龍宮城インタビュー|第2章ついに開幕、ステージを通して実感した自信と課題

龍宮城がアヴちゃん(女王蜂)プロデュースの“第1章”に幕を下ろし、セルフプロデュースによる“第2章”をスタートさせた。10月8日にリリースされた最新EP「SHIBAI」では、メンバー7人が作詞に挑戦。先行リリースされた「OSHIBAI」をはじめ、冨田侑暉がNAOYA(MAZZEL)とダブル主演を務めるテレビドラマ「セラピーゲーム」のオープニングテーマ「SUGAR」、ボカロPの遼遼(ハルカリョウ)とタッグを組んだ「余白」など5曲で新たなスタイルを提示している。

この新作を携えたライブツアー「龍宮城 LIVE TOUR 2025 - SHIBAI -」で全国を回り、“第2章”の幕を開けた龍宮城。その第1歩を、彼ら自身はどう感じているのか。ツアー半ばの7人に話を聞いた。

取材・文 / 臼杵成晃撮影 / 須田卓馬

「やりたいことだらけな状態でツアーを始められる」という安心感

──セルフプロデュース体制となって初のEP「SHIBAI」がリリースされ、現在は全国ツアー「龍宮城 LIVE TOUR 2025 - SHIBAI -」の真っ最中です。前回のインタビューでは、アヴちゃんプロデュースの楽曲と新たな楽曲がライブでどう混ざり合うかも未知数だとお話しされてましたが、皆さんの実感とファンの反応、ここまでの感触はいかがですか?

ITARU 僕の体感として、「SHIBAI」の5曲はレコーディングされたものとライブで披露するものはまったく別物、と言っていいくらいの感覚で。音源ではメロディの印象が強くなるし、歌詞の捉え方も限定されてしまう。でもそこにコレオが付いて、7人が体全体で表現する“ライブ感”が加わると、より龍宮城らしさが出てくるというか。今までの曲とのなじみはライブをやることでより感じることができて、新しい曲も含めてしっかりと1つの世界観が作れているなと思います。

齋木春空 「SHIBAI」の中にはコール&レスポンスをしてほしい曲がいくつかあるんです。例えば1曲目の「SUGAR」だったらラップパートとか、2曲目の「エグレメクレ」ではサビでお客さんも一緒に盛り上がってほしくて。それを感じ取ってくれたのか、お客さんから声を出してくれるポイントを作ってくれるようになりました。

左から齋木春空、KEIGO、S、KENT。

左から齋木春空、KEIGO、S、KENT。

──楽曲のテイストも含めてさまざまな変化がありますけど、メンバーの皆さん自身としてはどうでしょう。「今までと違うな」と感じるところはありますか?

KENT このツアーでは初めて演出家さんに入ってもらっているんですよ。ライブの演出はこれまで自分たちで作り上げてきたものだったからこそ、そこには責任感と不安があったんですけど、今回はすごく自信を持ってパフォーマンスに集中できていて。とはいえ、ポエムを読むシーンをITARUが考えたりだとか、自分たちが考えている部分もいろいろとあります。

──ある意味「委ねるところは委ねる」という考え方ができるようになった。

KENT はい。それによってパフォーマンスに集中することができている。安心感というのかな。初日の仙台公演が始まる前、Rayと「こんなに安心できることってなかなかないよね」という話をしていました。

──何なんでしょうね、その安心感の正体は。

KENT たぶん、これまで僕らは「僕ら自身の言葉や気持ちをぶつけるのがライブだ」と考えていたんです。でも、たくさんの人の力を借りてこそ届けられるもの、個々のスキルを磨くことに集中できたからこそ届けられるものがあるという自信が出てきたんだと思います。セルフプロデュースではあるものの、たくさんの方に支えてもらいながら伸び伸びとやれている環境で。自分たちの中でのクリエイターとプレイヤーのバランスがよくなってきたのかなと。

Ray 今までとは違った、また新しい感覚で。演出家さんが考えてくださった構成に「これは面白いものが見せられそうだな」という予感がありましたし、それ以上に自分たちの幅がより広がって、出せる駒が多くなったと感じています。だからこその「やりたいことだらけな状態でツアーを始められる」という安心感。用意してきたものにも自信があるし、ツアーでさらに発展させていけるという自信が最初からあったから、KENTとそんな話をしたんでしょうね。

左からRay、冨田侑暉、ITARU。

左からRay、冨田侑暉、ITARU。

──環境が変わる不安よりもポジティブな要素のほうが大きかった?

Ray そうですね。「新曲をどうライブで表現しよう」とか心配な部分はありましたけど、ここまでツアーを回ってみたところで、新曲がさらに龍宮城を強くしてくれて、お客さんにも「龍宮城が進化したな」と受け取ってもらえているだろうなと感じています。

KEIGO 僕らの熱量や届けたい思いは変わっていない。それは7人のパフォーマンスを通して、より強く感じてもらえると思います。

メンバー出演ドラマの歌詞を7人で描く

──「SHIBAI」には先行してリリースされた「OSHIBAI」のほか4つの新曲が収められています。1曲目の「SUGAR」は冨田さんがNAOYA(MAZZEL)さんとのダブル主演を務めるテレビドラマ「セラピーゲーム」のオープニングテーマで、作詞はメンバー全員によるものです。つまりプロの作詞家として引き受けたタイアップ曲ということになりますが、制作はどのように?

冨田侑暉 メンバーのみんなにも「セラピーゲーム」の脚本を読んでもらって、全員で歌詞を作り上げていきました。

──ちなみに冨田さんとNAOYAさんは旧知の仲だとか。

冨田 そうなんですよ。中学、高校の頃からずっと関西で一緒にダンスのレッスンを受けていて、一緒に遊びに行ったりもする仲で。お母さん同士もママ友だったりするくらいなので(笑)、共演が決まったときはホントにびっくりしました。東京に来て別々のグループで活動するようになり、ようやく一緒に仕事ができる……と思ったら、ドラマの中でキスをすることになるとは。

Ray っていう作品がありそう(笑)。

左からITARU、冨田侑暉、Ray。

左からITARU、冨田侑暉、Ray。

──現体制での1曲目「OSHIBAI」は春空さん、KEIGOさん、ITARUさんの3人がそれぞれ持ち寄ったフレーズを辻村有記さんが歌詞としてまとめていくという形を取られたとおっしゃってましたが、今回も同様に?

S はい。7人で出し合ったものをまとめていただきました。僕は、今回のように題材とテーマが決まっているところから作っていくほうが制作しやすかったですね。穴埋めのような書き方というか。1つアイデアが浮かぶと、そこからパッパッと連想できる感じ。BLという繊細なテーマを龍宮城としてどう落とし込むか……脚本にじっくり目を通しながらも、あまり入り込みすぎないように、ちゃんと俯瞰して書くことを意識しました。

左から齋木春空、KEIGO、S、KENT。

左から齋木春空、KEIGO、S、KENT。

Ray 僕は全話分の脚本をひと晩で読みました。もう脚本だけでも面白くて。侑暉くんが演じている姿を想像しながら読む、その時間がめちゃくちゃシンプルに楽しかったし、映像を観る前から僕はちょっとときめいていて。その印象をしっかりと……しかもオープニング曲なので、毎回「さあ始まるぞ」という気持ちになってもらえるよう意識しながら書きましたね。

──7人の言葉が盛り込まれた歌詞について、主演の冨田さんはどう感じましたか?

冨田 オープニング映像とともに流れるのをひと足早く見せてもらったんですけど、歌詞もメロディも、ドラマの世界観とすごくマッチしていて。Rayが言っていたように、ドラマが始まる幸福感、高揚感を掻き立てるような曲になったと思っています。音楽的にも龍宮城としては新しい挑戦で、「SHIBAI」という新しいEPのオープニングを飾る、パンチのある1曲になっている。龍宮城はこういう曲もできるぞという強い意志を込めた、新しい龍宮城をしっかり自信を持って提示できる楽曲になりました。

──音楽的にはボーイズグループの王道にも持っていけるダンスミュージックだけど、龍宮城らしいオルタナティブなひねりも入っていて。今どきっぽい王道にいくらでも近付けようと思えば近付けられそうなところですけど、中盤に出てくる低音のラップパートから最後のサビに向かって一気に跳ね上がる高音のファルセットは、特に龍宮城のシグネチャーとでも言うべき個性を感じました。あの「冷静を装う」のファルセット、めっちゃいいですね。

Ray ありがとうございます(笑)。

僕らの芯が変わっていなければ、今はなんでも挑戦していい時期

──2曲目の「エグレメクレ」も、なんだったらもっと普通にカッコいい、カッコよく見せることを追求した歌詞で歌うこともできると思うんですけど、「自由は涎垂らしている」「暴け化けの皮 剥いで晒しましょう」など引っかかりのあるワードが並んでいて。皆さんの中で「龍宮城らしい歌詞」をどう意識しているのか興味あります。

KENT アヴちゃん先生がこれまで書いてくれた歌詞は「ただの言葉じゃない」というか、日常のどこかを切り取ってあるからこそ、自分がそれに共感できたタイミングでよりリアルに表現できるなと感じるんです。自分も日常の中でその瞬間を見つけたいし、そうすればいろんな人に共感してもらえる歌が作れるんじゃないのかなって。僕は初めて歌詞に挑戦したこともあって、なかなか難しかったです。ただ、ツアーで歌っていて思うのは、自分たちがパフォーマンスすることで「龍宮城らしくなる」んじゃないかなと。

──なるほど。

KENT 僕らの芯が変わっていなければ、今はなんでも挑戦していい時期なんだなって。3年目にしてそういうフェーズに入ったのかなという感覚もあります。だからこそ不安に思う必要はない。7人が揺るぎない芯を持ってパフォーマンスに集中していれば、自然と「龍宮城らしく」なる。

──「7人で何かをやればおのずと龍宮城になる」という自信がしっかりあるというのは大きいですね。皆さんが出した言葉の種をうまく歌詞として落とし込んでもらう、という作業も皆さんにとっては学ぶところが大きいのでは?

KENT 本当にそうですね。けっこう刺激されるところが大きくて……自分たちが出した言葉を歌詞にまとめてもらって見てみると「なるほど、こう表現すればキャッチーになるのか」って。歌詞を書くうえで「こうしなさい」と言われるわけじゃないんですよ。完成した歌詞を見たときに自分が何をどう感じるかが、自分自身の成長につながっていくのかなと思います。

新たなクリエイターとの邂逅と、葛藤を描くバラード

──3曲目の「余白」にはボカロPとして活躍している遼遼さんが参加しています。この混沌とした感じはこれまでの楽曲ともなじみがよさそうだなと思いました。

齋木 「余白」はもともと遼遼さんが歌詞まで全部書いてくださっていて。サビの部分にメンバーの要素を入れたいということで、ラストのサビだけ4人で考えさせてもらいました。

左から齋木春空、KEIGO、S、KENT。

左から齋木春空、KEIGO、S、KENT。

──できあがった世界観の中に自分たちの言葉を差し込むという。それも新しいやり方ですね。遼さんは龍宮城とそれほど世代の離れていない若い方かと思いますが、そういう方と一緒に制作をするのも刺激になるのではないでしょうか。

KEIGO そうですね。遼遼さんから届いた歌詞には1行1行に「これはこういう意味があって」とメモがあって、すごく熱量のある方だなと感じました。音楽的にもまた新しい挑戦というか、オルタナティブで新しい龍宮城をお見せできそうだなと思いましたね。もっともっと音楽性を拡張できたらなって。

──4曲目の「夜泣き」はこれまでと地続きの龍宮城らしさを感じました。龍宮城はこういったビートを押し出さないバラードで真価を発揮できる稀有なボーイズグループだと思うんです。バラードでドラマチックなコレオを見せる7人の姿がありありとイメージできますし。歌詞はどのように考えたのでしょうか。

ITARU 歌詞を考えるときはいつもそうなんですけど、「夜泣き」は特に、このメロディがより生きる言葉選びを意識しました。この曲には「新しい場所へ向かうときの孤独や葛藤」というテーマがあって、僕は18歳の頃の自分をイメージしながら言葉を考えていきました。

Ray それはサッカーをやってたときの自分ってこと?

ITARU そう。

冨田 なるほどね。だから18歳なのか。

左からRay、冨田侑暉、ITARU。

左からRay、冨田侑暉、ITARU。

──先行シングルの「OSHIBAI」を含めた全5曲で7人それぞれに作詞に携わってみた今の段階で、作詞は自分に向いてるなと感じている人、のめり込みそうだなという予感がある人はいますか?

Ray 楽しいですね。(全員の顔を見渡して)……あれ、みんな楽しくない?(笑)

齋木 いや、楽しんでますね。

KEIGO うん。

ITARU 向いてるか向いてないかは別軸なので(笑)。でも書くこと自体はすごく楽しいですね。

──別に「あっ俺全然向いてねえな」と思ったらやめればいいわけだし、個々の特性で役割ができてくるのはいいことですからね。作詞家として才能を開花させるメンバーも出てくるかもしれませんし。

Ray 誰がどう書いているかを知るのも楽しみじゃない? ファイルでまとめられたものをしれっと見たりして(笑)。