変わりたくないものを変わらせないために
今年3月に初のEP作品「Border=Border」をリリースし、同時にバンド名の表記を「XIIX」から変更したTenTwenty。今回のライブツアーでは新作の収録曲全5曲と過去の楽曲を演奏したほか、初の試みも複数盛り込んだ意欲的なステージで全国のファンを楽しませた。
ライブのオープニングを「スプレー」の心地よいリズムで飾ったTenTwentyは、続いて「月と蝶」「アカシ」と疾走感たっぷりのナンバーを連投してフロアのテンションを急上昇させる。斎藤宏介(Vo, G)はツアーファイナルを迎えた心境を「始まる前から『寂しいね』という話をしてまして」と語り、「今日は喉を引きちぎるつもりで歌うので、皆さんも右手の腱とかを切るつもりで最後まで楽しみましょう」と観客に呼びかけて笑いを誘う。直後の「ユースレス・シンフォニー」ではそんな言葉を体現するように、斎藤と須藤優(B)、サポートメンバーの岡本啓佑(Dr)、粂絢哉(G)、山本健太(Key)の5人はアイコンタクトを交わしながら楽しげにそれぞれの音を鳴らした。
「So Many Stars」では須藤が奏でる骨太なベースラインと清涼感のあるメロディが絡み合う中、場内をミラーボールの光が彩る。曲を終えて一息ついた斎藤は、バンド名の表記を変えたことへの思いを「『自分の気持ちはこうなんだ』というほうに躊躇なく手を伸ばすために、変わりたくないものを変わらせないために変わっていきたい」と丁寧に語り、「自分たちの音楽を無邪気に鳴らすことで楽しんでもらえると思っています」と、観客に対する熱い信頼を明かした。
初のメドレーでは5曲を披露
夏の情景を歌った「Endless Summer」でノスタルジックな空気を届けたあとは、岡本が刻むリズムがシームレスに続き「それがいいな」へとつながる。「まばたきの途中」の柔らかな音像でフロアをしっとりと包みこんだかと思いきや、続いて場内に流れた雑踏のSEから「フラッシュバック」が始まり、オーディエンスは軽快なハンドクラップを鳴らして一体感を高めた。ここで須藤と岡本がグルーヴィな低音をゆっくりと鳴らし始めるが、須藤のベースと粂のギターが「あれ」のサビ終わりのフレーズへとつながると観客からはどよめきが起こる。そのまま5人のセッションはテンポを上げていき、「あれ」のトリッキーなアンサンブルへ突入。痛快な展開でフロアを大いに沸かせた。
MCでは斎藤と須藤がツアーの充実っぷりを振り返るが、斎藤から“立ち飲み”にハマっていることを暴露された須藤は「言うな、言うな!」と苦笑い。その理由を須藤は「ライブの前日から声出しをしないと。別に飲みたくはない」ともっともらしく説明してみせ、メンバーやオーディエンスを笑わせた。場内を和ませたあと、斎藤は「僕らは飽きずにツアーをやるための工夫として毎回違うことをやっていて。今回のツアーでは初めての試みとしてメドレーをやっています」と次の曲を紹介。5人は「ブルー」「ilaksa」「Regulus」「Halloween Knight」「Answer5」と、タイプの異なる5曲を卓越したアレンジ力でまとめ上げたメドレーを披露し、メンバーそれぞれの演奏力と各曲の新鮮な魅力で観客を感嘆させた。
本編終盤では「きみは幽霊」「Border=Border」と、ソリッドなアンサンブルが印象的なEP収録曲を連投してフロアを翻弄。ラストは「煌めき」のハートウォーミングな調べを響かせて締めくくった。
アンコールではTenTwentyからの“お土産”が
アンコールで1人ステージに現れた須藤は、このツアーのアンコールで1人MCをするのが恒例になったことを明かしつつ「楽しんでもらえました? ライブをやりながら変えてきたので、僕らもブラッシュアップできて、一番楽しんでいると思います」とツアーの手応えを語る。続いて加わった斎藤は「今回からすってぃのベースがワイヤレスになって。(ステージ上で)あちこちに行けるのが『いいなあ』と思って……」と、自由度を増した須藤のパフォーマンスをうらやましそうに振り返った。
須藤がアップライトベースを奏でた「White Song」で観客をセンチメンタルなムードに浸らせたあと、斎藤は「まだはっきり言えないんですけど、10月20日は空けておいてください。なんかします」と、“TenTwentyの日”に向けた予告でフロアを喜ばせる。そして「いい曲をいい音源にして聴いてもらって、ライブに足を運んでもらって音源よりもいい演奏で応える、そのサイクルをやりたいなと。今作ってる曲もそう遠くない未来に聴かせられると思います。これからも満足させられる音楽人でありたいし、皆さんの生活の先に僕らがいたいです」と語り、そんな思いを「LIFE IS MUSIC!!!!!」のパワフルな演奏で表現した。
ここで斎藤は今回のツアーでのさらなる試みとして観客に「お土産を持って返ってもらう」べく、アンコール最後の曲はスマートフォンで録画できると説明。EP収録の5曲のうちフロアからの拍手が一番大きかった楽曲を演奏することを明かして“投票”を募った。ツアーファイナルのこの日、オーディエンスから一番熱い拍手を集めたのはタイトル曲の「Border=Border」。5人はその熱意に応えるようにエモーショナルなパフォーマンスを披露し、観客も笑顔でその姿をスマートフォンに収めた。最後に斎藤は「次のライブまで、ニヤニヤしながらスマホを見ててください(笑)。次は動画以上にカッコいいライブをしますんで」と再会を誓い、須藤とともにステージをあとにした。
なお、ツアーの各公演で観客が撮影した動画はハッシュタグ「#マジ撮影許可済」を付けて各SNSに投稿されている。
セットリスト
「TenTwenty LIVE TOUR 2025『It's Magic!!』」2025年7月17日 恵比寿ザ・ガーデンホール
01. スプレー
02. 月と蝶
03. アカシ
04. ユースレス・シンフォニー
05. シトラス
06. So Many Stars
07. Endless Summer
08. それがいいな
09. まばたきの途中
10. フラッシュバック
11. あれ
12. うらら
13. メドレー(ブルー / ilaksa / Regulus / Halloween Knight / Answer5)
14. きみは幽霊
15. Border=Border
16. 煌めき
<アンコール>
17. White Song
18. LIFE IS MUSIC!!!!!
19. Border=Border
ダムファ🪵 ユニゾンばか&エサ@Paradiso! @DAMUFA_USG2011
相変わらず素敵なレポですこと
今回のTenTwentyのツアーは本当気合いが違うってのが伝わってきた https://t.co/CoYiupCrIj