のっちさんと新宿の街並み。

のっちはゲームがしたい! 第8回 [バックナンバー]

ついにヨコオタロウさんと対面!「ニーア」シリーズ開発の裏側をたっぷり聞いてきました

キャラクターを3D化する難しさから、ゲームにおける音楽演出、周回プレイにこだわる理由まで

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ゲームが大好きなPerfumeののっちさんが、ゲームに関わるさまざまな人々に会いに行くこの連載。今回は2021年4月22日に発売された「NieR Replicant ver.1.22474487139...」の開発に携わった株式会社トイロジックを訪問し、クリエイティブ・ディレクターのヨコオタロウさん(株式会社ブッコロ)、プロデューサーの齊藤陽介さん(株式会社スクウェア・エニックス)、ディレクターの伊藤佐樹さん(株式会社トイロジック)にいろいろなお話を聞いてきました。

「NieR Replicant ver.1.22474487139...」は2010年4月発売のアクションRPG「NieR Replicant」のバージョンアップ版となる作品。2017年2月にリリースされ、累計出荷・ダウンロード販売本数が600万本を突破したシリーズ2作目、「NieR:Automata」の世界が形成されることになった始まりの物語が描かれます。この「NieR:Automata」はのっちさんがもっとも好きなゲームの1つ。とても思い入れの強い作品ということもあり、今回はこれまで以上に時間をかけてボリュームたっぷりのトークを繰り広げました。

※この取材・撮影は5月下旬に感染対策を講じたうえで行いました。

取材 / 倉嶌孝彦・橋本尚平 / 橋本尚平(取材後記は除く) 撮影 / 上山陽介 ヘアメイク / 大須賀昌子 題字 / のっち

目次

3Dモデルの作り方を教えてもらいましょう

ヨコオさんや齊藤さんの熱烈なファンで、出演するトーク配信などをすべてチェックしているというのっちさん。この日は心なしかいつもよりも緊張した面持ちでした。

インタビューの前にまずは、トイロジックのオフィスを見学させてもらいます。コロナ禍のためトイロジックは大部分のスタッフがリモートで開発作業をしているそうで、取材当日もオフィスに出社している人はわずかでした。

ここは主に3DCGキャラクターのモデリングなどの作業をするデスク。イラストレーターの吉田明彦さんからキャラクターデザインが届くと、それを見ながらキャラモデルチームの皆さんがここで3Dモデルを起こします。ちなみにオフィス内の天井は、光が画面に当たると色が正確に把握できなくなるため、この作業をしているスペースの蛍光灯は半分以上が外されています。最初に見せてもらったのは、カイネというキャラクターの3Dモデルでした。

画面に写っているのはカイネの3Dモデル。

画面に写っているのはカイネの3Dモデル。

「イラストからポンと3Dになるわけではないじゃないですか。この3Dはどうやって作り始めるんですか?」というのっちさんの質問に答えるため、スタッフさんが見せてくれた3Dモデルの最初の状態は、なんとただの四角い箱。のっちさんは思わず「ええっ! これがこれになったんですか!?」と驚きの声を上げました。

「ええっ! これがこれに!?」

「ええっ! これがこれに!?」

まじまじとモニターを覗き込むのっちさん。

まじまじとモニターを覗き込むのっちさん。

この箱に線を入れ、その線を少しずつ少しずつ動かしていくという地道な作業を長い時間かけて行うことで、ただの四角い箱がリアルなキャラクターへと変貌していくそう。顔のアップを見ると、髪の毛1本1本までかなり細かく調整されているのがわかります。

カイネの3Dモデル。

カイネの3Dモデル。

3Dモデルは、ある程度のたたき台ができたらヨコオさんがチェックし、フィードバックがあれば修正。それを繰り返すため、すべての主要キャラができるのにだいたい1年くらいかかっているそうです。また、イベントシーンに合わせての微調整は最後の最後まで続き、このゲームは4月発売だったのに3月になってもまだ3Dデータを触っていたんだとか。それを聞いたのっちさんは「こういう作業って、時間があればあるだけ、いつまでもやっちゃいますよね」と共感していました。

人の形ができあがると、別のソフトを使って質感を表現するテクスチャーを表面に貼り、色を乗せます。キャラクターを拡大して、実際のゲームプレイ中はあまり見ることができないくらい細かい部分まで見せてもらったのっちさんは「うわすごい! ちゃんと生地!」と目を丸くしていました。

拡大したカイネの衣装。

拡大したカイネの衣装。

目を丸くするのっちさん。

目を丸くするのっちさん。

衣装は表面だけでなく裏面も描かれていないと、何かの拍子で裏面が見えてしまったときなどに、その部分が透明になってエラーが起きてしまいます。そのため、プレイ中は見ることができなくても、服にはすべて裏地が設定されているそうです。こちらはエミール(実験兵器7号)の3Dモデル。エミールの服の裏地を見せてもらったのっちさんは「裏地なんて意識したことなかった!」。

エミール(実験兵器7号)の3Dモデル。

エミール(実験兵器7号)の3Dモデル。

マントを脱がして骨だけの姿になったエミール(実験兵器7号)。

マントを脱がして骨だけの姿になったエミール(実験兵器7号)。

テクスチャーを書き出したら、次は素材ごとの光の反射具合などを設定し、質感を出していきます。目は左右それぞれのハイライトの位置を動かせるようになっていて、特にイベントシーンなどでは瞳の輝きに細かい調整が施されます。3Dモデルを作る作業はここまで。これにモーションデータを流し込めば、キャラクターが動き出します。

カイネの瞳のハイライトを調整している様子。

カイネの瞳のハイライトを調整している様子。

瞳を拡大するとフィールドの景色が映っています。

瞳を拡大するとフィールドの景色が映っています。

モーションアクターの演技を見せてもらいましょう

キャラクターを動かすモーションデータは、アクターの演技をキャプチャーして作成しています。今回その撮影時の映像を特別に用意していただいたとのことで、それを聞いたのっちさんは「ええっ、うれしいです!」と震え声。映像を流しながらスタッフの方が「カイネの動きを演じているのは、『オートマタ』でも2B役でモーションアクターを務めていた川渕かおりさんで……」と解説し始めると、のっちさんは前のめりに「好きです!」と即答しました。

モーションキャプチャー時の映像を流しているところ。

モーションキャプチャー時の映像を流しているところ。

興味深げに演技を観るのっちさん。

興味深げに演技を観るのっちさん。

見せていただいた映像には、主人公ニーアの汎用モーションを演じている杉口秀樹さんの姿も。今回の「レプリカント」は2010年版「レプリカント」から大幅に作り直しているため、すべてのプレイヤーアクションに加えて、いくつかのイベントシーンも新規にモーションキャプチャー収録しています。ゲーム内のキャラクターを生き生きと動かすモーションアクターたちの演技を見せてもらえて、のっちさんはうれしそう。「すごい! 重そうに武器を持ってる! 実際は全然重くないのに!」「これもアクターさんがやってるんだ。人間にはできない動きだと思ってたのに、ちゃんと人間が演じてたなんて驚き……」「すご……うま……。へえー(深い溜息)」などと言いながら、食い入るような目で映像を見つめていました。

映像内で迫真のアクションを見せるモーションアクターたち。

映像内で迫真のアクションを見せるモーションアクターたち。

モーションアクターの撮影は、プレイ中のアクションもイベントシーンも、すべて撮り終わるのに終日スタジオに入って2、3日くらいかかります。アクションとイベントを別のアクターが演じることもよくあるそうで、今回カイネ役はアクションもイベントも川渕さんが演じましたが、ニーア役は杉口さんがアクションのみで、イベントシーンは山﨑勝之さんが演じています。

のっちさんは映像を観て「あ、セリフもちゃんと言うんですね!」と、演技中のアクターの口元が動いているのを発見。イベントシーンは映画やドラマのように、ディレクターが描いた絵コンテに合わせて演技をしているそうです。

「あ、セリフもちゃんと言うんですね!」

「あ、セリフもちゃんと言うんですね!」

次にのっちさんが見せてもらったのは、開発版にのみ搭載されている、いろいろな“ズル”ができるデバッグモード。「これで何ができるかというと……」と言ってスタッフさんがコントローラーを握ると、ゲーム画面はフィールドを上から見下ろすように上昇していきます。のっちさんは「えっ、空を飛んでるんですか?」とビックリ。これはプレイヤーの視点だけを自由自在に動かせるモードで、これを使ってあらゆる角度からゲーム中の状況をチェックしているそうです。

プレイヤーの視点を少し上に浮かべた画面。

プレイヤーの視点を少し上に浮かべた画面。

そのほかデバッグモードには、一撃で敵を倒せるコマンドも搭載。敵を倒さないと見ることができないイベントなどをチェックするときに、毎回敵を倒していると時間がかかりすぎるため、このモードが用意されています。ゲーム会社は発売までに何十回と通しプレイしなければいけないので、こういう機能は必須。さらに、「放置したまましばらく待つ」というチェックをするときに役立つ、触った相手がすべて死んでいく“スーパーマンモード”や、釣りたい魚を指定して釣るモードなどもあるそうです。それを聞いたのっちさんは「くぅー! いいなあ! 釣りは大変です」とうらやましがっていました。

その後の説明に入ろうとしたスタッフさんは、のっちさんに「ちなみに今回の『レプリカント』はどこまで進みましたか?」と質問。のっちさんが「Bエンドまでです」と答えると、その先の新コンテンツに関するネタバレに触れる話をしてくれるつもりだったらしく、スタッフさんは「……わかりました(笑)」と微笑み、残念ながらここでレクチャーは終了。「えー! でも、それで見れないのなんか悲しいんですけど……!」「来月また来てもいいですか?」「早く続きがやりたい……!」と、のっちさんは悔しがりながらデスクをあとにしました。

悔しそうなのっちさん。

悔しそうなのっちさん。

ネタバレを聞きたいような聞きたくないような複雑な気持ちになり、早くゲームの続きをしたくてたまらなくなってしまったのっちさん。そんな思いを抱えながら、これからいよいよヨコオタロウさん、齊藤陽介さん、伊藤佐樹さんへのインタビューが始まります。

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皆さんはなんでゲームを作る人になったんですか?

読者の反応

@kaya_magnolia

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