のっちさんと新宿の街並み。

のっちはゲームがしたい! 第8回 [バックナンバー]

ついにヨコオタロウさんと対面!「ニーア」シリーズ開発の裏側をたっぷり聞いてきました

キャラクターを3D化する難しさから、ゲームにおける音楽演出、周回プレイにこだわる理由まで

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「どれからやったらいいんだろう?」という質問は、どれでも不正解です

のっち そういえば、さっきオフィス見学をしていたときに3Dモデラーの方が、「ヨコオさんが今回の『レプリカント』でどのシーンが好きなのか知りたい」っておっしゃってました。

ヨコオ のっちさんがまだ見てない追加のシーンなんですけど、今から懇切丁寧に説明しましょうか?

のっち やめてください(笑)。

ヨコオ どのシーンも自分で考えたものだし今までもさんざん観てるから、新鮮味がないし、なんならもう観たくないんですけど(笑)、追加した新しいところはまだ多少新鮮な気持ちで観れるので。

齊藤 のっちさんは「レプリカント」だと好きなキャラクターは誰ですか?

のっち カイネと7号がめちゃくちゃ好きです。あとは仮面の王とフィーアの関係も最高ですね。

左からフィーア、仮面の王。

左からフィーア、仮面の王。

齊藤 あ、カイネと7号が好きならもうこれ以上は話せないですね……。

のっち その時点で私にとってはちょっとしたネタバレ言ってるようなもんですよ(笑)。

ヨコオ ネタバレで言えば、今回の「レプリカント」はもうすでにお話の全体像を知っているお客様が多くて、最初からネタバレしているゲームを作るようなものだから、作ることにあまりポジティブな気持ちにはなれなかったんですよね。でも「オートマタ」から入ってくださったお客様がけっこういるなら、そういう方に届ける意味はあるのかもしれないなって思って。11年前に最初の「レプリカント」が出たときに遊んでくださったファンの方って、そんなに多くないんです。でもそのお客様が情熱を持って支えてくださった結果「オートマタ」を作れることになって、「オートマタ」がヒットしたことで「レプリカント」のバージョンアップ版を作ることができて……お客様が支えてくれた11年間の結果が今回の追加要素になったと考えると、すごくジーンと来るんですよね。昔からプレイしてくれてる方は同窓会に来ているような感覚なんじゃないかって。のっちさんはまだご覧になってないと思いますけど(笑)。

のっち だから今まで「ニーア」をプレイしたことがない人たちから、今回めちゃくちゃ聞かれましたね。「どれからやったらいいんだろう?」って。

ヨコオ どれでも不正解です(笑)。順番はない。どこからやっても大丈夫に作ってある、というか、正確に言うとどこから遊んでも迷うように作ってあるんで。

ヨコオタロウさん

ヨコオタロウさん

齊藤 時系列で言うと当然「レプリカント」のほうが昔ですけどね。

のっち 私は「オートマタ」をやっている途中で「このキャラは『レプリカント』に出てきたみたいだし、先に『レプリカント』をやっておいたほうが絶対楽しいんだろうな」と思って、原作「レプリカント」とPlayStation 3を買って、それをクリアしてから「オートマタ」のエンディングを観たので、すごくよかったです。

齊藤 わざわざそのためにPS3を買っていただいたの、申し訳ないですね(笑)。

のっち PlayStation Now(定額プランでさまざまなゲームタイトルを遊べるサービス)でも配信されてたんですけど、うちのネット回線が終わってて(笑)、とてもゲームできる挙動じゃなかったから結局PS3を買っちゃったんです。

齊藤 そのときに「レプリカント」のバージョンアップ版を作ればよかったね(笑)。「オートマタ」があんなに売れるなんて思ってなかったんですよ、本当に。

のっち 600万本売れたんですよね。

ヨコオ 初代「レプリカント」は世界で50万本売れたから、「オートマタ」はその1.5倍の75万本目指しましょうって話してたんです。一般的に続編って売上が落ちるものなので、75万本は無理だろうとも言われてたんですけど。で、それを齊藤さんに話したら「100万いかないと赤字だ」って言われて。「50万の続編を作って100万行かないと赤字って、ビジネスとしておかしいでしょ」って笑ってたんですよ。まさかそんなに売れると思わなかったから。

伊藤 SNSで皆さんの感想を見てると、今回の「レプリカント」を遊んでから「オートマタ」にも手を出した人をけっこう見かけたので、作った甲斐があったなと思いました。「オートマタ」をやったら「レプリカント」の後半の意味がわかった、みたいなことを書いてたりして、それはそれでいい楽しみ方だなって。

「なんでこんなことになったんだ?」って不思議に思うようなことは、だいたいお金が理由です

のっち 「オートマタ」ではスクエニとプラチナゲームズの社長とも戦いました(笑)。

齊藤 あれもめちゃくちゃですよね(笑)。DLC(ダウンロードコンテンツ)を何か作ろうって話は初めからしてて。

ヨコオ 最初はコスチュームをチェンジしようって話をしてたんですけど、かかる費用が思いのほか高くて。「なるべく安く作れてバリューが出せるコンテンツはなんだろう」って考えてたら、ちょうどその頃「ファイナルファンタジーXV」の発売記念特番のためにお遊びで作った、スクエニの松田洋祐社長のモデルがあったので、「このモデルを借りよう」って(笑)。プラチナゲームズの佐藤賢一社長は、たまたま顔の3Dスキャンデータがあったんです。

のっち なんでたまたまあるんですか(笑)。

ヨコオ つまり、予算内でやれる範囲でやった結果ああなったっていうことです。

伊藤 今回の「レプリカント」でも、DLCでトイロジックの社長を出そうかって話に一瞬だけなったんですよ。

ヨコオ 言ってもらえれば出したのに。

齊藤 今からでもいいよ?

のっち まさかDLCがああいう内容だとは思いませんでしたね(笑)。だからDLCが出るってなったら、めちゃくちゃワクワクするんですよ。

ヨコオ ニーアで「なんでこんなことになったんだ?」って不思議に思うようなことは、だいたいお金が理由ですね(笑)。前の「レプリカント」でDLCとして追加コスチュームを作ったときも、時間もあんまりないし手が空いてるスタッフも限られてるけど、なるべくお金をかけないようにデザインとかも全部現場に任せることにしたんです。僕のチェックも必要ないから、とにかく急いで作れるもの作ってくれって。そしたらエミールが鯉のぼりみたいなコスプレしてて(笑)。「なんだこれ」って思ったんですけど、リテイクする時間はないし、これはこれで味があると思ったので、それでいきました。

エミールの追加衣装。

エミールの追加衣装。

ゲームの音楽演出って、まだ発展の途中だと思うんです

のっち 音楽へのこだわりも感じます。

ヨコオ 「ニーア」では“BGMのレイヤー分け”っていうのをやっているんです。例えば、戦闘中はリズムパートの音数が多いけど、戦闘が終わったらストリングスだけが鳴っている、みたいな。そういう曲を作ってもらうのはけっこう大変なことなんですが、そんな無理難題を聞いてくれるのがMONACAの岡部啓一さんなんです。岡部さんはお金さえ払えばどんな曲でも笑顔で作ってくれる素晴らしいコンポーザーなんで(笑)。

のっち 「オートマタ」を初めてやったときにビックリしたのは音楽を使った演出なんです。例えば原作の「レプリカント」でも、広場で歌ってるデボルに近付くとだんだんその声が聞こえてきて、インストだったBGMがボーカル入りになるとか。あとイベントクエストのあとに余韻に浸るように曲がずっと流れ続けてたり、そういう音楽の使い方に感動して。

ヨコオ ゲームの音楽演出って、まだ発展の途中だと思うんです。ドラマの劇伴とかと違って、丁寧に流れを組み立てるのが難しいんですよ。プレイヤーが次にA地点に行くのかB地点に行くのかわからないから、基本的には場面が切り替わったら曲も切り替えるようにしないと、想定外のプレイをされるとバグが発生してしまう。悲しいことが起きた直後に明るい曲が流れても気持ちが付いていかないから、そういうときはフィールドに画面が変わっても悲しい曲を継続して鳴らしたいんですけど、そうするとおかしなことが起きやすいんですよ。

のっち あー、システム的に難しいことをしてるんですね。

のっちさん

のっちさん

齊藤 ヨコオさんはシナリオが世界的に評価されてますけど、どこでどんなBGMが入るかっていう音楽演出のこだわりが一番うるさいかも。

伊藤 僕は前の「レプリカント」を当時やっていて、シーンに合わせてリアルタイムでBGMのトラック数が増えたり減ったりすることに衝撃を受けたんです。「ゲームってこんな表現もできるんだ」って。それがゲーム業界に来た理由の1つなんです。

ヨコオ 今の話は初めて聞きました。最初に言ってくれてたらいいのに(笑)。

伊藤 ずっと秘めてた思いです。

のっち 秘めてたんですね(笑)。BGMってゲーム内の時間帯によってもアレンジが違いますよね?

伊藤 そうですね。晴れてるときは元気なボーカルが流れるけど、曇ってるとボーカルが消えてしめやかな雰囲気になるとか。プレイヤーの置かれてる状況や気持ちに合わせて細かく変えてます。

齊藤 そんなに手間かけてるのに、ろくにその機能を宣伝してないっていう(笑)。

のっち だからヨコオさんのゲームはいつも「あー、なんか知らないうちに心を操られてるんだろうな」って思いながらやってます。

ヨコオ すごい嫌な言い方しますね(笑)。

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