「佐々木敦、アイドルにハマる」

佐々木敦、アイドルにハマる 第2回 [バックナンバー]

モーニング娘。'20との邂逅

めくるめくハロー!プロジェクトの世界

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HEADZ主宰者・佐々木敦が、ここ最近急激にハマっているというアイドルについて語るロングインタビュー。佐々木がアイドルに興味を持つまでの経緯をたどった第1回に続き、今回は今もっとも注目しているというハロー!プロジェクトの魅力や独自性について、たっぷりと語ってもらった。

取材・文 / 南波一海 インタビュー撮影 / 臼杵成晃 イラスト / ナカG

関連動画との出会いは運命

──前回は佐々木さんがアイドルにハマるまでを語っていただきました。

うん。そんな感じで、アイドルが気になり始めたときに、モーニング娘が「'20」になったというニュースをネットで見て「へー、そうなんだ」と思って。ハロプロのグループってメンバーの増減が多いじゃない? だから今年の年明けの時点ではモーニング娘。のメンバーの顔も名前もわからないし、ほかのグループのこともまったくわからなかった。興味がなかったから。だけどあるとき、モーニング娘。の「愛の軍団」のダンスバージョンのミュージックビデオがYouTubeの関連動画に上がってきて。

──本当に関連動画任せなんですね(笑)。

俺の関連動画はマジですごいよ。YouTubeによる出会いを運命だと思ってるから。AIのデータ解析を信頼し切ってるから(笑)。

──完全にビッグデータの手のひらの上じゃないですか(笑)。

そうなんだよ(笑)。で、薦められるがままに「愛の軍団」の動画を観たんだけど、あの曲は歌ってるメンバーが手を挙げるという画期的な振り付けなんだよね。それを観て思わず笑っちゃったわけ。

──カッコいいんだけど面白いんですよね。

面白いし、わかりやすいじゃない(笑)。しかも俺がYouTubeで観たダンスバージョンの動画では名字がでっかく入ったTシャツを着てるから、歌ってるメンバーの顔と名前が一致する。まだ鞘師里保がいる時期だから、あれは5、6年くらい前の動画で、曲自体は知ってたはずなんだけど、「むちゃくちゃカッコいいじゃん!」と思って。で、じゃあ「モーニング娘。って今どうなってるんだろう?」って、最近の動画を観ていったの。そしたら「LOVEペディア」と「人間関係No way way」という2曲が同じメロディなのに歌詞とアレンジが違うことで、まったく違う曲になっていることを知った。そういう仕掛け大好きだから、「あれ? 面白くない?」って思っちゃったわけ(笑)。それで、またYouTubeの導きのままにどんどんMVを観ていった。でも、メンバーの出入りがあまりにも激しいから、「愛の軍団」から現在までの変遷が全然つかめなかった。Wikipediaを見ても、ややこしくてまったく頭に入ってこないし。

モーニング娘。のシステムは民主的

──兼任とかもあったから複雑でしたよね。Wikipediaの情報自体も膨大ですし。

そう。道重さゆみさんが所属してた時期のモーニング娘。はもしかしたらそうだったのかもしれないけど、センターに人気が集中しすぎるグループっているじゃないですか。そのせいで、人気メンバーが卒業することになると大変な事態になっちゃうっていう。

──うんうん。

ああいうのが嫌なんですよ。人気のあるメンバーと、それほど人気はないけど数合わせ的にいるほかのメンバーとか、すごく歌えるメンバーと全然歌えないメンバーがはっきり分かれてる感じがすごく嫌。全員が主役になれるようなグループがいいと思ってたら、いつの間にかモーニング娘。がそういう形態になっていたんだよね。曲によってセンターが替わるし、歌割りもバランスが独特で「なんでこのパートをこの人が歌っているんだろう?」みたいなこともあるけど、とにかく1点に集中しないようになってる。歌のうまさについてはもちろんメンバー間に差があると思うんだけど、そういうこととは別に、言ってしまえばパズルみたいに歌割りとかダンスのフォーメーションが考えられている。だから観てると単純に面白い。それは初期のモーニング娘。について、つんく♂さんにインタビューしたときも感じてた。実際、つんく♂さんにも当時、そのことを質問してるしね。つまり、全員を主役にできるのがモーニング娘。なんだっていうことがわかった。あともう1つ。これもよく疑問に思うんだけど、あるアイドルがデビューしました。4人組でした。2人辞めました。1人入りました。1人辞めました。5人入りました。4人辞めて今3人ですとか。そういうことって、めっちゃあるじゃん。

──四六時中起こってますね。

オリジナルメンバーが残ってないのにグループ名はずっと同じとかざらにあるよね。しまいにはメンバー1人になっちゃってるのに、グループを名乗ってたりとか。うがった見方をすれば、名前にニーズがあってセールスにも関わるから、おいそれと名前を捨てられないとか、そういうこともあるとは思う。そういうことに「それってどうなんだろう? ファンの人らはどう思ってるんだろう?」という気持ちもあるんだけど、考えてみたら、それはもともとモーニング娘。がやってることなんだよね。でも違いがある。モーニング娘。にはすさまじい人数のOGがいて、いろんなところで活躍してたり、してなかったり、結婚したり、子供産んだりとかしている。新しいアイドルグループがデビューするときは、特にコンセプトとかなくてメンバーを集めると、だいたい年齢がそろってるわけじゃない。で、基本的に最初はすごく若い。俺はローティーンのメンバーしかいないアイドルグループって、見ててどこか痛々しい気持ちになっちゃうことがあって。

──自分も今の時代的にどうなんだろうというのはよく考えます。

本人たちも楽しいだろうからいいんだけど、「こんな小さな子たちが毎日のように歌って踊って握手とかチェキとかして、大丈夫なんかな?」みたいな気持ちになったりするわけ。ところが今のモーニング娘。はすごく年齢の幅があるわけよ。

──最年長と最年少で10歳ぐらい離れてますよね。

去年新メンバーが3人入ったおかげで、いい感じに年齢の幅ができて。1つのグループの中にこれだけの年齢差があって、でも年功序列じゃなくて、歌も踊りもいろんな形でほとんど等分になってるっていうのが、非常に民主的なシステムだなって思ったわけ。こういうあり方っていうのは、つまり20年以上モーニング娘。をやってきたからこそ成立してるんだなと思って。それこそが、長く続いているということの意味なんだなって納得できた。それでモーニング娘。が一気に好きになったんだよね。そうこうしてる間に、今のモーニング娘。も全員、顔と名前が一致するようになっていたと。

──最高ですね!

ヤバいけどね(笑)。そうすると次は「ほかのハロプロのグループって、どうなってるんだろう?」と気になるようになって。だって俺、アンジュルムがもともとスマイレージだったことも知らなかったんだから。アンジュルムに関して言うと、蒼井優がアンジュルムの大ファンで、彼女がアンジュのことを熱弁してる動画がネットに上がってて。「蒼井優がこれだけ絶賛してるアンジュルムってどんななんだろう?」と気になるようになって、それでMVを観てるうちにハマっちゃった。

──蒼井優きっかけというのもいい話です(笑)。

ハロプロ楽曲に息づく日本独特の歌謡感

でもアンジュルムの場合はやっぱり楽曲が大きい。「46億年LOVE」っていう死ぬほどカッコいい曲があって。あの曲を聴いて、今こういう音楽ってほかにないなと思ったんだよね。こういう音楽のあり方ってすごくレアだと思う。ここ最近、日本のポップミュージックにとって、おおよそ80年代以降の洋楽からの影響って必ずしもいいことではなかったんじゃないかと思うようになって。

──というのは?

日本のポピュラー音楽の洋楽からの影響って、もちろん戦後ずっとあったわけだけど、とりわけ60年代後半から本格的に出てくる。「ニッポンの音楽」っていう新書でも書いたように、いわゆる“リスナー型のミュージシャン”というのは、海外のアーティストの曲を聴いて、それを自分が日本語で日本人としてどうやったらやれるだろう?と試みていった結果、いろんな変異が生じてJ-POP的なものが生まれてきたということがある。それはそれでいいことなんだけど、それ以前にあった日本独特の歌謡曲感みたいなものが、洋楽的なものによって抑圧されていった感じがするんだよね。

──なるほど。

歌謡曲の名曲って70年代くらいまでは、めちゃくちゃたくさんあったわけでしょ? それは主にメロディに中心があった。それが80年代に入ると変わっていっちゃうんだよね。そうした変化自体にも、いい面はすごくあるんだけど、その反面、何かが失われてしまった気がする。それはやっぱりメロディに顕著に現れてると思う。洋楽をベースにすると、そのことによって旋律の可能性が拘束されて、まさに英語の曲を日本語に変えただけみたいになってしまう。最近、70年代の日本のポップス / 歌謡曲を聴くと、ただ懐かしいだけじゃなく、今はほぼ皆無と言っていいようなメロディのセンスに逆に新鮮な気持ちになることがあって。そういうのって80年代以降に生まれた世代は基本知らない音楽だよね。アンジュルムとかモーニング娘。の曲って、もちろん洋楽とかダンスミュージックの影響を受けているんだけど、その上に乗ってるメロディラインや歌心みたいなものがやっぱり歌謡曲なんだよ。かつて歌謡曲が持っていたカッコよさとか華やかさ、あるいは切なさだったりとか、そういうものがあるんだよね。そんなことを考えてるうちに今度はアンジュルムのメンバーもいつの間にか顔と名前が一致するようになっていた(笑)。

──次から次へと覚えていく(笑)。

そうしたらJuice=Juiceに行くまであっという間じゃん(笑)。ハロプロのユニットって、楽曲はかなりバラエティに富んでるんだけど、何よりも歌がいい。とにかくすごくちゃんと歌っている。ライブや番組出演でも圧倒的に生歌。曲のよさはもちろん、歌唱というものに対して、どういう意志を持って臨んでいるのかがすごくよくわかる。宮崎由加というリーダーが去年卒業したんだけど、彼女のために「25歳永遠説」という曲が用意された。宮崎さんは25歳でJuice=Juiceを辞めたんだけど、彼女はメンバーの中だと決して歌はうまくないわけじゃん。

──スキルフルに歌うタイプではないですね。

リーダーだけど歌でセンターに立つことはほぼないメンバーだった。でも、最後の最後に「25歳永遠説」で、センターになった。あれは完全に彼女のために作られた曲でしょ。音源を聴くと歌割りとは無関係に彼女の声はフルコーラス入ってる。うまくはないけどすごく心を込めて歌ってることがわかる。それに単純にすごく感動してしまった。卒業に際してあんなことをやってもらえるなんて、本人もすごくうれしいだろうし、ほかのメンバーにとっても特別な曲になるよね。しかも、みんなこれから25歳に向かっていくわけで、そのたびにこの曲を歌えるわけじゃん。

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自分の変化を楽しんでるような感じもある

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