![DEVICEGIRLSこと和田一基。](https://ogre.natalie.mu/media/news/music/2020/1202/_I2A1775.jpg?impolicy=hq&imwidth=730&imdensity=1)
映像で音楽を奏でる人々 第19回 [バックナンバー]
DEVICEGIRLSが20年を超えるキャリアの中で感じた、VJという仕事に必要なこと
電気グルーヴをはじめとするライブ現場やクラブで彼は何を学んだのか
2020年12月4日 12:20 20
コンサート現場で学んだ完成されたショーエンタテインメント
大学を卒業したあとは、DEVICEGIRLSの活動をしながら、
このときは「クラブでやってるようなことをやってほしい」みたいな感じだったので、意向を汲み取りつつ自由度高めでやってたんですけど、そこで僕が見たのは「もう充分に完成している素晴らしいショーのように見えていても、さらに良くなるようにストイックに修正を繰り返し、クオリティを突き詰めていくのが当たり前の世界」でした。僕以外のスタッフ、照明さんや演出を主とした全セクションが、1拍ごとの細かさで書かれたキューシートを見ながら動いていて。それまで僕はクラブでVJをやるときには、外音だけを聴きながら自分の感覚で「ウェーイ!」ってノリでやっていたけど、大勢の人が関わるライブではたくさんのスタッフが全員で同じ演出を成功させようとしていた。例えば音がミュートされて照明も全部消えた瞬間に、僕だけが1拍遅れて映像を残してスクリーンを光らせていたら、演出意図を台無しにしてしまうわけです。演出セクションの皆さんはそれぞれ専門の会社で経験を積んでから現場に入ってる中で、僕のようなストリート上がりの奴がいきなりその世界に放り込まれた状態なのに、そんな僕たちをプロデューサーさんもよく使ってくださったなとありがたく思っています。
このときにはDEVICEGIRLSとしてのVJ活動は僕1人でやっていましたが、「もっとちゃんとやらなきゃダメだ」と思い、信頼していた元メンバーに相談をし、映像制作会社として仕事を請け負うようになりました。それが今の会社LAPTHOD(ラプソッド)の始まりです。ポルノグラフィティの演出セクションの皆さんは長いツアーの間、終演後毎日遅くまで照明を直したり演出に手を加えたりというのをずーっと当たり前のようにやっていて。1つのショーエンタテインメントを作り上げるのにここまでやるもんなんだと思い知りました。そういう大事なことに気付けたキャリアスタートとなる現場がここでよかったなと思っています。
こちらは弊社LAPTHODが2012年より携わらせていただいている
デザイナー的な考え方と映画監督的な考え方、VJにとってはどちらも必要
もちろん、空気を読んで即興的にやることがVJにとっては大事なことで魅力でも醍醐味でもあります。自由度が高いクラブ、決めごとが突き詰められるコンサート。僕はどっちの現場にも携われているからこそ、コンサート現場で学んだ“完成されたショーエンタテインメントのスキル“をクラブに持ち帰り、今度はクラブで経験した“新しくて自由な実験の成果“をコンサート現場に持ち込めたらと思っています。そのバランスや経験を一番生かせるのが、自分にとっては
クラブでVJをするときは、ものすごい数の映像アーカイブを用意しています。「動きが速いもの」「強さを感じるもの」「柔らかいもの」みたいに分類して。それを僕の主観で音に合わせて流していく感じですね。「この音なら踊っているときに、こんな映像が流れていたら気持ちいいだろうな」とか。あとは、例えば「照明がバキバキだから僕もテンションがそろう映像で合わせるぞ」みたいに空間のことも考慮したり、「今は何時頃かな?」という全体の時間軸も気にしています。だから主観と客観を両方持っていなきゃいけないんです。VJの主観がお客さんの感覚とかけ離れてしまったら盛り上がらないし、お客さんは同じ音楽を聴いても人それぞれ違うイメージを持っているから、そのさじ加減を大事にしています。そこを意識しながらも、つい僕は流す映像の1つひとつに意味を持たせたがりなんで、困ったもんです(笑)。
VJにとっては、「このコップの縁がもう少し薄いと飲み口が気持ちいいだろうな」みたいに人の気持ちを汲み取って、より良くしようとするデザイナー的な考え方と、自分がグッとくるもので世界観を表現する映画監督的な考え方と、どちらも必要なんだと思います。デザイナー的な意識だけでやっているとお客さんの記憶には残りにくいですし、映画監督的な意識だけだと主張しすぎてしまう。クラブでのVJの映像って、パッケージ化されるわけでもないし、記録として残らないじゃないですか。例えばDJだったら「今日はあの曲がひさびさにかかった」とか「あの曲すごくよかったけどなんだったんだろう?」みたいにお客さんの記憶に残りやすいと思う。それがVJの場合、クラブでは気持ちよかったかもしれないけど、映像の記憶として残りづらいんじゃないかと思っていて。思い返したときに「なんかホヤホヤしたものが流れてた気がする」みたいな(笑)。だから、なんか爪痕を残せないかなということは常に思いながら仕込んでいます。単にカッコいいだけの映像じゃなくて、「あのときの映像、なんか頭から離れないよね」と語られるような、何かしら記憶と体験を持って帰ってもらえたらいいなって。ま、カッコいいだけの映像で勝負できないってのもあるんですけどね!(笑)
ちなみに僕は、DJが突然飛び道具のような曲を流したときも、それに合わせたリアクションをすぐにできるようにしておきたい。だから、次にいつその曲が流れるかわからないけれど、そのときのために映像を作っておいています。自分が勝手に準備しているので日の目を見ないこともあるのは前提の上で(笑)。たぶん僕は、お客さんにもアーティストにも、ニヤッてしてもらいたいという気持ちが強いんでしょうね。というのも、人の誕生日プレゼントを考えるのがすごい好きで、無難なものを人にあげるのが嫌な気質なんです。「え、マジ!?」って相手が驚いてくれるようなプレゼントがないか、考えまくります。
仕事に対するマインドもそういうところがあって、初めてご一緒するアーティストさんの、いちファンになった気持ちでプロファイリングするんです。例えば、根底にオマージュされているものを汲み取ってグラフィックにしれっと落とし込んだり、ファンの人がライブ中にする手の振りにモーションを合わせたり。それで会場が盛り上がったら自分もうれしくなるし、それって誕生日プレゼントを考えてるときの感覚と一緒だなと思ってます。
基本、電気グルーヴでのVJ映像はどんな内容にするかお任せしていただいているのですが、この「お母さん、僕たち映画になったよ。」というライブあたりから、ステージ上にどんな映像スクリーン機構を設けるのかも、まずはアイデアレベルから提案させていただくようになりました。僕の最初の突飛もないアイデアをコンサート演出の諸先輩方と共によりよく現実的な演出プランに落とし込んでいく作業は、すべてが勉強になっています。このときは「とにかくステージの横幅いっぱいに映像を出したい!」と希望した記憶があります。この映像スクリーン機構の上には登れるようになっているんです。スリットのあるLEDスクリーンをパズルのように扱ったりして、かなり派手に映像で遊べました。
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