7月5日に放送・配信がスタートしたアニメ「光が死んだ夏」にオープニング主題歌として新曲「再会」を書き下ろしたVaundy。「この先のアニメ音楽に挑戦するような1曲」だと彼が語るこの曲は、確かに斬新かつダイナミックなサウンドの展開で、リスナーを驚かせるものになっている。その背景にあるのは、「光が死んだ夏」という作品とVaundyというアーティストの“共鳴”だ。
音楽ナタリーではVaundyと「光が死んだ夏」の原作者・モクモクれんの対談を行い、2人のクリエイターとしての共通点を語ってもらった。なお、本記事はコミックナタリーで掲載中の対談の続編となっているので、そちらもぜひ併せて読んでもらいたい。
コミックナタリー「光が死んだ夏」モクモクれん×Vaundyインタビュー【前編】はこちら
取材・文 / 小川智宏
本屋にあったあの本じゃん
──Vaundyさんはもともと「光が死んだ夏」のことはご存知だったんですか?
Vaundy オープニング主題歌のお話をいただいて、初めて知りました。僕は自分に合うマンガをどうやって探したらいいのか、あんまりよくわかっていなくて。オファーをいただいて読んだらめちゃめちゃ面白くて、なんで今まで目に留まらなかったんだろうと思うぐらいでした。でも、書店で見たことはあったんですよ。本そのものがめちゃくちゃカッコいいから覚えていたんですよね。
──色鮮やかなカバーが印象的ですよね。
Vaundy そう。一発でわかる、めちゃくちゃいいデザインで。だから読むときに「ああ、本屋にあったあの本じゃん」って思った。
モクモクれん カバーの話に触れてもらえることはけっこう多いです。「表紙を見たことある」って。本当は帯を目立たせるべきところを、あえてデザイナーさんにものすごく情報量を少なくしてもらったり、表紙と同じ色にしてもらったりしています。
Vaundy マンガだけじゃなくてカバーデザインもすごく丁寧なんですよ。
──先生にとってマンガを描くことと、本のトータルデザインまで意思を行き渡らせることはつながっているんですか?
モクモクれん そうですね。本の装丁が好きなので。あと、書店に並ぶことを考えると、シンプルなデザインのほうが目立つだろうなと思いました。Vaundyさんのビジュアルも、オレンジ1色で構成していますよね。ビジュアルに細々としたデザインを入れ込むよりも、1色でバン!と出したほうが印象に残ると思うんですよ。
Vaundy うん、そうですね。加えて、「光が死んだ夏」のカバーはシンプルだけど、キャラクター1人ひとりの個性が伝わってきて。学園ものの作品はキャラが似通っていく傾向があると思っていたんですけど、この作品はそうではないことが表紙を見ただけでわかる。登場人物全員が主人公になりえる人たちなんだなと感じますね。
同世代で一緒に仕事できるのはすごく面白い
──VaundyさんもCDのパッケージ、ミュージックビデオ、ライブのグッズなど、トータルでこだわっていますが、作品作りに対するお二人の感性や姿勢に近いものがあるのかなと感じました。
Vaundy うん、すごく近いなって感じる。だいたい同じ世代だからなのかもしれないけど、そもそも経由してきた道がなんとなく似てるんじゃないかな。
モクモクれん 「ケシカスくん」(2004年から2023年まで「コロコロコミック」で連載されていたマンガ)を通ってますもんね(笑)。
Vaundy 「ケシカスくん」もそうだし、「ペンギンの問題」(2006年から2013年まで「コロコロコミック」で連載されていたマンガ)も通ってる。「コロコロ」だと、僕らはそこだから(笑)。作品の作りからしゃべり方まで、なんだか似てる気がする。「光が死んだ夏」のセリフの言い回しもスッと自分になじみます。
モクモクれん 確かに世代感は言葉に出ますよね。
Vaundy そう。あとはデザインとかハッチング(平行線や斜線を引いて面を表現する描画技法)の仕方とか、そういうところにも同世代感みたいなものを感じます。
モクモクれん やっぱり読んできたマンガが似通っているとそう感じるのかもしれないです。私は石田スイ先生(「東京喰種トーキョーグール」作者)が大好きなんですけど、石田先生はものすごいハッチングでマンガを描くんですよ。石田先生から影響を受けているところはあると思います。
Vaundy 確かにあのグロさというか、どんよりした感じは、モクモクれん先生の絵からも感じます。この世代で「東京喰種」を読んでないやつはいないので。「銀魂」も。
モクモクれん あと「NARUTO -ナルト-」とかね。
──モクモクれん先生の作品もVaundyの音楽も、ジャンルがクロスオーバーして混ざっていく感じが似ているなと感じます。
Vaundy 確かに。
モクモクれん ジャンル感にとらわれないということですよね。「こういうジャンルのマンガを描こう」じゃなくて、いろいろなジャンルを吸収して出てきたものがたまたまこれだったという。
Vaundy 音楽の場合、僕らの上の世代は特化型の職人、それもネットに出てる人が多かったんですよ。今はたくさんの職人の技法が全部YouTubeとかに出てて、それを勉強できる環境がある。いろんな技法を学んでるうちに、勝手にジャンルが自分の中でミックスされていく世代なんだなと感じますね。
モクモクれん そうですね。なんでも観れるから。
Vaundy 僕、しっかり先頭に立ってる同世代と仕事するのってまだあまりなくて。上の世代の人と一緒にやるのも面白いですけど、同世代でこうやって一緒に仕事できるのもすごく面白いですよね。今後増えていくんだろうなと感じるし、増えていったらうれしい。
モクモクれん 私は「東京フラッシュ」(2019年に発表されたVaundyの楽曲)が出たとき、友達とめちゃくちゃカラオケで歌っていたので、まさか一緒に仕事ができるとは思いもしなかったです。そもそも、私はコロナがなかったら今マンガを描いていないですからね。マンガ家を目指していたわけではなかったので。時間があったから描いたものをネットに上げていたら「やりませんか」と声がかかって、「じゃあやります」と言って作家人生が始まりました。
Vaundy これは僕とはちょっと違いますよ。僕はずっとものづくりの仕事以外はないと思って生きていたから。
モクモクれん でも、ものづくりという観点で言えば、クリエイティブな仕事に就きたいとは思っていましたね。絵を描く系の仕事に就きたいという気持ちはあったんですけど、マンガ作家になるとは思っていなかった。
Vaundy それはすごい才能だよ。マンガを描けて、それを「見て!」って出したら人が集まったなんて、もう一発でダーツの真ん中を当てたという感じ。
モクモクれん いや、もう時の運ですね。
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ずっとライブしてるんだよ、マンガって