2025年1月7日に現体制を終了したMAD MEDiCiNE(マッドメディシン)を引き継ぐ形で、同月27日に活動を開始したMADMED(マドメド)。サウンド、歌詞、楽曲からビジュアルに至るまで、ダークファンタジーに彩られた世界観を徹底的に構築する彼女たちは、心の闇、病みを抱えた若者の代弁者として幅広く支持されている。
音楽ナタリー初登場となる本特集では、MADMED始動から現在までの道のりや、現在開催中の初の7大都市単独ツアー「劇毒ケミカルトリップ」のことなどをメンバーに大いに語ってもらった。なおこの特集では、今年1月にメンバーの那月邪夢がオリジナルの振袖を製作したことをきっかけに、石川成俊による現代着物ブランド「iroca」とのコラボレーションが実現した。狂おしく“鬱くしい”MADMEDの世界を、文字で、写真で、たっぷり堪能してほしい。
取材・文 / 冬将軍撮影 / YOSHIHITO KOBA
コーディネイト&着付 / じゅんこ着付 / ちさと
那月邪夢
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浴衣
テンタクルズ・ブラック(モチーフ:タコ、触手)帯
dropping blood(邪夢コラボモデル)自己紹介
紅色担当、MADMEDの魔王です。ツノ生やして肩で風切ってます。チャームポイントは紅い“邪眼”と表情管理。あと手の可動域が広いっ!
猿馬虎
おなかぺこ
甘噛ミ妖メ
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浴衣
リリー(モチーフ:カノコユリ)帯
ヒョウモン自己紹介
紫色担当、甘噛ミ妖メです。お寺や神社、スピ活好きです。チャームポイントは、「圧倒的スタイル by 虎」「顔の小ささが二次元 by ぺこ」……だそうです(笑)。
架空使てんる
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浴衣
カウンター(モチーフ:デジタルカウンターとトケイソウ)帯
red lips自己紹介
青色担当、架空使てんるです。ドラゴンボール大好き、パイナップル大好き、お肉大好き、ブロッコリーは大っ嫌い。「ブルーハワイみたいな声してる by ぺこ」
深ゐ沼
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浴衣
ミズクラゲ black mint(モチーフ:ミズクラゲ)帯
jellyfish neon自己紹介
緑色担当、深ゐ沼です。チャームポイントは変な顔? いや、変な考えを持ってます。しょんぼりしょんぼり~。
世の中かわいいだけじゃダメ
──MADMEDを知らない人から「どういうグループですか?」と聞かれたらなんと説明しますか?
那月邪夢 「狂おしいほど、依存して」というコンセプトで、デジタル×ゴシックなサウンドに乗せてメンヘラな重たい歌詞を届けています。みんなに寄り添えるような歌、共感してもらえるような歌を歌っているグループです。
深ゐ沼 その通りっ!
──実際にファンの方に依存されていますか?
邪夢 されてると思います! 邪夢は前身のMAD MEDiCiNEというグループから数えて3年活動してますが、ずっと推してくれている人もいるので、そういう意味でも依存されていると思います。
猿馬虎 逆にこちらも依存してるところもあって……。
一同 あるある~。
天噛ミ妖メ 共依存。
虎 だからお客さんの影響を受けて、こちらも「ぴえん」となったりする。依存してるからこその関係。
架空使てんる 曲がね、依存しがち。曲のファンもいるし。
おなかぺこ みんな同じ思想をお持ちだよね。
邪夢 MADMEDの曲が好きな時点でメンヘラだから!
虎 失礼だな!
一同 アハハハハ!
──そういうところを含めて、ほかのアイドルにはないMADMEDならではの魅力はなんだと思いますか?
ぺこ 世界観!
邪夢 いい意味で難しいよね。曲の展開やテンポ感も。最近ミュージックビデオを公開した「毒葬」もほかのアイドルにはない世界観だと思うし。
てんる ほかのアイドルさんが「アンパンマン」だとしたら、MADMEDは昼ドラ?
ぺこ 昼ドラはヤバいよ~。
邪夢 アニメで例えるなら「(新世紀)エヴァンゲリオン」みたいな。
てんる そうそう、「進撃(の巨人)」とか、考察しなきゃいけないタイプ。
虎 キラキラではないし、ロックでもない、どこにも属してない。
妖メ MADMEDというジャンルです。
──世の中的にアイドルの流行は「わたかわ(私、かわいい)」だと思うんですが、MADMEDは完全に真逆の「やみ(闇、病み)かわ」へ行っていますね。
てんる でも、最近はヴィラン(ヴィラネス)も流行ってるし。
沼 MADMEDはきれいごとを歌ってないからね。
虎 世の中かわいいだけじゃ、ダメなんスよ。
一同 ダメッ!
海外ファンの反応は「キャァァー!!」
──MADMEDは若い子や女性ファンが多いですよね。中国やタイなど、海外公演も頻繁に行っていますが、向こうでもファン層は同じですか?
妖メ 日本とそんなに変わらないよね。
虎 女の子多かったよね。レスしようものなら「キャァァー!!」って黄色い声が。
ぺこ SEが鳴った瞬間、悲鳴が起こる。
沼 「イヤァァァァァー!!」って。
邪夢 なんというか、「大スターが来ました!」みたいな雰囲気(笑)。日本でもそうなりたいですね。来てくれる子たちは髪の毛を派手に染めたり、独自の世界観を持ってたりする子が多かったな。
妖メ 日本の地雷カルチャーが好きなんだろうなっていう子たちが多かった。爪とかカラコンの色をメンバーカラーに合わせてくれたり。
虎 邪夢のドッペルゲンガーが世界中、本当にたくさんいる。
邪夢 アハハハ。
──自分はMADMEDのようなダークな世界観を持ったグループを「地雷系アイドルロック」なんて呼んだりしていますけど、ここ数年でシーンができあがってきているじゃないですか。そうした中でも最近は邪夢さんみたいなアイドル、MADMEDに似たビジュアルのグループもすごく増えたと思います。
邪夢 わかります。
沼 真似されるほどいいものを持っている。
妖メ インフルエンサーってことだよ。
邪夢 これ(赤黒のツートンヘア)を初めてやったのは自分だと思っているので。今まで周りでは見たことなかった。
沼 (自分の頭を指しながら)これもこれも!
邪夢 スイカヘアね(笑)。
──邪夢さんはご自身の魔力で髪を染めているんですよね。メンバーカラーの色髪を流行らせたのはMAD MEDiCiNEだったと思います。
邪夢 確かに! MAD MEDiCiNEが始動した頃はほかにいなかったですね。
虎 今もグループに何人いるかくらいでしょう。こんなにも青!紫!なんてわかりやすいグループ、そういないっしょ!
──そんなビジュアル面でMADMEDの世界観を構築したものの1つがMVですよね。先ほど「毒葬」の話も出ましたが、このMVはグロテスクな描写も多い。MVを出すたびにそのへんがエスカレートしていますよね。
一同 アハハハハハ!
ぺこ 「まじかるはっぴえんど」のMVとは違うグロさ。あれは殺人だったけど、今回はホラー。普通に観て怖かった……。
てんる でも、今回は切ない感じもあるよね。きれいさもあるし。
ぺこ その組み合わせがよかったよね。人間の自分とゾンビで毒にまみれてる自分、その2つを照らし合わせる感じがすごくよかった。
虎 MADMEDのMVは全部、メリーバッドエンドな気がします。端から見たらバッドエンドなんだけど、一部にとってはハッピーエンド。「完全犯罪※420」も「まじかる(はっぴえんど)」も、「毒葬」も……江戸眼奴-エドメド-さん(今年のエイプリルフールに現れた謎のグループ)は、違うグループなので(笑)。
毒を飲んで、“ひややか”を食べたMV撮影
──「毒葬」のMVの見どころは?
邪夢 初めて特殊メイクをしたんですよ。かなりグロいというか、クオリティが高いです。大がかりだったので、2日に分けて撮りました。特殊メイクの日と通常の衣装の日と。
ぺこ プールのシーンもあって! バシャバシャ、めっちゃ水かけられたんですけど、一瞬しか映ってなかった……。
邪夢 最初、足しか濡れないって言われてたんですよ。なのに思いっ切りバシャバシャかけられて(笑)。
妖メ 真冬ぐらいの気温の夜中にね。濁った汚い泥水みたいな……。
ぺこ 汚かった! 葉っぱ浮いてたし。
虎 マコモ湯だった。
妖メ 苔むしてたから、めっちゃ滑るし。かゆくなるから終わったあと、みんな仮設のシャワーに走っていったよね。
沼 あと、毒飲んだんですよ! 毒! 毒! 毒!
妖メ かき氷のシロップを水で薄めたやつね。
沼 毒です! ケミカル! ケミカル! トリップ! トリップ!
──大変な撮影だったと(笑)。
邪夢 でも、撮影の合間にはシャボン玉しました。
虎 あとあれなんだっけ、すこやか? 静岡に行ったら食べたかったやつ。
妖メ “さわやか”ね。御殿場が近かったから「さわやか食べたいね」って言ったけど、時間なくて食べれなくて、ケータリングがたまたまハンバーグで、“ささやか”な……。
邪夢 “ひややか”!(笑)
妖メ 「“ひややか”おいしいね」ってみんなで食べました(笑)
うれしくて、うれしくて、感動、感激
──MADMEDとして今年1月25日にライブデビューしてから、もうすぐ半年を迎えますが、活動を振り返って自分たちの成長を感じられていますか?
邪夢 1人ひとりがめっちゃ成長している。歌唱力もダンスも、曲を覚える速度も早くなったなって思いますね。
ぺこ 本当に。みんな振りを覚えるのがめっちゃ早くなった。
──ぺこさんはMADMEDが初めてのアイドル活動ですが、もともと思い描いていたアイドル像もあったかと思います。実際に活動してきて理想と違ったものはありますか?
ぺこ 何もかも初めてだったので、自分が「こうなりたい」というより、「こうしたほうがいいんじゃない?」という、プロデューサーの堤さんのアドバイスを素直に受け入れて今に至る感じだから、自分が理想としていたものかはわかんないんです。でもちゃんと結果につながっていってるから、よかったなと思っています。堤さんのプロデュース力を信じてよかった!
──手応えを感じられていると。自分のファンがついたりして、実感もできますよね。
ぺこ そこで実感しますよね。こうしてよかったとか、ここがんばってよかったとか。ちゃんと結果を感じられるからよかったな。難しいことも多いですけど、がんばれています。
──沼さんも本格的なアイドル活動は初めてですが、デビュー当初から成長は感じられていますか?
沼 もうデビューしたての頃の歌なんて聴けませんよ。怖くて、キモくて。一方で成長していることが実感できてうれしいですね。褒められたら、うれしくなっちゃいます。「歌うまくなったね」「ここよかったじゃん」って、いろんな人から言われるので。ライブ映像をちゃんと観返して、「ここの歌はもっとこうしなきゃいけない」ということを、ちゃんと考えられるようになりました。
──妖メさんは以前もグループアイドルで活動していましたが、それと比べて、というのも言いづらいかと思いますがMADMEDはいかがですか?
妖メ 前のグループは遠征も少なくて、名古屋に行ったのは2回くらいでした。行ってもお客さんが5人とか、そんな感じだったんですよ。でも、今は名古屋に行っても沖縄に行っても、上海に行ってもタイに行ってもお客さんがいる。フロアがパンパンになるほどお客さんが来てくれることがもうすごく、うれしくてうれしくて。感動、感激ですね。
──妖艶な悪魔キャラが歌やパフォーマンス自体にも出てきていますよね。
妖メ うれしい。自分、魔界出身なので。
虎 毎朝、棺から目覚めてくるんだよね。妖目覚メ!
ぺこ 棺からケータイ打ってるんだ。
妖メ あそこは圏外だから、ちゃんと出てから打ってるよ(笑)。でもまだまだだなとは思います、自分的には。周りから「表現がうまくなったね」とは言われますけども、もっとがんばります。
──虎さんも前にグループアイドルを経験していますがどうですか?
虎 いろんな活動ができて、事務所の恩恵はやっぱすごいなと思いました。その一方でお客さんから見たら、「この子たち、働きすぎでしょ?」って思われることが多いんですね。「MADMEDちゃんたち、ちゃんと休んで」みたいに言われるんです。でも実際そういう環境にいられることが本当にありがたくて。前にいたグループは活動をしたくてもできないような環境だったから、忙しくて遠征が多いこともありがたいし、MVや衣装にしっかりお金をかけてくれたりする時点で、もう本当にありがたいんです。あと何より、メンバーの意識が高いのがうれしいですよね。もちろん弱音を吐くこともあるし、マイナスなことを言っちゃうときもあるけど、上を目指していきたいっていう意識が強い。みんなどこのアイドルよりもその意識が高いのかなって。「自分はアイドルなんだ」というプライドが高い。ほかのアイドルさんと比べるのはよくないとは思うんですけど、そこはMADMEDの強みかなって。
──自分たちのことをそう言えるのは大事だと思います。
虎 誇り高きアイドルなので!
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架空使てんる、“誰かがいる状況”に感激