽生えって、振り返るとどういうものなんですか?

雄大 小さい頃は物語を作るのが好きだったんです。ゼロから何かを生み出すのが好きで。ちょっとずつアイデアが積み重なって、完成していく。あの感じがたまらなく好きでした。それがいつの間にか曲作りになっていましたね。音楽に限らずなんですけど、自分のイメージするものを、そのまま“見えるもの”にするのって、普通に過ごしていたらなかなかできないことだと思うんですよ。脳みその中にあるものをアウトプットして、それが形になる。その事象自体が僕にとって音楽作りの魅力なんです。

曲作りで一番こだわるのはベースとドラム

──今回のEPを聴いて、僕はまるで絵画を見ているような感覚になりました。油絵みたいに遠目で見ると美しいグラデーションを感じるけど、近くで見ると、絵の具の質感が生々しく感じられるような。改めて、カラノアの音楽の豊かさを感じさせる作品だなと思ったんですけど、3人それぞれ、自分の音楽を作る思考に影響を与えられてきたものを挙げるとすると、どんなものが思い浮かびますか? 音楽だけじゃなくて、ほかのカルチャーとか、ご自身の原体験的なものでもいいです。

 僕は好きなベーシストがいて。School Food Punishmentというバンドに在籍していた山崎英明さんという方なんですけど、その方のインタビューを読んだとき「リズムだけじゃなくて、曲によって感じた彩りを入れていくことを大事にしている」とお話しされていて。実際、山崎さんがベースを弾いている曲を聴くと、それを感じるんですよね。僕も、ただリズムが鳴っているだけじゃなくて、風景とか感覚的なものを曲に入れられたら、と思っていますね。

かずき 僕の場合は、音楽を続けている理由としてはコンプレックスがあって。小さい頃はいじめられっ子だったし、「これが得意」と言えるものもなかった。だからこそ「負けらんないな」とか「絶対に見返してやる!」という気持ちが芽生えた部分はあると思います。ドラマーとして影響を受けた人もいっぱいいます。特に河村“カースケ”智康さんが好きで、河村さんが叩いている椎名林檎さんの曲を聴いて、音色やタイム感を参考にしていますね。レコーディングのたびに比較してしまって、「自分はまだまだだな」と思うんですけど、それで「もっとがんばるぞ!」という気持ちにもなるんですよね。

かずき(Dr)

かずき(Dr)

雄大 僕は、音楽で言えばRADWIMPSがずっと好きなんですが、音楽を始めた理由はRADWIMPSじゃなくて。僕には兄ちゃんが2人いるんですけど、上の兄ちゃんがドラムをやっていて、練習を見に行ったりしていました。で、下の兄ちゃんもドラムを始めたんですけど、下の兄ちゃんはその後、弾き語りを始めて。下の兄ちゃんが弾き語りをやっているのを見て、音楽をより身近に感じるようになったんです。弾き語りならドラムよりも気軽に音楽を始めることができるし、僕も影響を受けて音楽を始めました。今、曲を作っていくうえでのインスピレーションは、音楽よりも映画やマンガのようなエンタメから受けることのほうが多かったりします。

──どんな映画やマンガがお好きなんですか?

雄大 SFやアクションがとても好きで。僕自身、夢見がちというか、理想を追いかけるところがあるので(笑)。「嘘だろ?」みたいな世界観の作品が好きなんですよね。

──特に好きな映画を挙げるとすると?

雄大 めっちゃ悩むな……(笑)。ぱっと思いつくのは、「インターステラー」かな。もともとクリストファー・ノーラン監督が好きで。宇宙も好きなので、宇宙を題材にされると参っちゃうんですよね(笑)。

──なるほど(笑)。もう1つ今のお話で伺うと、カラノアの音楽は聴いていてリズムが心地いいし、リズムセクションが際立って聞こえてくる楽曲が多いと思うんです。そうした楽曲が生まれるのは、原体験にドラムがある、というのも大きいんですかね?

雄大 それはあると思います。僕、ベースとドラムが好きすぎるんですよ(笑)。たぶん、曲を作る中で一番こだわるのがベースとドラムだと思う。そのくらいリズムはトラックの心臓だと思っているし、そこに命を懸けているところがあって。それは最初に兄がドラムを叩く姿を見てきたのが大きいと思います。それと僕、小学生の頃は1日中動画を見ながらボイスパーカッションの練習をしていて、街で一番ボイパがうまい人になったこともあるんですよ。ちっちゃい街ですけど(笑)。小学生の頃は和太鼓をやっていて。小さい頃から、リズムと過ごしてきた時間が長いんですよね。