ASPが8月20日にメジャー5thシングル「BA-BY」(バービー)をリリースした。
「BA-BY」は元BiSのイコ・ムゲンノカナタ加入後初のフィジカルリリース作品。表題曲はYohji Igarashiが楽曲プロデュース、サウンドメイク、作曲、Pecori(ODD Foot Works)が作詞および作曲で参加した新曲で、グループの真骨頂とも言える攻撃的ロックサウンドをエモーショナルに彩った、今のASPを示すナンバーだ。またカップリングの「Get New ミライ」はイコ加入タイミングで先行配信された楽曲で、Age Factoryが楽曲プロデュースを手がけた、エネルギッシュなロックチューンとなっている。
音楽ナタリーでは「BA-BY」のリリースを記念して、Yohji Igarashi&Pecoriへのインタビュー、そしてAge Factoryへのインタビューを公開。ASPの楽曲制作に携わったきっかけ、楽曲の背景に迫るエピソード、ASPの印象や今後期待していることについて話を聞いた。インタビューを通じて、それぞれがASPに深い理解と熱い愛情を持って楽曲制作を行っていることがよく伝わってきた。
取材・文 / 真貝聡ライブ写真 / 外林健太
Yohji Igarashi&Pecori(ODD Foot Works)インタビュー
パンクを感じたASPにどんな曲を書けるか?
──IgarashiさんとPecoriさんは、2022年リリースのメジャーデビューシングル「Hyper Cracker」をはじめ、ASPに対してこれまで多くの楽曲提供とプロデュースをされてきました。そもそも、どういう流れでASPとお仕事をすることになったのでしょうか?
Yohji Igarashi 僕にとって渡辺淳之介(ASP所属事務所WACKの元代表)さんは先輩のような存在で、付き合いも長いんですけど、一緒にちゃんとお仕事をしたことはこれまでほとんどなかったんです。初めてご一緒させてもらったのが「Hyper Cracker」でした。当時は松隈ケンタさんがASPのほとんどの曲を作られていた中、「メジャーデビューの大事なタイミングで、僕が作曲とプロデュースをやらせてもらえるんだ」と驚きまして。それで楽曲の方向性を考えたときに、やっぱり正面からロックで行っても松隈さんには太刀打ちできない。ASPの基本にあるパンクなアプローチは残しつつ、松隈さんとは別のエッセンスを入れないと意味がないと思いました。それを形にするには頼もしい相方が必要。トラックがそこまでコードを支える感じでなくても、歌とラップで曲のストーリー性を作れる人を探していました。Pecoriは自分のバンド(ODD Foot Works)でもいろんなタイプの曲を作っていて、歌のメロディセンスもすごくいい。そう思って僕から声をかけさせてもらいました。
Pecori 当時はバンドで曲を提供する機会がちょいちょいあったぐらいで、今ほど楽曲提供の機会がなかったのもあり、「あ、全然やる!」と二つ返事でしたね。
──ASPにはどんな印象を持っていましたか?
Pecori 曲もビジュアルも“ディープなパンク”という印象。その尖ってる感じが曲を提供する身としては、いろいろとやりがいがあるからうれしかったですね。
Igarashi インディーズ時代のASPはしっかりとロック路線でいくと思っていたので、僕が関わらせてもらえる音楽性じゃないと思っていたんですよね。そんなインディーズ時代の雰囲気のまま、もっとエッジーさを表現していくと思っていたので、オファーをもらったときは意外でした。
「Hyper Cracker」を聴くたびにフラッシュバック
──インディーズ時代のASPが表現してきた音楽は、主に90'sロックサウンドでした。真逆とも言えるハイパーポップの要素を取り入れた「Hyper Cracker」は、グループにとって新しい路線に挑む大きな転換点だった思います。改めて、どのように制作されたのでしょう?
Pecori ASPはガチンコロック系だったので「ここから、どうフォームチェンジしたらいいかね?」みたいな話をして。その中でダンスミュージックの要素はYohjiの得意領域でもあったし、ロックとの親和性もあるということで「ハイパーポップっぽいビートでいこう」と決まりました。
Igarashi そうだね。ただ、ハイパーポップは数あるジャンルの中でも、すごく自由度があって選択肢が多い気がしていて、コンセプトが決まったあとも、どんなビートにするのかは悩みましたね。
──レコーディングを経て、完成した音源を聴いたときの手応えはいかがでしたか?
Pecori なんか……「Hyper Cracker」を聴くとめっちゃ思い出すんですよね。レコスタ(レコーディングスタジオ)がウチの近所にあったのでチャリンコで向かって。昼前ぐらいからRECの準備を始めて、ボーカルを録って歌割りを決めて、すべての作業が終わったのは朝4時くらい。夏だったから、すでに空が明るくなっていて。薄青い空を見ながらチャリンコで帰る風景が一瞬で思い返されます。いざ完成した曲を聴いたとき、だいぶ手応えはあったし、ぶち上がりましたね。
Igarashi 僕はミックスまでやらせてもらいまして、大概の曲は「どこか気になるところはあるかな?」とチェックの一貫で聴くんですけど、「Hyper Cracker」は純粋にいい曲だなと思って何度も聴き返していました。今でも聴きますし、去年の年末にASPのアートワークを手がけているJACKSON kakiと会ったとき「Spotifyで一番聴いた曲に『Hyper Cracker』が入ってました」と言われました。ハマる人にめっちゃハマるなって。作った側ですけど、僕もハマった感覚で聴いていますね。
次のページ »
普段は「ふぇー」と言っているメンバーもステージだと……