再生数急上昇ソング定点観測 (2024年3月2週目) [バックナンバー]
tuki.「サクラキミワタシ」はただの卒業ソングではない? / 粗品バンドのまっすぐな歌に救われる人が続出
今、盛り上がり始めている曲 / これから盛り上がりそうな曲について詳しく解説
2024年3月8日 18:30 6
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで2月23日から2月29日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、2月23日のMV公開から2週間で2200万回再生を突破した
TWICE「ONE SPARK」
7位は卒業ソングの鉄板である
アンジェラ・アキ「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」THE FIRST TAKE
25位にランクインしたのは、
Ado「Value」
26位には、現在上映中の「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」の主題歌として書き下ろされた、
Vaundy「タイムパラドックス」
29位に初登場したのは
RADWIMPS「正解」
仲間と過ごした日々の思い出や、別れと旅立ちを連想させる卒業ソングが多くランクインした今週は、下記の3曲をピックアップ。
猫又おかゆ「ネコカブリーナ」
※YouTubeミュージックビデオランキング初登場35位
猫又おかゆは2月22日にYouTubeで、自身の生誕祭としてバーチャルライブを配信。ここでお披露目された「ネコカブリーナ」は、
猫又おかゆ生誕祭2024(「ネコカブリーナ」は55:15から)
個人的に惹かれたのは、歌詞と歌声だ。「みんな~ 自分 疑ってるかい?」という印象的なフレーズがあるように、この曲で彼女は「猫を被って生きることで、世間とうまく付き合っていこう」と呼びかけている。猫を被ることを「ファスナーつきの猫」「ファスナーつきの人」と表現しているのもシャレが効いていて面白い。どこか無機質な歌い方の彼女の声を聴いていると、「本当は繕わずにありのままの自分で生きたいと思っているのではないか?」なんてふうにすら思えてしまう。
MVの監督はテレビアニメ「ブルーロック」を手がけた
tuki.「サクラキミワタシ」
※YouTubeミュージックビデオランキング初登場51位
現在15歳の
tuki.「晩餐歌」
そんなtuki.がABEMAの恋愛番組「今日、好きになりました。卒業編2024」の挿入歌「サクラキミワタシ」のMVを公開した。今年の春、彼女自身が中学を卒業することもあってか、大好きな人や学校との別れを惜しむ描写がリアルな卒業ソングになっている。
MVのアニメーションを担当したのは「晩餐歌」のイラストに引き続き、「約束のネバーランド」の作画を担当した
気になったのは、2分20秒以降のシーンだ。女の子が携帯を握りしめて、雨が降る夜道を傘を差さずに走っている。そして何かを目撃した瞬間、好きな人との思い出がフラッシュバックし、涙を流して膝から崩れ落ちる。次の場面で2人が対峙して、男の子が笑顔で話しかけるが、女の子は涙を流して首を振る。個人的には、男の子が事故や何かの不幸にあって亡くなってしまい、天国へ行く前に最後のお別れを告げているシーンに思えた。サビの「桜 君 愛し 泣いちゃってごめんね」のフレーズも、卒業して離れ離れになる寂しさだけでないのかもしれない、と考えれば考えるほど妄想が掻き立てられる。
優里×tuki.「サクラキミワタシ」acoustic ver.
3月1日には、tuki.と優里が歌った「サクラキミワタシ」のアコースティックバージョンのコラボ動画が公開されているので、MVと合わせてチェックいただきたい。
粗品「サルバドルサーガ」
※YouTubeミュージックビデオランキング初登場94位
4月17日にリリースされる
粗品「宙ぶらりん」
粗品は「サルバドルサーガ」のMV撮影のために、伸ばしていた髪を切り、「R-1ぐらんぷり2019」優勝時に着用していたパジャマで撮影に臨んでいる。このことからも、いかにこれが彼にとって特別な曲であるのかがうかがえる。YouTubeのコメント欄には、人生に不安を抱えている人たちから「この曲を聴いて励まされた」という熱い声がたくさん投稿されている。
1番の「今、生きてる そんな自分を愛してる もっと褒めてくれ」というフレーズを聴くと、彼の自己肯定感と他者から認められたい気持ちを歌っているようにも受け取れるが、2番で「今、生きてる そんなあなたを愛してる 偉い偉すぎる」につながることから、この曲は粗品自身のことを歌っているだけではなく、今を懸命に生きている人たちに宛てた応援歌という側面も見えてくる。以前までの粗品の曲とは違ったシンプルなスリーピースのロックサウンドに乗せて、ポジティブな人生観をまっすぐに力強く歌うからこそ、この曲が聴く者の心に刺さるのだろう。
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- 真貝聡
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ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。
こんにゃく教場 @konnyakukyojo
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