初日のFIELD OF HEAVENのトップバッターを務めたのはトリプルファイヤー。フジロック出演は、苗場食堂に登場した2017年以来8年ぶりであり、昨年リリースした約7年ぶりのアルバム「EXTRA」の大きな反響が彼らをこのステージに導いたと言って間違いないだろう。吉田靖直(Vo)が缶ビールを開けて開会を宣言すると「お酒を飲むと楽しいね」をはじめとした新旧の楽曲を寡黙なバンドメンバーがダンサブルなアレンジで届けていく。終盤には、フジロック2日目に出演する山下達郎の楽曲「RIDE ON TIME」のカバーも。達郎とはかけ離れた吉田の熱唱が山中にこだまし、観客は皆笑顔を浮かべながら踊った。
昨年のROOKIE A GO-GOでフジロックデビューを果たしたkurayamisakaは、RED MARQUEEの一番手として登場。音楽シーンにその名を知らしめた「farewell」や、ノスタルジーとエモーションが交差する「sekisei inko」などの楽曲を爆音で繰り出し、強烈なインパクトを残してステージをあとにした。
2017年は場外のROOKIE A GO-GOステージ、2022年は苗場食堂に出演したおとぼけビ~バ~は、今回WHITE STAGEに出演。世界的に活躍する彼女たちが鳴らす爆音を浴びるため、会場を埋め尽くすほどの観客が山中に詰めかける。ライブ中盤、雨がしとしと降り始めるが、演奏に魅了された観客は会場に留まり、4人は雨を吹き飛ばす勢いでエキセントリックなパフォーマンスを畳みかけた。なお、かほキッス(Dr)は妊娠中であり、これが活動休止前ラストのライブとなったが、“心臓2つバージョン”のパワフルなドラムでライブを牽引した。
KIRINJIは、昼のFIELD OF HEAVENに登場。するとリハーサルまで降っていた雨が奇跡のように止み、晴れ間が広がる。そんな天気にピッタリな「Runner's High」でライブの幕を開けた彼らは、近年のライブ定番曲と「Drifter」「イカロスの末裔」などキリンジ時代の人気曲を織り交ぜて披露。洗練されたグルーヴィな演奏により、現体制のKIRINJIをよく知らない観客も存分に楽しませた。KIRINJIは意外にもこれがフジロック初出演であり、堀込高樹(Vo, G)は「長くやってみるもんですね」と感慨を語っていた。
WHITE STAGEのトリを任されたのは、今年6月に2DAYSワンマンを行って完全復活を遂げたSuchmos。フジロックへの出演は7年ぶりとなる彼らは地元・茅ヶ崎の情景を歌った初期曲「Pacific」や、最新EPの収録曲でメンバーの多様な音楽的ルーツを感じさせる「Eye to Eye」、7年前には演奏しなかった代表曲の1つ「STAY TUNE」など、新旧織り交ぜたセットリストで会場のボルテージを高めていった。YONCE(Vo)が超満員の観客を前に「いろんな人たちの前でライブができる場として、ロックフェスというものが今後も末永く続くことを祈ります。今日は本当にありがとうございました。あと50曲ぐらいやって終わります」と宣言すると、バンドは「Whole of Flower」や「YMM」といったキラーチューンを連発し、熱狂の中でステージを終えた。
Vaundyのステージが終わると、GREEN STAGEでは次のアクト(=フレッド・アゲイン)の開演が遅れる旨がアナウンスされた。機材トラブルにより予定時刻から約1時間半後ろ倒しで始まったフレッドのステージ。22:50頃に笑顔で彼が登場すると、ビジョンには日本語と英語で「フジロックでプレイできるなんて本当に光栄だよ。集まってくれてありがとう」など、彼からのメッセージが映し出された。大勢の観客が待ちわびたフレッドのステージは「Kyle(i found you)」でスタート。その後も彼が日記のようにつづってきたアルバム「Actual Life」シリーズの楽曲を次々と届けていく。フレッドはSNSで見ていたフジロックのステージに立てた感慨を述べ、ビジョンを通じてファンへの温かい言葉を幾度も送る。またジョイ・アノニマスをゲストに迎えた「peace u need」では「あなたに私の一部をあげる」「あなたが必要とする平和が来ることを願っている」という和訳がビジョンに映し出され、オーディエンスも同じ気持ちだと言わんばかりに盛大なシンガロングをステージに送った。
普段はヘッドライナーのステージが終わると始まるROOKIE A GO-GOのステージは定刻通り23:00にTrooper Saluteのアクトでスタート。深夜2時、ダンサブルな楽曲とこぶしの効いたTPの歌声をかけ合わせた、独創的なHUGENのステージは大盛況だった。
RED MARQUEEの深夜帯ステージ・PLANET GROOVEに登場した坂本慎太郎は、官能的なトランペットの響きを合図に「死者より」でパフォーマンスを開始。腕利きのメンバーによる研ぎ澄まされた演奏に、深夜という時間帯や場内を妖しく照らす照明演出が相まって、坂本が描く独特の音楽世界はより濃密なものとなっていった。ライブ定番曲「仮面をはずさないで」ではサイケデリックなレーザーがいたるところに照射され、演奏が終わることにはPLANET GROOVEは混沌としたダンスフロアと化していた。
楊(やん) @yan_negimabeya
【ライブレポート】「フジロック」に10万6000人が来場!山下達郎、Vaundy、Suchmos、RADWIMPSらが熱演 https://t.co/nbBa5SiYcF