テイラー・スウィフトがニューアルバム「The Life of a Showgirl」を10月3日にリリース。また彼女の誕生日の前日である12月12日には同作の日本盤が発売される。本作の発売を記念して、音楽ナタリーではテイラーを敬愛するアーティストにその魅力を聞く特集を展開。今回は、INIの田島将吾にインタビューした。
田島は高校生の頃にテイラーの音楽と出会い、その人間味あふれる歌詞と音楽に強く惹かれた熱心なファン。自身のアーティスト活動においても、苦難や感情を音楽に昇華するテイラーの姿勢に強く共感し、リスペクトを寄せている。
彼女の内面を映し出すような詞をはじめとした“テイラーの音楽”の魅力から、2024年2月に観たワールドツアー「The Eras Tour」東京ドーム公演での感動、そして最新作「The Life of a Showgirl」で受け取ったものまで、あふれる“テイラー愛”を語ってもらった。同じくステージに立ち、ファンと人生を歩むことを目指すアーティストとして、テイラーの表現に深く共鳴する田島。彼の言葉を通じて、テイラーの魅力を改めて探ってほしい。なおインタビューの最後では、田島がセレクトしたオススメの3曲も紹介している。
取材・文 / 岸野恵加撮影 / 曽我美芽
テイラーの歌詞は読み込みたくなるから
──まずは田島さんとテイラー・スウィフトの出会いからお伺いしたいです。初めてテイラーを知ったのはいつ頃ですか?
高校生の頃、クラスにテイラーが好きな友達がいたことがきっかけで曲を聴いたりミュージックビデオを観たりしてハマりました。ほかにテイラーを好きな友達が僕の周りにはあまりいなかったから、誰かと共有したりはせず、ひたすら1人で聴き込んでいました。
──過去のインタビューで拝読しましたが、その頃はテイラーに恋をしていたとか……?
ははは、そんな時期もありましたね。初恋はもう少し昔で、戦隊ヒーローの水色だったんですけど(笑)。人間味があるテイラーの歌詞に惹かれて、好きになっていきました。声を聴くと落ち着く感覚があって、いつも寝るときに曲をかけていましたね。テイラーの楽曲は生き生きしていて、「人生を楽しもう」という気持ちにさせてくれるんです。失恋を描いた曲も多いけど、ただ悲しいだけではなくて、常に前を向いて現実に立ち向かっている。“今”を生きていることが感じられる音楽で、「自分もこう生きたいな」と思わせられました。
──歌詞をかなり読み込んでいるんですね。ほかのアーティストの曲を聴くときも、じっくりチェックしているんですか?
いえ、普段は気になったときに歌詞カードを読むくらいなんですけど……テイラーの歌詞はしっかり読みたくなります。基本的に訳詞を読みますが、「英語がわかればもっとニュアンスをつかめるのに」と思うことも多いです。
──田島さんにとって、特に思い入れのあるアルバムを挙げるとすると?
「Red」(2012年リリース)が一番思い出深いアルバムです。寝るときも、移動中にもよく聴いていました。でもその後は一度、自分とテイラーの間に少し距離ができていたんです。テイラーの音楽は常に変化しているけど、「Red」のあとはどこか戦っていたり、もがいていたりする色が濃くなったように感じて。そういう姿もカッコよくて好きだけど、僕は温かいテイラーにより惹かれるんですよね。2019年にリリースされた「Lover」には少し昔の面影を感じて、テイラー熱が再燃しました。実はそれまで一度もテイラーのコンサートに行ったことがなかったんですが、その頃に初めて「行ってみたいな」と思うようになりました。
──そして2024年、ワールドツアー「The Eras Tour」の東京ドーム公演に足を運んだんですね。
ありがたいことに2回観ることができました。INIのメンバーとも一緒に行ったんです。本当にグッときましたね。時代を巡るようなテーマのツアーだったので、テイラーをあまり知らない人でも、彼女のことをよく知ることができる内容だったと思います。
──一緒に行ったメンバーの反応はいかがでしたか?
(池﨑)理人は僕と同じく学生時代からのファンだったので、「Red」やカントリー色が強い時代の曲が披露されたときは2人で一緒に盛り上がっていました。(髙塚)大夢と(許)豊凡はINIの中でもボーカルをメインに担う2人なので、すごく歌を聴き込んでいた印象です。テイラーのボーカルがとにかくすごすぎて……ライブはおそらく3時間以上やっていたと思うんですけど……。
──3時間半近くやっていましたね。
1人でそれだけ歌い続けるなんてすごすぎますよね! 演出も圧倒的で……特に水の中に潜る演出が印象的でした。あんなの思いつきもしないなって。
──やはり、同じくステージに立つアーティストとしての目線で観ていたんですね。
そうですね。公演時間が長くても飽きないし、舞台装置の使い方も本当にうまい。場面ごとに全然違う印象を受けて、引き込まれました。あとは、何よりテイラーがファンを観たときの笑顔がすごく心に残っています。スーパースターなのに身近な友達のように感じられるというか、まるで1人ひとりに話しかけてくれるような笑顔をしていたんですよね。僕も、ファンの方々にそう感じてもらえるように活動したいと思いました。
アーティストとして共感する「Anti-Hero」
──ほかにアーティストとして、テイラーにならいたい部分はありますか?
さっきの話と被ってしまうんですが、自分の苦難や感情をきちんと音楽に昇華するテイラーの姿勢が本当にカッコよくて、リスペクトしています。テイラーはそれゆえにアルバムを出すたびに色が変わるけど、どの作品も曲に込められた思いがすごく伝わってくるんですよね。僕にとって、そういうアーティスト像が理想です。
──田島さんも自分の思いやコンディションを、楽曲で赤裸々に表現したいタイプなんですね。
今年1月に「LAPOSTA 2025 SHOW PRODUCED by MEMBERS」で初めてソロステージを行ったんですけど、そこで発表したオリジナル曲は、等身大の自分を表現したいという思いで作りました。普段はファンの方にキラキラしているところしか見せていないけど、自分の弱さや未熟さもちゃんと見てほしいなって。MCで「こんな思いを込めて、この曲を書きました」と説明してから歌いました。僕の好きなテイラーの曲「Anti-Hero」もそういう歌なんです。表のテイラーと不安を抱えるテイラーが拮抗するような。自分もアーティストとして活動しているからこそ共感できる部分が大きかったので、同じようなマインドで楽曲を制作しました。
──ファンの方にありのままの自分を知ってほしいんですね。そんな田島さんが今まで生み出した曲の中で、特に手応えを感じたものは?
「The sky make me slow」という曲は、かなりがんばって作りました。あとはINIの楽曲で作詞に参加した「Runaway」も手応えがありましたね。普段活動していて、正直大変なスケジュールのときもありますし、そのプレッシャーをどこに吐き出せばいいんだろうとか、「まだ未熟なのに」「僕はこう見せたいのに」と自分で自分の気持ちを整理できていないような瞬間もあって。そんなときの“もがく感じ”を表現した「叫びたいけれど どこに行っても結局 叫べなかった 日々は もう」という歌詞は気に入っています。でも、日本語で表現するのって難しいなといつも感じます。英語は1語でいろんな感情が込められるけど、日本語は韻が踏めなかったり語尾が全然合わなかったり……そこをもっとうまくできるようになりたいですね。
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最新作の感想「この感じ、大好きだ!」

