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カメレオン・ライム・ウーピーパイ「PUNKS」ジャケ写

カメレオン・ライム・ウーピーパイ PUNKS

「ONE PIECE」エンディング主題歌に宿る“新世代のパンクスピリット”

蜂須賀ちなみ

カメレオン・ライム・ウーピーパイ(以下、CLWP)の新曲「PUNKS」は、テレビアニメ「ONE PIECE」エッグヘッド編のエンディング主題歌として書き下ろされた楽曲だ。エッグヘッド編の主要キャラクターで、「PUNKS」のアートワークにも登場するDr.ベガパンクは、「人類が500年かけて到達する域」と言われる頭脳を持ち、規格外のクリエイティビティを体現する科学者。CLWPは、DIY精神を持ちながら多面的な創作活動を行うユニットで、そのキャラクターや作品と精神的に通じる部分もありつつの大抜擢となった。

主題歌制作にあたってCLWPは、ビッグビート調のサウンドを構築した。1990年代後半に国内外の音楽シーンを席巻したビッグビートは、ブレイクビーツなどサンプリングを多用したプログラミングを軸としながら生身のグルーヴを感じさせるサウンドが特徴。このアプローチによって「PUNKS」は、地道な研究を積み重ねる科学者への讃歌として機能している。同時にCLWPは、最先端技術に満ちた未来都市でありながら根底に深い歴史性を秘めたエッグヘッドの複層的な世界設定を洞察し、それを音楽として翻訳した。

CLWPはこれまで一貫して「踊ろう」と伝え続けてきた。そしてこの曲でも「踊ろう」と歌っている。CLWPの言う“踊る”とは、この世界をダンスフロアとしてステップを踏み、自分を追い込みすぎずに、私らしく生きるということ。そうして絶望を回避すること。「PUNKS」でも適度に肩の力の抜けた遊び心のあるアプローチで、ダンスやリズムを通じた支配からの解放を歌っている。「もーいーかい」「もーいーよー」という幼い頃の遊びの言葉を用いた問答や、「We are in joy now!」の連呼は、深刻に捉えてしまいがちな現実を軽やかに乗り越えようとする姿勢の表れだろう。具体的な意味を持たないが中毒性は抜群の「ピーパピー パピポ」というフレーズが、楽曲の核となっているのも象徴的だ。

不条理で混沌とした現実でせっかくだから遊ぼうと笑いながら、同時に自分の中にあるネガティブな思考をシャットダウンしながら、怒りよりも楽しさを、破壊よりも創造を、孤独よりも連帯を選択する。「PUNKS」が体現するのは、従来の攻撃性とは異なる新世代のパンクスピリットだ。このメッセージは同時代を生きるリスナーに寄り添い、同じ目線から励ますもの。そして「自由と解放のStageへ」というフレーズは、「ONE PIECE」の根本的なテーマと直結している。さらにアニメの今後の展開を踏まえると、歌詞からは予言的で切ない意味合いが浮かび上がってくる。以前から「ONE PIECE」のファンだったというCLWPの物語への深い理解が表れた1曲と言えるだろう。

PUNKS(TVアニメ『ONE PIECE』エンディング主題歌) / カメレオン・ライム・ウーピーパイ:Official Music Video

カメレオン・ライム・ウーピーパイ「PUNKS」
2025年8月11日(月)配信開始 / avex trax / CLWP Records
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作詞:Chi-
作曲:Whoopies1号、Whoopies2号
編曲:CHAMELEON LIME WHOOPIEPIE

カメレオン・ライム・ウーピーパイ

カメレオン・ライム・ウーピーパイ

2016年11月に活動をスタートさせた、Chi-によるソロユニット。仲間のWhoopies1号、2号とともに楽曲制作やライブ活動に限らず、ミュージックビデオやアートワークをはじめとした、自らの活動にまつわるすべてのクリエイティブを3人のみで手がけている。2023年3月にアメリカ・テキサス州オースティンにて開催された世界最大級の複合フェスティバル「SXSW 2023」に出演。アメリカの音楽メディア「VIBE」では、出演者総数1000組を超えるアーティストの中から「ベストパフォーマンス10選」に選出された。また2024年3月にも「SXSW」に出演し、イギリスのメディア「CLASH」にて「SXSW 2024: The Best 15 Acts」に選ばれた。2025年4月に2ndアルバム「Whoop It Up」、同年8月にテレビアニメ「ONE PIECE」エッグヘッド編のエンディング主題歌「PUNKS」を発表した。