
再生数急上昇ソング定点観測 (2025年8月1週目) [バックナンバー]
anoの嘆きと復讐心がタコピーに寄り添う / 篠澤広「サンフェーデッド」で存在しない思い出が続々 / 乃木坂46の6期生曲に凝縮された青春のすべて
今、盛り上がり始めている曲 / これから盛り上がりそうな曲について詳しく解説
2025年8月1日 18:30 4
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで7月18日から7月24日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、23位に
TOMORROW X TOGETHER「Beautiful Strangers」ミュージックビデオ
27位には
Vaundy「再会」ミュージックビデオ
51位には
IVE「Be Alright」ミュージックビデオ
57位には
悠馬「心結び」ミュージックビデオ
K-POPアーティストの新曲が目立った今週は、下記の3曲をピックアップする。
ano「ハッピーラッキーチャッピー」×アニメ「タコピーの原罪」コラボMV
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場29位
ano「ハッピーラッキーチャッピー 」【2025.07.04「BONE BORN BOMB TOUR」at Zepp Haneda】
もともと原作を読んでいたというanoは、作品の重く苦しい部分に共感し、自身の中学時代の経験を重ねながら今作を書いたそうだ。そんな彼女は中学生のときにクラスや部活で壮絶ないじめに遭い、中学2年生から卒業まで不登校になる。今でもそのときの体験が彼女の心に深く刻まれており、2023年に掲載された朝日新聞のインタビューでは次のように話している。
「音楽活動の根底にあるのは怒りですね。いじめられた学生時代からずっとその気持ちはあって、この世界に入るきっかけも復讐(ふくしゅう)心から。復讐し足りないっていう思いが、衝動に、パワーになっている」
本楽曲からは理不尽な社会に対する嘆きと、それに屈しない反骨心と復讐心が感じられる。特に「腐ってるのは地球の方だから うまく歩けない」というフレーズは、マジョリティに負けまいと自分を信じて生きてきたanoの自己肯定と、世間に向けた怒りの言葉に思える。作品に寄り添いながらも、彼女にしか歌えない楽曲に仕上げる素晴らしい表現力に心を打たれる。
篠澤広「サンフェーデッド」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場38位
篠澤広は「アイドルマスター」シリーズ最新作「学園アイドルマスター」のゲーム内のキャラクター。14歳で海外の大学を卒業した天才少女で、若くして学問の道を極めた彼女は苦手分野に挑戦しようと、あえて“自分にとって最も不向き”だと思うアイドルを志して初星学園に入学した。これまで何をやってもうまくできていた広は、アイドルを通して“できない自分”と直面し、徐々に人間らしさを学んでいく。そんな彼女の新曲が、ゲームの新シナリオ「STEP3」にて追加された「サンフェーデッド」だ。
「サンフェーデッド」は広の初のオリジナル曲「光景」と同じく、作詞・作曲・編曲を
初星学園 「光景」ミュージックビデオ
「サンフェーデッド」のレコーディングに参加したバンドメンバーは、ギターが
この曲が訴えているメッセージについて考察していこう。タイトルに使われている英語「Sunfaded」は「日光で色褪せた」を意味する、時間の経過を表現した言葉。「いずれ全部 明るい道の秘密のように思い出す.」といった歌詞からも、過去のトラウマや記憶をいつかは明るい思い出に塗り替えたいと願った楽曲に思える。このように推察すると、これは彼女が成長する過程を描いた曲なのではないだろうか。
篠澤広「メクルメ」ゲームサイズリリックビデオ
ちなみに、 昨年末リリースされたフロクロの提供曲「メクルメ」を聴いて、筆者は広がアイドルを志す前と、アイドルになることを決意した心境の変化を描いていると感じた。「メクルメ」「サンフェーデッド」のどちらも、彼女の道程を映し出す物語として共通しているように思う。
乃木坂46「なぜ 僕たちは走るのか?」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場60位
「なぜ 僕たちは走るのか?」は、
MVの内容について紹介していこう。文化祭本番の3日前、6期生演じる女子生徒たちは掲示板の張り紙を見て動揺していた。なぜならその紙には、台風の影響によりステージの設営業者が来校できないため、中庭でのステージ発表はすべて中止すると書かれていたのだ。文化祭に向けて衣装を用意し、ダンスと歌を練習してきた彼女たちは、突然の悲報に意気消沈する。やり場のない気持ちを抱えていた彼女たちは、屋上に集まり覚悟を決める。衣装に着替えて中庭へ向かい、大勢の生徒の前で「なぜ 僕たちは走るのか?」をパフォーマンスしたのだ。
彼女たちの歌に魅了されて次第に観客が集まり、みんながうちわを持って応援する。その人だかりに気付いた教師が止めに入ろうとするのだが、清掃員やほかの大人が行手を阻み、彼女たちのパフォーマンスを続けさせた。「なぜ 僕たちは止まらないんだ? / 先生や誰かに / 言われたわけじゃない / 青春は不条理だって思う / 理不尽に負けないために走る」と歌い上げてパフォーマンスを締めくくると、周りから大きな歓声が起きた。その光景を見て目をキラキラさせる少女たち。きらめき、衝動、葛藤、ひたむきさ――青春のすべてがこの楽曲と映像には凝縮されている。
- 真貝聡
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ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。
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Reed @X1319RAY
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