lyrical school|男女混合8人組、バラバラだからこそ表現できる“青春”群像

lyrical schoolの新作「LIFE GOES ON e.p.」がリリースされた。新作のテーマである“青春”はリリスクが結成以来一貫して表現してきたものだとも言えるが、“清純派ヒップホップアイドルユニット”から個性もさまざまな男女混合の8人組クルーへと大きく変化した現在のリリスクは、過去のスタイルとはまた違った青春群像を表現できる。

“LS8”体制になって二度目の取材となる今回のインタビューでは、EP収録曲について1曲ずつじっくり話を聞く中で、メンバーが感じている「この8人だからこそ表現できる“青春”」の実像が見えてきた。

取材・文・撮影 / 臼杵成晃

minan不在の半年間、メンバー7人の成長と変化

──12月から半年弱、lyrical schoolはminanさんを欠いた7人で活動していました。活動歴の浅いメンバーのみでさまざまなことをこなしていくのは大変だったと思いますが。

sayo みにゃん(minan)には本当に頼りっきりで……いろんなことを任せてしまっていたんだなと7人になって初めて気付いたくらい、自然にいろんなことをやってくれていたんですよ。みにゃんにやってもらっていたことを自分たちでやってその大変さがわかる、という期間でした。あと、ライブではみにゃんのパートをみんなで割り振って歌ってたんですけど、全パート難しくて(笑)。みにゃんの存在の大きさを改めて体感しました。

lyrical school

lyrical school

──それはメンバーとしては収穫でもあった?

mana そうですね。7人それぞれ「自分がやらねば」という自覚がすごく芽生えた。

reina 7人の期間に、sayoが「挨拶リーダー」になったんですよ。いろんな仕事のときに「lyrical schoolです。よろしくお願いします」と率先して号令をかける役割に立候補してくれて。

sayo 立候補しました。やる気だけはあって。

一同 アハハハハハ。

sayo やる気だけはあるんですけど、毎回緊張でたどたどしくなっちゃって。その緊張がメンバーにも伝わって、いつも挨拶がうまくいかないんですけど(笑)。このタイミングで、いろんな役割をみんなで割り振りました。リハーサルリーダーはryuyaくんで、音響のこととかをやってくれたり。

reina ライブ前の円陣での気合い入れは、いつもmalikがやってくれます。

malik 僕はminanが戻ってきてくれたあとのほうが、いろいろ気付くことが多いです。いない間は「もうやるっきゃない」くらいの気持ちで……。

reina

reina

malik

malik

tmrw 最初の7人のライブのとき言ってたよね。「みんな、やるしかないよ!」って。

malik 僕、今のリリスクを「HUNTER×HUNTER」の幻影旅団にたとえていて。足が1本抜けても、頭が取れても組織として成り立つ強みを手に入れたような気がする。みにゃんが活動を休止しているとき、tmrwが体調を崩して、6人編成でライブをしなくちゃいけないときがあったんです。それでも「やるっきゃない」とその場で割り振ったパートを覚えて、乗り越えることができた。

──「HUNTER×HUNTER」読者じゃない人には伝わりにくいかもしれませんが、すごくわかります。

malik だからもう何が起きても怖くないぞ、という気持ちでいたんです。でも、minanが戻ってきたとき……特にひさしぶりという感じもなく、すごく普通に戻ってきてくれて。「ああ、こういうときにみにゃんとよく話してたな」「こういうところを頼ってたんだな」と今も日々気付かされ続けてる。

──この半年間が今のリリスクにもたらしたものは大きいのかもしれませんね。

hana 半年と言うと長いようにも感じるけど、8人に戻った今となってはあっという間に感じます。

──tmrwさんはライブでの煽りが半年でずいぶんパワーアップしたように感じますが。

tmrw 最初の頃は煽り文句を事前に決めたりしていたんです。でもそれだと余計に変な感じになるとわかったから、今は何も考えず、ほぼフリースタイルでそのとき考えたことをそのまま言うようになりました。たまに本当に何も言うことがなくてグダグダになっちゃうんですけど(笑)。

mana あっはっは!

tmrw それはそれでリアルで面白いかなと思って。

mana

mana

tmrw

tmrw

──リハーサルリーダーはどうですか?

ryuya ……リハーサルに関してですか?(笑)

──いや(笑)、7人での半年間を総合的に振り返って。

ryuya 僕はすでに7人でライブしてたときの記憶がやや薄れ始めてるんですよね。5月30日に8人でステージに立ったときの、あのしっくりきた感じ。あのときの「これだったよね」という感覚が強くて。8人の彩りが戻ってきたことがシンプルにうれしかったです。

──minanさんとしては、グループを離れて「あいつらうまくやってるかな」「大丈夫かな」と心配することはなかったですか?

minan それよりも「申し訳ない」という気持ちが強くて……ゴメン、ゴメン、ゴメン!とずっと思ってました。

ryuya

ryuya

minan

minan

──この半年間で7人それぞれすごくパワーアップしたなと感じているのですが、ひさびさに同じステージに立ったとき、minanさんはそう感じませんでしたか?

minan 自分も一緒のステージに立っているからあまり客観的には見られないんですけど、それでも「ひと回り頼もしくなったな」とは感じますね。

──「今のリリスクは観るたびに進化している」という声を身近なライターなどからもよく聞きます。前回のインタビューでどこか自信なさげだなと感じていたryuyaさん、hanaさん、sayoさんが特に成長著しいと感じているのですが、自覚は……?

sayohana ……。

ryuya ……特にないですね(笑)。

reina ライブで「Ultimate Anthem」をやるとき、いつも会場の熱量のギアを1段上げてくれるのが冒頭のryuyaくんとsayoだと思っていて。そこは7人でいる間にさらにパワーアップしたなと感じます。

──確かに「Ultimate Anthem」の存在は今のリリスクにとって重要かもしれませんね。前回のインタビュー時はまだレパートリーに入っていない新曲だったし、この曲の冒頭のカマし具合が新しいリリスクの武器として磨かれ続けている印象があります。hanaさんのローボイスも日増しにキレがよくなってますよね。前はこんなにバキバキではなかった、と自分でも思いません?

hana 思います(笑)。私、ライブ前はいっつも緊張していて。ミスしないように、ミスしないように……と自分を追い込んでしまうところがあったんです。2周年ライブのとき、直前に歌割を大きく変えなきゃいけなくなり、もうミス必至みたいな状況があって(笑)。でも、その日のライブをほぼミスなくやり切れたことで「なんだ、やれんじゃん」と自信につながりました。今はいい緊張感を持ちつつ「なるようになる」という気持ちでライブに挑めています。

hana

hana

sayo

sayo

新作EPの幕開け飾るオルタナロック「GIZMO」

──8人で新しいアルバムを作り上げ、そこから新曲も増やしていき、“LS8”としての形が確固たるものになってきたという自信が満ちあふれているのだろうと今のリリスクを見ていると感じますし、新作「LIFE GOES ON e.p.」は決定打のような作品だなと。ここからは収録曲について1曲ずつたっぷりお話しいただきます。

minan お願いします。

──オールドスクールなヒップホップマナーにのっとった曲から、すごく今っぽい曲までバリエーションに富んだ1枚ですが、1曲目の「GIZMO」はラップではなく、もはやオルタナティブロックですよね。かなりインパクトのあるスタートです。

minan 「GIZMO」が1曲目になるとは思っていなかったので、私もびっくりしたと同時に「なるほど」と思いました。そうやって曲順でも楽しめるのがアルバムやEPの醍醐味ですよね。長年お世話になっている大久保潤也(アナ)さんと上田修平さんに作っていただいた曲で。lyrical schoolのエッセンスを作ってきてくださった2人だからこその「リリスクらしさ」が詰まった曲かなと思います。

──リリスクはラップを主軸にしながらも歌、歌メロが持つ要素も重要で、今のリリスクにおいてはminanさんとtmrwさんが歌の部分を牽引していますよね。

tmrw 「GIZMO」は自分が歌うヴァースがかなり低くて、けっこう難しいです。ライブで歌っているときも「聞こえてるのかな?」と心配になる(笑)。集中しないと歌えないので、あまりお客さんのことを気にせずに目をつぶって歌ったりしていて。わかりやすくライブ感のある、声を張り上げる歌い方ではないので、どういうふうに受け止められているか不安になるんですけど、ふと顔を上げたら泣いているお客さんの顔が見えたりするんですよ。その顔を見て「ああ、自分の表現の仕方は間違ってないんだな」って安心します。

minan この曲は先にライブでけっこう歌っていて、そのあとでレコーディングしたんですね。レコーディングは大久保さんと上田さんがディレクションしてくださったんですけど、お二人からは「誰かに向けて歌うというより、部屋で1人ギターをかき鳴らしながら、自分に向けて歌っているイメージで歌ってみて」と言われました。ライブでのアプローチと音源で聴く印象はけっこう違うかも。