2015年に結成され、今年10周年を迎えたアイドルグループukkaが、アニバーサリーアルバム「青春小節~約束と衝動~」をリリースした。
「青春小節~約束と衝動~」はukkaの結成10周年記念プロジェクトの集大成として制作されたアルバム。作品を通して10周年を祝いつつ、次のステージに向かう“約束”と、そこにたどり着くまでの“衝動”をテーマとして掲げている。収録されているのは、10周年に際してのメンバーの心情をそれぞれ異なるスタイルで表現した3つの新曲と、ukkaが誇る人気曲を“10th ver.”として再録した音源。この記事では本作の収録曲に対する思いをメンバー7人に聞いた。さらに、決して簡単な道のりではなかった10年間の歴史を振り返りながら、グループにとってのターニングポイントを挙げてもらった。
取材・文 / 近藤隼人撮影 / 佐々木康太
うまくいかないときも団結して乗り越えてきた
──まずは、アルバムの新曲「Aonity」「リボンのひみつ」「Re:RAY」について伺います。10周年を迎えたことに対する思いがそれぞれ違った角度で表現されていますが、アルバムの幕開けを飾る「Aonity」は“衝動”がテーマとのことで、疾走感のあるギターロックサウンド、未完成で“青い”状態であることを前向きに捉えた歌詞が印象的です。
茜空 じっくり聴いたり歌詞を深く読み込んだりすることで意味がわかるような、少し抽象的な曲がukkaには多いんですけど、「Aonity」はサビの頭で「青くて何が悪いんだ」と歌っていて。こういうふうにまっすぐに思いを伝える曲は、ukkaとしては珍しい気がします。このストレートな歌詞をロック調のサウンドに乗せて歌っているので、聴く人の心に響きやすい曲になっていると思います。
村星りじゅ ukkaは「響く、青春小節。」というグループのコンセプト通り、文学的な雰囲気の青春曲が多いんですよ。そんな中、「Aonity」はイントロから青春を感じられる楽曲で、最初に聴いたときから、ukkaの新たなアンセムになる予感がしました。今年の「TIF」(「TOKYO IDOL FESTIVAL」)でこの曲を初披露したんですけど、ukkaの出番のときに大雨が降ってきて(笑)。「笑うしかないほどの大雨に 意味もなく僕ら飛び込んで びしょ濡れになった鞄を振り回した」という歌い出しにぴったりなシチュエーションで、私たちのために降った雨なんじゃないかと思ったくらいでした(笑)。お客さんがクラップやシンガロングをできる箇所もあり、爽快な青春感を感じました。
葵るり 雨がライブの演出になっていましたね(笑)。
宮沢友 雨なのか汗なのかわからないくらいの大雨だった(笑)。ukkaは雨女が多いですし、そういう意味でも私たちにぴったりなシチュエーションでした。
芹澤もあ ukka以外にも今年10周年を迎えたアイドルさんは多いですけど、私たちはさまざまな変化があったグループだと思っていて。「Aonity」はそのことを感じられる曲でもあります。団結して乗り越えてきた、その道のりが歌詞に表れています。
──「うまくいくって保証はありますか」「簡単にうまくいかないさ 挙げ句失敗が増えてくばっかでもいいんだ」などの歌詞から、ukkaが試行錯誤を繰り返しながら成長してきたグループであることが伝わってきますね。
宮沢 ukkaらしさを感じられる歌詞だと思います。私が一番好きな歌詞は、サビの「似てるけど違う 二度とない今日を 手放しで喜べる僕らでいたいね」という部分で。1日1日を大切にしていくべきだなと、活動を通して実際に感じています。今しかできない経験をファンの皆さんと共有できていることがすごく幸せで、そのことを忘れずに毎日喜びながら過ごせたらいいなって。この歌詞を最初に見たときに心に刺さりました。
若菜こはる キラキラした部分も、泥臭さや心の葛藤も描いた曲で、その全部をひっくるめて青春の曲だなと思いました。ライブでは最後のシンガロングのパートをファンの方が一緒に歌ってくれるので、熱い一体感を感じられます。
結城りな 「Aonity」はメッセージ性の強いところがukkaの10周年にぴったりで、大好きな曲です。私は夢を追ってこの業界に入ってきましたが、夢を見ている人に対して周りがいろいろ言ってくることもあるじゃないですか。例えば……「それは無理だよ」とか、「未熟だ!」とか。そういう声に対してまさに「青くて何が悪いんだ」と思います。「Aonity」は夢を追っている人、何かをがんばっている人の背中を押す曲になっています。
葵 私は最初に聴いたときに、まさに“衝動”というコンセプトにぴったりな曲だなと感じました。ライブでのパフォーマンスを重ねるたびに味が出て、愛される曲になっていく気がします。私たちと一緒に育っていく曲なんじゃないかなって。
“青さ”を隠さないところがukkaらしい
──7人とも「Aonity」の歌詞に対する共感度がかなり高そうですね。
茜 2番のサビの「なんて曖昧な世界だ」で始まり、「簡単にうまくいかないさ」と歌うところなんて私たちの人生そのものだなって。最初からうまくいくなら、もちろんそれが一番幸せなんですけど、そんなことはめったにないんですよね。10年の中でメンバーの入れ替わりもありましたし、コロナ禍でライブができなくなっちゃったりして。世の中難しいなと思いながら続けてきました。
──アイドルの世界は一筋縄ではいかないという事実を身をもって知っていることが、ukkaのアイデンティティになっていますよね。
結城 私は2番サビの最後の「今日まででやり残したこと それをさ それをさ 未来と呼んでみようか」という歌詞が大好きで、背中を押されました。やり残したことをポジティブに捉えていて、自分も「これできなかったな」と後悔することがあっても「またがんばろう」と前向きに考えていきたいです。
芹澤 私は「損得なんて覚えて何を得た」という歌詞にハッとしました。自分は物事を考えるときに損得を気にしがちなタイプなんですけど、アイドル活動って必ずしもすべてが成功するわけじゃないですよね。損得を優先するのではなく、うまくいく可能性を信じつつファンのみんなのために活動をしていきたいなと思いました。
宮沢 「涙も奇跡も青さゆえのギフト」という歌詞も好きです。未熟である自分を肯定してくれているように感じられますし、ほかの歌詞も自己肯定感を上げてくれるようなフレーズばかりです。
若菜 奮い立たせられるような歌詞がたくさんあります。「構えた防護盾 その覗き穴から未来なんて見えはしないんだ」というフレーズがありますが、守りに入るのではなく、10周年の先も挑戦を続けていけなきゃいけないんだなと感じています。
葵 冒頭の「笑うしかないほどの大雨に 意味もなく僕ら飛び込んで」にも、「なんでもやるぞ! かかってこい!」という挑戦の精神が表れていて。チャレンジする心を忘れちゃいけないんだなと改めて思いました。
村星 私は2サビのあとの「自分一人じゃ抱え切れなくて」から「ねぇどうして 涙が出そうだ」までのパートが大好きです。1人ずつバトンを渡すようにつないで歌うので、心強い仲間の存在や絆を感じられます。特に「大馬鹿にだってなれる君に 心底からかっこいいねって」というフレーズが印象的で、ライブで歌っていると胸に響きます。
──ライブだと「Aonity」の持つエモーショナルなムードがより増幅しそうです。
芹澤 目の前にお客さんがいると、気持ちのスイッチが入りますね。
宮沢 メンバーとアイコンタクトを取りやすい振付になっているので、そういう瞬間に涙が出てきそうになります。りなちゃんとけっこう長いこと目を合わせるところがあって……ね?
結城 いや、私はそこで泣きそうになったことはないです(笑)。私はいたって真面目に歌っているんですけど、友が変顔をして笑わせにくるんですよ。
宮沢 そんなことはない! 泣きそうになったことも……1回くらいはあります(笑)。
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